第1526話
お久しぶりです。
今回はかなり間を空けてしまったので、一応あらすじも載せております。
振り返りたい方は是非
今後ともよろしくお願いします!
戦いは終わった。
しかし、蓮はまだその場から動けずにいた。
墓地に向かったフィリアがまだ帰らない以上、この場を動くわけにはいかなかったのだ。
結局、ランフィールがフィリアをここへ向かわせたのは、あくまでも体裁だけでも対等に扱う事で彼女の不満を解消しようと考えた故であるのだが、それとこれとは話が別だ。
仕事に失敗するとわかった以上、どう慰めるのか思案していた。
「深く考え込まなくとも良いのでは? 女性というのは複雑な生き物ですが、こういうケースだと意外と単純だったりするものですよ」
「王族の経験則かい?」
「ええ。というわけで、手っ取り早く慰めるたいのであれば、夜彼女の部屋に行けばいいのですよ」
「はははは殺すぞ」
「おぉ………………紛れもない本音はこれが初なのでは?」
不愉快そうにそっぽを向く蓮を煽るように、ランフィールは高らかに笑った。
笑いながらも武器に手をかけているのはきっと防衛本能だろう。
と、時々地雷を踏みながら、時間は過ぎていく。
すぐに帰ってくる保証はない。
ヤキモキしながらも、長期戦覚悟で来ていた蓮は、ランフィールをひと足先に帰らせて仲間に伝言を伝えてもらおうとしていた。
しかし、話しかけようとした時、蓮はぴたりと動きを止めた。
気配だ。
墓地の奥から、人の気配があった。
「おや、案外お早い………」
「フィリア様ァアアアアアアアア!!!!」
ビュン、と駆け抜けていった蓮を見るその生暖かい視線など気づく事なく、彼は一直線にフィリアへと駆け寄った。
予想外の反応に、きょとんとしているフィリア。
しかしだんだんと、心配のあまり慌ててやって来たのだと理解し、にやーっと笑みを浮かべていった。
「あらあら、どうしたんですのレン。私のことがそんなに心配—————————」
「俺に何も言わずに、どこにも行かないで下さいッ!!」
ハッと、フィリアは蓮の顔を見た。
今にも泣き出しそうな顔をしていた。
“あの蓮が” とは不思議とそう思わなかった。
内にある、自分ではない記憶が、その理由を教えてくれた。
「大丈夫です。もう死んだりしませんから。貴方が守ってくれるのでしょう?」
大丈夫だと。
言い聞かせるように、フィリアは蓮を抱きしめて頭を撫でた。
ここまで心配させた事を、少し反省した。
「守ります。守りますから………俺を側に置いてください………………」
「はい………」
こんな無茶はもうしないと、フィリアは固く誓った。
自分が認められたいからと、これはやりすぎだった。
そして同時に、幸福だった。
(堪能せねば………この抱擁を!!)
目が血走っていた。
そんな中、ふとランフィールと目があった。
気まずい空気が………………流れるどころか、フィリアはランフィールに向かって親指を立てていた。
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出発前、フィリアはランフィールに言われていたのだ。
「そうそう」
「?」
「あの異世界人の彼、あなたは彼に相当入れ込んでいるとお見受けしますが」
「そんなもんじゃありませんわ。愛してます。愛です。ラブです。アモーレです!!」
と、何故か出てきた異世界の言葉混じりにランフィールに詰め寄るフィリア。
「さ、最後二つの言葉を意味は知りませんが、そこまでいうのであればいいことを教えてあげましょう」
「む、何ですの?」
「貴方は、グイグイ行き過ぎです。それでは彼のような者は引いてしまう」
「………ほう?」
どこから取り出したのかメモを取り出すフィリア。
そしてランフィールは続ける。
「だから墓地から戻った時に彼がいたら、駆け寄ったりしては行けません」
「そ、そんな………長時間彼と触れ合えないままだときっとレン成分の禁断症状が……………というか、墓地に出てきた時に彼がいるとは限らないのでは?」
流石に、墓地の外で待っておくことはないだろうと、フィリアは考えていた。
もしもの時のために周りの者を救えるように、蓮にだけわかる置き手紙を用意していたのだ。
しかしチッチと、口で鳴らしながらランフィールは指を振った。
「いいえ彼は居ますよ。ああいう者は、押してダメなら引けば良いのだと、相場が決まっています。もしかしたら彼の方から………」
「おお、おおおおおおおおおおお!! うおおおおおおおおおおおおお———————」
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と、今に至る。
思惑通り、蓮の方からフィリアに駆け寄っており、ハグも成功。
フィリアにとってはもう一つの大収穫だった。
(ふーっ、すぅーーっ………し、師匠!! 私はやり遂げましたわ!!)
(………………すごい顔してる………………ん?)
背中を撫で回している気持ちの悪い手にふと目がいくランフィール。
フィリアは、何かを持っていた。
明らかに、妙な力を放っていたそれを見て、目が点になっていた。
「あ、あの………フィリア殿下。そちらの石は………」
「石?………ああ、これ墓地の最奥にあった石です。多分これが秘宝なんじゃないですかね」
蓮も思わず肩を掴んで引き剥がし、手に持っているそれを見た。
どう考えても、妙なものを持っている。
というか、今現在身体に作用している力と同じ力が、そこにあった。
「ら、ランフィール………君がいうには、確か何通りもある正解の部屋を何十回連続で選び取らないと奥まで辿り着けない迷路だって………」
「ええ、そのはずです………何万通りどころではない中から正解を引かなければ………」
「? 一直線に進んだら見つかりましたけど」
「「………………えええええええええええええええええええええええ!!!!?」」
部屋は、不正解の道を選ぶと、強制的に最初の部屋へと戻される仕組み。
そして、再び部屋はシャッフルされ、正解の道も変わる。
だから、一直線になる可能性はある。
ただしそれは、億をゆうに超えてる分母からなる分数分の1の確率。
これはまさしく、「奇跡」であった。
フィリアたちは、ヴェルデウスの秘宝を手に入れたのだった。
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第6章
ここまでのあらすじ。
影人との戦いを経て、フェアリアからこちらへと戻ったリンフィア。
ケンの屋敷に向かおうとした矢先、先に戻っていたニールと遭遇する。
喜んだのも束の間、ニールは正気を失っていた。
しかし、偶然近くにいた三帝のラクレーに手を引かれ、その場は脱出した。
ラクレーについていったリンフィアは、彼女を含めたった数名しか残っていない未だ正気を保つ“反乱軍”と合流した。
彼らの話では、現在ミラトニアでは超広範囲の精神操作が行われているとのことだった。
反乱軍の彼らは、蓮の固有スキル【逆転】を使って何とか精神操作を逆転させ正気に戻ったわけだが、人数はたったの数名。
しかし希望はあった。
一つが逆転。
これがあれば、ニールやファリスと言った強力な戦力を取り戻せるというもの。
そしてもう一つが、洗脳能力者の情報。
綾瀬 優の持つ【超鑑定】により、能力者の正体と人相は割れていた。
彼らは、逆転によって戦力を増やしつつ、能力者ナイトメアの撃破のために奔走していた。
だが、そんな彼らのところへ、侵入者が現れた。
シルエットと名乗る異世界人は、瞬く間に反乱軍のメンバーだった綾瀬らを取り込み、勢力を半壊させた。
命からがら逃げたリンフィア達だったが、この時点でメンバーは5名。
リンフィア、琴葉、蓮、ラクレー、フィリアのみ。
絶望しかける彼らだったが、リンフィアの言葉により再び立ち上がり、再スタートを切った。
しかし、あまりにも助けがなさすぎるので、リンフィアはケンのアドバイスに従い、知恵の神に頼ることにした。
国の現状、神も力が発揮できず、ほとんど会話こそ出来なかったが、そこで彼らは指針を得た。
ボルゾドの地下というヒント。
それに従い、リンフィア達は魔界にあるニールの師匠ヴェルデウスの故郷であるボルゾドへ向かった。
初めての魔界。
リンフィア以外は戸惑うことが多いながらも、一歩一歩確実に進んでいた。
しかし、敵の手はすでにこの街へ及んでいた。
地下にあるとされる秘宝。
リンフィアは記憶を頼りにその秘宝を探していたのだが、敵の狙いもおそらく同じであった。
そこで戦いになるが、敵の強さはあまりにも圧倒的であった。
リンフィア以外は殆ど碌に戦えず、絶体絶命の危機に。
そこに、救世主が現れた。
かつて生き別れになったリンフィアの弟にして当代の魔王。
ランフィールである。
ランフィールの協力を得て、敵を撃破していくリンフィア。
それでも押され気味な中、リンフィアは一発逆転の一手を思いつく。
それは、今敵を送り込んでいるゲートの持ち主であり反乱軍を襲撃した異世界人、シルエットの引き抜きだった。
あまりにも荒唐無稽な手段。
しかし、安息と平穏、怠惰を望む彼にリンフィアは求めるものを与え、何と引き抜きに成功してしまった。
敵の増援はここで途切れ、残る敵を一掃したリンフィアらは、勝利と大きな戦力を手にしたのだった。
シルエットの引き抜きに成功したリンフィアらの次の目的は、当初の予定通り秘宝の確保と、街の掌握になった。
秘宝の力により、戦うほど強くなっていった街の住民を味方に取り入れるべく、リンフィア達は動いた。
しかし、現実はそう甘くなかった。
二度目の襲撃の際、住民らと共に戦い、敵を撃破するも、街の長であるメデューサに圧倒的な力の差を見せつけられ、街の掌握には失敗。
味方にはなってくれるが、力不足を痛感した。
だが、それでも得たものは大きかった。
秘宝の効果により、一行はパワーアップを果たしており、また街にしか効果が及ばないというデメリットを解消すべく回収に向かった秘宝も無事確保。
当初はランフィールに不信感を抱いていた蓮も、少し心をひらいていた。
確実に前に進んでいた。
現在の目標は、以前街の掌握と人材の確保。
ゼロよろしく、敵から離反しそうな異世界人を引き入れ、戦力を増強し、対抗できるだけの勢力に育てるべく、リンフィア達の戦いは続いていく。




