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第139話


 「計画をぶっ壊す? うふふ………あーっはっはっは!!! 何を言いだすかと思えば………非力な人間がそんなことできるわけないじゃない!」


 セレスは嘲るように言った。

 だが俺は一切表情を変えない。

 その余裕感が癇に障ったのか、セレスが次の行動に出ようとしていた。


 「なあ、おっさん。ここに居ンのはこの国でトップの冒険者なんだよな?」


 「おうよ」


 「だったら、こんなとこさっさと抜けちまわねーと面子丸つぶれだよなぁ!」


 「あたぼーよォ!!」


 そのダグラスの一言と同時に、全員が武器を取った。


 「テメェらァァァ!!! 冒険者の端くれなら、こんなコケにされて黙ってられねェだろォォォ!!!」


 「「うおおおおおお!!!」」


 たしかに、全員そこらの冒険者とは比べものにならない強さだ。

 Sランクと言うと、ステータスで10000を超え始めるレベルだ。

 努力だけでは決して超えられない壁を超えた人間たち。

 それがSランク冒険者だ。

 蛇女相手なら俺は必要ないだろう。

 だが、


 「残念だけれど、貴方達の相手私じゃあないわよ。ピッタリの相手を用意して、ア・ゲ・ル!」


 セレスはパチンと指を鳴らした。

 すると、



 

 ズズズッ

 



 場の雰囲気は一変し、ここに居る全ての冒険者に緊張が走った。

 謎の気配が、この空間を支配する。


 「そこの………ヒジリ・ケン、だったわね? 貴方が邪魔をしていた魔石回収は何故やっていたと思う?」


 まあ、普通は間違えるのが筋だろう。

 しかし、残念ながら俺は空気の読めない男だった。


 「えーっと、あそこの魔石の質を考えて………おそらく竜種のモンスターの生成と強化及び、召喚用のエネルギーの確保だな。こんなもん問題ですらねーよ? 尋ねるんだったらもうちょいヒネりな」


 「………舐めた態度を………いいわ、あれを見てまだ余裕でいられるかしら?」


 空間が歪みだす。

 その歪みは、この世界に来てから今まで見たものの中で最も巨大な歪みだった。

 その歪みの中心から手が出現する。


 「あの手………竜か!」


 「さっき言ったろ? 竜って」


 「すまん、すまん。出まかせと思ってたもんでな」


 ダグラスは全く誠意のない謝罪をした。

 完全に向こうに気を取られている。


 「見るがいいわ! 古の竜の力を!」


 歪みから赤黒い鱗が現れ始めた。

 竜は徐々にその全貌を現した。


 とてつもない存在感を放つ巨体。

 こちらを覗く赤い瞳。

 漆黒の翼。

 そして、全身を纏う()


 「まさか………」


 「影竜、シャドリグラか………!」


 誰かがそう呟いた。


 影竜シャドリグラ。

 数少ない古竜の一種。

 全身を纏う影には闇属性の性質が備わっており、それを利用した攻撃を展開する。


 「SSランクのバケモン………ッッ!!」


 古竜はSSS寄りのSSランクだ。

 途方も無い強さを誇っている。

 

 「俺たちが、あのバケモンを倒さなくちゃなんねぇのか………?」


 見たこともないバケモノを目にして恐怖せずにはいられない冒険者達。

 だが、SSランクの冒険者は動揺を見せていない。


 「怯むンじゃねぇッッ!! 俺たちは全員S以上の冒険者だ! 全員でレイドを組めば、勝てない敵では無いぞ!」


 「そうだ………俺たちが倒すんだ! やるぞォォォ!!!」


 「「おおおおおおおお!!!!」」


 「………」


 セレスはこのまま黙ってみている。






 ——————訳が無かった。








 「は?」


 誰かが間抜けな声を出した。

 当然といえば当然の反応だ。

 人は、信じられないものを見たらそんな反応をするものだ。


 さて、その信じられないものとは一体何だろうか?




 「ギュアアアアアアアア!!!!」




 答えは——————もう一体の竜のことである。



 「う、そだろ?」


 「こんなバケモンがもう一体?」


 「………………!!」


 流石のダグラスも絶句している。

 これはダグラスが冒険者を始めてから今日までの中で最大級の危機であった。


 「うふふ、いい顔ね。そう、それこそが人間本来の臆病さがむき出しになった表情。なのに………どうしてそんなに余裕なのかしら? ヒジリ・ケン………!」



 何故?

 何故、か………………



 特に理由はない。

 別に焦るような場面でも無いから普通でいるだけだ。


 しかし、 これが本当は異常だと言うことは、流石にわかる。

 だから、普通にこう言うことにした。



 「そこのトカゲより俺の方が全然強ぇからだが?」



 「っっ………………!!」


 SSランクモンスターだ。

 加減はいらないだろう。

 “敵”を相手に一級のブーストで戦うのはいつぶりだ?

 まぁ、戦いになるかはわからないけどな。


 「あいつらをあんまし待たせるわけにもいかねーからな。サクッと潰す。1秒も掛ける気はねぇ」



 俺は魔力を集中させた。



 「すぅーっ………………………ッッ!!!」



 ——————発動

 



 複合:強化一級魔法【クインテッドブースト・ダブル】






 「………!」





 あらかじめ腰に下げていた木刀に魔力を纏わせる。

 

 跳んだ。


 そして、無駄な動きをなくし、極限までコンパクトにした動きで、竜に刃を入れていく。

 邪魔など入るわけもなく、全身を斬った。

 それが終わる頃、すでに移動の準備は完了していた。

 俺はそれに任せて横の竜の元に移動し、頭を細切りにして着地。

 着地前に体にも刃を入れることは忘れなかった。

 着地後、俺は横飛びで元の位置に戻った。

 そして、





 「終わり」


 竜の体がバラバラになったのは、俺がそう言って、木刀を収めた後のことだった。

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