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第1354話


 「おおおい!!? お前………何した!?」


 「あ、生き返った」


 「それについちゃ後でゆっくり話し合おう」




 部屋に戻るなり、異変に気づいた流が詰め寄ってきた。

 しかし近づいてきたのは流だけではない。

 この様子からして、どうやら全員経験値を得ることが出来たようだ。



 「で、何したんだ?」


 「さっき貰った魔法ぶっ放してモンスターを大量に狩って来た。リターンを覚えるには足りるだろ」




 超危険地帯のモンスター数百体分の経験値。

 流石にこれだけあれば足りる。

 まぁギリギリだが。


 ワープの強力さは身をもって知っているが、これは流石にぼったくりだろうとゲンナリする。

 だが、目的は達した。


 これで移動には困らない。




 「じゃ、俺の魔力が回復するまで作戦会議といこうか」


 「ちなみに………溜まったらどうするんだ?」



 と、尋ねるラビは嫌そうな顔をしていた。

 まぁ早過ぎると思っている事だろう。

 しかし、俺は思い立ったが凶日よりは、善は急げ派なのだ。





 「出発だ」














——————————————————————————————
















 「………………」




 目が覚めると、そこは瓦礫の山だった。

 埃っぽく、野晒しの地べた。

 とても快適とは言い難く、眠る事に適しているとは言えない。


 目覚めは最悪。


 と、前置きをしたところでそれらは全てあってないようなもの。



 彼の表情はどこまでも晴れやかであった。




 「………」




 こんな寝起きだというのに、感覚は冴えていた。

 視線は正確にあるべき方向へ、気配を消して遠くに立っている女の立っている方向へ向けられた。




 「出てこい」


 「………」




 舌打ちを打ちながら出てきた青い髪のハーフエルフに、彼は見覚えがあった。

 当然だ。

 記憶を失ったわけではないのだから。


 そして、この不躾な喋り方にも、当然覚えがある。




 「お前は………どっちだ?」




 考えるまでもない。

 それはコウヤなのか、管理者カラサワ・エイトなのか、という意味だ。


 外見は同じ。

 しかし、髪色は混ざっている。


 赤と黒の混合。

 声色も同じときては判別が難しいところであった。




 「………………ずっと、戦っていた」


 「?」


 「意識が混ざり合って、内側でずっと戦っていたんだ。まぁ、消すというよりは押さえつけるって感じだけど。ただ、ここで負ければ終わりだという確信はあった。ここで負ければ、誓いを果たせない」




 彼は微笑みながらゆっくりと立ち上がった。

 そして、こう言った

 



 「俺は俺さ、青髪ちゃん」


 「!!」




 それは、自分を救ってくれた笑顔だった。

 そうだと気づいた時には、レギーナは駆け出してコウヤの肩を力強く掴んでいた。




 「コウヤ………本当に………………本当に、そなたなのか!?」


 「実は僕でした、見たいな逆転があると思ったか? させるかよ。ていうか、洞穴で一緒に生活した時から知ってるだろ? 俺ってば結構すごいんだぜ?カラサワ・エイト………俺のオリジナルにはおねんねして貰ったよ」




 聞き覚えのある軽口を耳にして、肩を掴む力が抜けていく。

 レギーナは心の底から“良かった”と、何度も呟いていた。




 「なんだよ、そんなに俺が恋しかった?」


 「当たり前だ!」


 「おぉ………」



 食い気味で言ってくると思わなかったのか、コウヤは少しばかり面を喰らっていた。



 「初めてできた私のな、なかま………なのだからな」


 「どこで照れてんのさ………はは」


 「ふふふ」




 と、おかしくなって2人で顔を見合わせて笑った。

 数秒前の怒りに満ちた表情が嘘だったかのように、今のレギーナはどこか憑き物が落ちたようにすっきりとした顔をしている。


 身分も境遇も関係ない。

 そこにいたのは、ただの少女であった。


 

 ひとりしきり笑ったあと、少し落ち着いたレギーナはコウヤに尋ねた。




 「して、これからどうするつもりだ?」


 「あー、まー流石にこのボロっちぃ部屋にずっといるってわけにもいかないしな。これからしばらく拠点にはなるわけだし」


 「拠点………? 帰らないのか?」




 意外な答えにレギーナは首を傾げた。

 管理者を抑えた今、コウヤがここにいる理由はない。


 ならば、ケンのところに帰るのが自然だと思っていた。

 しかし、



 「はは、まさか。まだやる事があるんだ。でも、1人じゃちょっと厳しいから、お前にも手伝って欲しい」




 コウヤはレギーナの敵手を置いてそう言った。

 意外な答えだったが、レギーナとしてはコウヤとまだいられる事が素直に嬉く思えた。




 「ああ。私にできる事ならば、いくらでも手を貸そう」


 「ありがとう。それじゃあ——————」




 妙な期待が膨らむ。

 もしかしたら、何もかもいい方向に行くかもしれない、と。

 レギーナは希望に満ちていた。


 祖国の恩人に刃を向ける事なく、目的を達せられるかもしれない。

 もうひとりの初めての仲間とも仲直りが出来るかもしれない。


 何故なら、もう最大の障害である管理者はいないのだから。


 

 さぁ、彼は何を望むか。

 何に繋がるのか。

 膨らみ切った希望に向けられたのは、







 「俺たちは、ヒジリケンを殺す」







 殺意で研がれた刃であった。

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