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第149話

　「っ………」

　もう避けられないと思った琴葉は、目を瞑った。

　そのまま剣は振り下ろされ、

　「………………え？あれ………？」

　琴葉をすり抜けた。

　「すずっち！」

　涼子の固有スキルだ。

　近くにいたのでかろうじて触れる事が出来た。

　「………」

　涼子は無言のまま魔族を睨みつける。

　魔族は何故か助かった琴葉に警戒して飛び退いた。

　「何してくれんだ！」

　「ウチの親友に手を出されて黙って見てる気は無いよ」

　高橋と七海は武器を構えた。

　涼子と琴葉臨戦態勢に入っている。

　「………………チッ」

　4対1では分が悪いと踏んだ魔族はそのまま何処かへと消え去った。

　「ことりん大丈夫！？」

　「七峰大丈夫か！？」

　魔族が消えたことを確認すると、高橋と七海は琴葉に駆け寄った。

　「うん、大丈夫。すずっちのおかげで助かったよ」

　「よかった………」

　涼子は珍しくはっきりと言葉を発した。

　「ししし、流石すずっち。あの状況で助けてくれるなんてね。ありがとー！」

　琴葉は涼子にハグをした。

　少し照れながらも、涼子はハグをし返した。

　「敵はモンスターだけじゃないってことだな。クソッ」

　「こりゃ本格的に仲間を探さないとねー。向こうに見える山とかどうよ」

　「山か。確かに何となく人が集まりそうだな。よし、行ってみよう」

　「ことりん、すずっち、行こ」

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　「リンフィア様………ラビ………！」

　ニールはリンフィアとラビを探していた。

　ここに入ってそれなりに冒険者を救ったが、リンフィア達の足取りは全く掴めていなかった。

　「所々で大きな魔力は感じるが、リンフィア様達の魔力では無い………一体どこに………」

　ニールは少し焦っていた。

　魔族に見つかった場合正体がバレる可能性が高い。

　もし魔王だと知られたら最悪人間にも狙われてしまう。

　「うわあああああ！」

　「！」

　近くで悲鳴が聞こえた。

　襲われている。

　「チィッ！」

　ニールは声の聞こえた方へ向かった。

　数人の冒険者が戦っている。

　「せっかく助けてもらったのに、またこんな………！」

　「諦めんな！まだ終わったわけじゃ無い！」

　弱い。

　明らかに下級冒険者だ。

　その上敵はスケルトンとトレント。

　トレントは木のモンスターで、自身の枝を変幻自在に操って攻撃可能だ。

　ランクはC。

　「ぬあーっ！」

　「しまった、ドルト！」

　冒険者の一人がトレントに絡め取られた。

　全身に枝を巻きつけ、徐々に絞める力を強めていく。

　「ぬ、ぐ………おおお、ああああああああ！！！！」

　「『炎よ………』きゃっ！？」

　「アン！」

　魔法を使っていた女冒険者はスケルトンに捕らえられた。

　「チクショオオオオオオ！！！」

　リーダーはスケルトンに向かって走っていく。

　しかし、

　「はあああああ！！！」

　「カラカラ」

　スケルトンはリーダーの槍を難なく受け止め、腹に蹴りを入れた。

　「うッ！ご、ァ………」

　他の冒険者たちも徐々にやられていく。

　今度こそ終わった。

　誰もがそう思った時、

　「全く………」

　トレントが一瞬で切り裂かれた。

　「ここの冒険者はヘタレしかいないのか？」

　ニールはスケルトンの群れに突っ込んでいく。

　身の危険を感じたスケルトンは真っ先に標的をニールに変え、一斉攻撃を始めた。

　「この、戯けモンがあああああ！！！」

　ニールは背中の大剣を抜き、ほんの少しだけ竜の力を引き出し、

　「ハァッッ！！」

　スケルトン10体を一撃で薙ぎ払った。

　全員まとめて魔石になった。

　「ふぅ」

　大剣を納め、冒険者達に尋ねた。

　「おい、無事か」

　「あ………は、はい！あ、あの、もしかして………あの『女王』ですか！？」

　「ああ。その名は不本意だが私に付けられた別称だ」

　「その………リンフィアって子とラビって子を探していますか？」

　「何！？」

　ニールはその冒険者の肩を掴んで思いっきり揺さぶった。

　「おい！何故それを知ってる！？」

　「さ、さっきリンフィアちゃんに助けられたんです！」

　そう、彼らはリンフィアが助けた冒険者達だった。

　「いつだ！いつリンフィア様と会った！？」

　「えーっと………ついさっきだった気がします。てか様？」

　ニールはぱあっと表情を明るくした。

　「そうか！なら、これでいけるかもしれないな」

　「え？」

　「急いでここから離れるんだ。間も無くここは戦場になる。ここから東、そのまま正面に行けばここを出られる。急げ！」

　「は、はい！」

　冒険者達はそのまま去って行った。

　ニールはそれを見届けると、全身にゆっくりと魔力を流し始めた。

　「よし………」

　なるべく大きく、魔力を膨張させるイメージだ。

　「ハアッ………！」

　ニールも半魔族。

　魔力量は多い。

　特に竜族はハイスペックなので、身体能力も魔力も並外れており、魔族でも多い方だ。

　「リンフィア様、ラビ………どうか気づいてくれよ………！」

　魔力が徐々に高まっていく。

　高密度の魔力は可視化され、ニールの周辺を陽炎のように揺らいでいた。

　「全開ッ！」

　ゴオッ！！

　周辺に魔力の力場が出来、空気や地面に影響を出していた。

　パラパラと床の砂つぶや石ころが微かに動き、突風が吹き荒れた。

　「準備は良いだろう。最初に来るのは………」

　魔力に誘われるようにモンスターが集まってきた。

　モンスターは言ってみれば魔力の塊なので、強い魔力に反応するのだ。

　「なるほど、やはりモンスターか。それでは、」

　ニールは剣を構えた。

　「かかってこい」