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第1394話+おさらい


 現状を把握しよう。



 現在、ケンはコウヤ率いる組織の一派と、フェアリアの存亡をかけた戦いを繰り広げている。



 今回、ケンが立つのは滅ぼす側。

 主戦力はケン・リンフィア・ラビ・ゼロ・メルナ・流・ウルク・ルージュリア

 そして、サポート役として、G・Rと【ノーム】。


 対して敵は、コウヤ・レギーナ・ルドルフ・ピクシル・ガゼット。

 そして組織の妖精と、デバッガー化した元部下、レギーナ率いるミラトニアの騎士。



 これはただの戦争ではない。

 この戦いでは、総人口の7割脱出させることが出来れば、フェアリアはミッションを行う事が出来なくなり、その破綻によって消滅するため、その成否によって勝敗が決まる。





 鍵となるのは4つの神器。


 四大妖精の持つ秘宝を、それぞれケン・ラビ・ゼロ・ルージュリアが持ち、戦いは始まった。




 まず、ケンは《エルフ領のカイト》に向かい、コウヤと戦闘を始めるも、神器を破壊されたのち、途中で逃亡される。



 ラビは《サラマンダー領のディアブレイズ》に向かい、ラビとレギーナが戦い、さらにディアブレイズ領民とルドルフ率いるミラトニア騎士を中心とした小軍が戦闘になる。

 現在も継続して戦闘中。



 ゼロはメルナと共に《シルフ領のストルム》に向かい、ガゼットと戦闘になり、これを撃破。

 しかし、最後の最後で神器を破壊される。



 ルージュリアは《ウンディーネ領のアクアレア》に向い、神器をウルクに預け、領民ほとんどの脱出を果たすも、ネームレスとなった。

 以降、【お嬢】と呼称され、到着とほぼ同時に、宮殿が所有する飛竜に乗り、【ノーム】と合流した。



 そして、神器は持たないが、《ディアブレイズ郊外》にてミレアとリンフィアが接触し、戦闘を開始。

 激闘の末、リンフィアが敗北する。



 また、【ノーム】を筆頭にG・R、【お嬢】、流の4名は、ユグドラシルの敵本部に説得へ向かう。

 ただし、所属しているノームの大半がデバッガー化され、やむなくこれを撃破。

 なお、ここでデバッガー化されたのは、【ノーム】が以前管理者に反逆した際に指導者を失った一般ノームの過半数であり、やむなく管理者に従った普通の妖精達だった。





 その後、ケン・ゼロの両名は神器を破壊され、現在残る神器は2つ。

 そしてなんと、ケンは敵の手で捕縛され、リンフィアに勝利したミレアは契約していた罪の神に意識を乗っ取られて、現在シルフ領にて虐殺を開始し、結果として人口を減らし始め、状況が混迷を極める。






 開戦時は、出口を多く所有していたケンサイドだが、それも既に残り2つ。

 また、コウヤの策略により、残る人口………開戦前に一箇所に集められていた総人口の15%にあたる少数民族達をはじめにディアブレイズに集結させられようとしていた。


 神器が少ない状態で籠城されてしまえば、神器を守りつつ城攻めを行うという形になるため、ケン達に勝ち目は殆どないと言っていい。




 籠城開始までの残り時間は、24時間から最後にコウヤが空間転移を行った時間を引いた時間であり、残り6時間ほど。




 ケン達は、空間転移前に集められた少数民族を脱出させるか、神器2つを死守し、どうにか集められた妖精たちを脱出させる以外に、この危機を脱する方法はなかった












——————————————————————————————














 管理者は、開戦前に既に2つ大きな失敗を犯していた。


 一つは飛竜。

 ストルムからユグドラシルに向かうケンたちが言っていた通り、シナリオで必要な場合には飛竜で妖精の大移動が出来るようにしていたのだが、これが災いし、妖精が一ヶ所に集まりやすくなっていた。



 もう一つは妖精の配置。

 ゲーム同様街やその周りに妖精を置き、シナリオが狂わないように勝手に旅をさせないようにしていたため、これも結果として自分の首を絞めていた。




 そのため、1日という極めて短時間で、既に総人口の半分以上が脱出に成功してしまった。

 だが、それでもここはあくまでも管理者たるコウヤの領域。


 形勢を逆転する手は数多く残っていた。



 そして、今は運さえも味方していた。






 カイトから移動を始めて数分。

 何者かの気配が、今コウヤが浮かんでいる場所の真下にあった。


 現状、誰かが好き勝手移動している可能性がごく限られている。

 つまり、神器がここにある可能性は大いにあり—————————そして、実際その場所には、移動中のウルクが隠れていた。







 「カーバンクルくん、ゆっくりでいいから私から離れて森の外側に出て。でも、森から出ちゃだめだよ」


 「で、でも………」


 「このままじゃ確実に巻き込む………悔しいけど、戦えばチビ神ちゃん込みでも長くは保たない」




 上を見ればわかる、尋常ではない力の差。

 目の映るそれは、もはや災害に等しい理不尽な力の権化であった。


 失敗だった。

 つい先刻の選択肢を選んだ自分に怒り、奥歯が割れそうなほど歯を食い縛り、表情を歪ませた。


 でも、そうしなければ正気を保っていられないほどに、怖いと思ってしまった。

 突っ張っていないと目尻は垂れ、力まなければ膝は崩れただろう。



 責任と怒りだけが、今ウルクを動かしていた。




 「ねぇ、チビ神ちゃん」


 『なんだい』


 「今の私に、何が出来るかな」




 答えはわかっている。

 でも、今最も頼れる者に、ウルクはそれを聞いておきたかった。




 『………君に、もはや打てる手はない。残念だけど、刃向かったところで殺される』


 「だよねー………………」



 しかし、何もできないわけではないということを、ウルクは知っていた。


 手はあるというほど明確な手段ではない。

 そもそも、それをしたところで何が起こるわけでもない。

 ただの時間稼ぎ。


 でも、ウルクよりはずっと確実に出来る。

 



 「チビ神ちゃん、ごめん」


 『謝ることはないよ。確かに、あれは君には手に余る。だから、あとは任せてよ』




 意識を渡す。

 全くの本人ではないとはいえ、ウルクはこのチビ神と同じ先代命の神に身体を乗っ取られ、仲間や国をその手で奪わされた。

 身体の主導権を渡すということに対して、トラウマになっていてもおかしくない。


 だが、ウルクに躊躇いはなかった。

 もう既に何度もやっていること。

 それが出来たのは、あの戦争から覚悟が生まれたから。



 どんな手を使っても、仲間の役に立つこと。




 ウルクリーナ・ルナラージャ王女ではない。

 ただのウルクとして、守るべき居場所を守るために、彼女はどんな過去だろうと飲み込むと、誓ったのだ。





 「………さてと、まずはかくれんぼかな? コウちん」

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