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第142話


 「殿下、無理はなさらないでくださいね」


 「ええ、大丈夫ですわ」


 フィリアは、今の勇者たちに張り合うくらいの強さはある。

 これくらいで根を上げるほど弱くはないのだ。


 「それより、そろそろ着くのでは? もう2kmは歩いたような気がするのですけれど」


 「はい、目の前の岩場のところに居るはずです。しかし………警戒は必要かもしれませんね」


 「え?」


 蓮は手を出して、止まるように指示した。


 「みんな、一応強化。すぐだ」


 「わかった」


 「うん」


 「はぁ………?」

 

 フィリアは訳がわからないまま強化魔法使った。

 美咲と涼子は意味が通じているようで、額に小さく汗をかいている


 「来た………!」


 岩陰からから何かが出てくるようだ。

 蓮は背負ってる剣に手を伸ばした。

 

 しかし、出てきたのは人だった。






 「なんだ………冒険者の方々のようですわね」


 「いや………」


 蓮は綾瀬に視線を送った。

 察した綾瀬はある行動に出る。


 蓮は念のため鑑定しておくことにした。


 「人間か………」


 種族は人間だった。

 強さは平均的に大体Fランク程度の強さだ。

 たまにEランククラスがいる。


 すると、向こうから話しかけてきた。


 「あの、この祭りの参加者でしょうか?」


 「はい、一応そうです」


 「そうですか! もしよろしければ一緒に行動させてはくれませんか?」


 何と、 向こうが要求してきたのは、こちらが望んでいる仲間集めだった。


 「魔族に対抗するために仲間を探しているのでしょう? 我々もここを生き延びるために動いているのです」


 「俺たちも丁度仲間を探していたのです」


 しかし、彼らのレベルでは蓮達に及ばないので、人数が増えるだけでメリットは小さい。


 「でも、すみません。仲間集めは大体終わったので。申し訳ないです」


 「そうですか………仕方ないですね」


 「ごめんなさい、もう行きますね」


 蓮は冒険者達に背を向けた。

 そして、再び綾瀬の方を見た。

 綾瀬は顔を横に振った。


 「!………うん、わかった」


 すると、蓮はくるっと振り返って、剣を抜いた。




 「アンタらには悪いけど、奇襲はさせない」



 弓を引こうとしていた魔族は、一瞬ひるんでいると、その間に接近され蓮に袈裟斬りにされた。


 「大丈夫、殺しはしないよ。でも、多少は痛い目を見てもらう。覚悟はいいか——————()()()












———————————————————————————











 「この森結構広いね。ラビちゃん、はぐれないようにね」


 「りょうかーい」


 ラビはリンフィアの手を握った。

 可愛いなぁとニコニコしているリンフィア。


 「ししょうはどこいったんだろうな」


 「うーん、ケンくんもここの中の何処かに飛ばされたんじゃないかな? でもまぁ、ケンくんなら大丈夫だよ、きっと」


 「ワタシもそうおもう」


 リンフィア達は森の中を歩いて行く。

 偶然にも、あれ以降モンスターには遭遇していなかった。


 「それにしても、モンスターバブルが起きるはずのこの大会にしてはそこまで大量にモンスターが湧いていないね。何でだろう………」


 「………」


 「どうしたの? ラ——————っ!!」


 「きづいた?」


 「うん」


 ラビとリンフィアは森の奥から何かが近づいている気配に気がついた。

 しかし、姿が見えないので、正体は不明である。

 ラビ達は、声を潜めて会話した。



 「モンスター?」


 「まぞくかもしれない」


 「ラビちゃん、もし敵だったら詠唱短縮ができる私が強化魔法を使って戦っているうちに自分に強化魔法をかけて。今かけたら魔力や光でバレちゃうから」


 「わかった」



 リンフィアは銃を抜き、敵にいる方角へ向けた。

 向こうもリンフィア達に意識を向けている。

 殺気のような物をリンフィア達は感じているのだ。

 そして、



 「っ! い………ま?」


 「何!? 人間か!」


 草むらから出てきたのは鎧を着た男だった。













 リンフィア達は木に腰掛けて話をすることにした。



 「すまない、知らなかったとはいえ剣を向けてしまった。非礼を詫びよう」


 男は頭を下げた。


 「いえ! こちらこそ武器(こんなもの)を向けてしまって申し訳ないです」


 「む、それは武器か? 見たことないが………失礼、挨拶がまだだったな」


 男は改まって自己紹介を始めた。


 「私はルドルフ・バルキウス。王都で騎士をしている者だ」


 「私はリンフィアです。この子はラビ。2人ともこの街で冒険者をやっています。まだ新人ですけど………」


 「ほう? なるほどな。先程飛ばした殺気に一切動じなかったのはそのためか。女子供とはいえ、冒険者も侮れんな」


 「………あの、ルドルフさん」


 「ん? どうした?」


 「私たちとここを脱出しませんか? 貴方は多分私たちより強い。3人ならどうにかここから抜けられるかもしれません」


 ルドルフはAランク程の実力はある。

 いや、技術ならSランクにも劣らない。

 仲間にするのにはうってつけだ。

 しかし、


 「………すまない。この中に私の教え子がいるんだ。それに、とある方の護衛もある。脱出はもう少し先にするつもりだ」


 「お仲間さんがいるんですか?」


 「ああ」


 リンフィアは少し考えた。

 戦力は多い方が生存率も上がる。

 だったら、


 「では、私も探すの手伝います」


 「しかし………」


 「私たち二人だけなら脱出は困難でしょう。だったら、お仲間さんも一緒にまとめて出た方がみんな安全だと思います。ダメですか?」


 「………いや、助かる。それはよろしく頼む。リンフィア殿、ラビ殿」


 「はい!」


 「よろしくー」

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