表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1352/1486

第1347話


 レギーナが現場に来る頃には、既に現場は崩壊していた。

 膨大な空間を埋め尽くすほどの魔法の応酬と、割って入れば跡形も残らないであろう激しい剣戟。


 衝撃が皮膚を撫で、伝えてくる。

 近寄れば、死あるのみ。


 本能も理性も、揃ってその場で足踏みしていた。



 人の領域を超えた戦いがそこにはあった。




 「これが………人の戦いなのか………………?」




 ルドルフも同様に、その場から動けずにいた。

 後退すら躊躇うほど、足が固まっている。




 「コウヤ………」



 「チッ、増援か………………しかも………」




 顔馴染みの敵が来て顔を顰めるコウヤ。

 やり辛いことこの上ないが、せめてもの救いは、レギーナたちが動けずに固まっているということ。

 躊躇いか恐怖か、何にせよコウヤにとっては好都合であった。


 と、気を向けているその刹那、首筋に怖気が走る感覚を、コウヤは鋭く察知した。




 「よそ見をしている暇があるのかい?」



 気を向けている。

 しかし、それは取られていたわけではない。



 「よそ見をしていると思ったのか?」




 死角からの不意打ちを、コウヤは何事もないかのように弾き、魔法を飛ばし返す。

 思考が、まるで違うのだ。

 はるか先まで見据えた予想と、加速した思考が読み取る現状が噛み合い、全ての攻撃を処理している。


 まるで別人の様になった頭を、コウヤは気味悪く思いながらも、ありがたく思っていた。




 「すごい世界だ」


 「当然さ。君の肉体はこの世界の住民を全て管理できる様になっている。頭の作りも人のそれとは比べ物にはならないだろう。劣るとしてもせいぜい神々か、知恵の神の恩恵を受けた君のお仲間くらいのものだよ」


 「そうか………金髪、やっぱ凄いやつだったんだ、なッ!!」




 休まることのない手足、魔力。

 会話出来るだけマシだと思いながらも、思考は次の、その次の、はるか先の攻撃と防御へ向いている。




 「ハハッ、スゲェな! この圧倒的万能感!」


 「お気に召したかい? でも残念だ。まだまだ完璧じゃない。だから、人の介入ですぐに崩れる」



 その“人”に管理者は視線を向けた。

 当然、コウヤとしても無視はできない。


 一か八か、ここでも一つ賭けてみることにした。



 「王女殿下!! こんな不毛な争いはもうたくさんだ!! スキルを使え!! そういう契約だろう!!」


 「乗るな青髪ちゃん!! お前、こんな世界でいいのか!? お前が散々嘆いた理不尽が、ここにはうんと広がっちまってるんだぞ!! 迷路ちゃんだって!!」




 目が泳ぐ。

 意思が揺れる。


 感情と理性が、別々に舵を取っていた。

 口が思うように動かず、モゴモゴと何かを引っ掛けている。


 ()()()()()()()

 でも、もう一方がレギーナの中でそれを封じていた。




 「殿下!! 我々の目的を、王家の悲願お忘れですか!?」


 「このままでは、我々はただの恥晒しです!! 名誉を汚してでも、王族の真の復権を果たすと誓ったではありませんか!!」


 「殿下………!!」


 「殿下!!」





 答えを急かす様に、配下の騎士たちが責め立てる。

 しかし、口が動かない。





 「お前の国の悲願とか、そんなもんは知らねぇ!! でも、きっと大丈夫だ!! 俺も、ラビも、金髪だっている!! 閉じ込められた頃とは違う! お前に差し出されてる手は、そこら中にあるんだぞ!!」


 「こ、コウヤ………………私は………!」




 傾く。

 感情へと。

 仲間を助けたいという、その感情へと。


 手が伸びる——————




 「青髪ちゃん——————」












 ——————そして、力がそれを押さえつける。




 「私、は………契約、を………守る」




 契約。

 それは、レッドカーペットの呪い。

 力と引き換えにされた、管理者への絶対遵守。


 そのために、ルージュリアはレッドカーペットの否定をしていた。


 しかし、レギーナにはその必要がなかった。

 操られてでも果たしたい望みがあったから。


 故に、意思は無用。

 はなから意味はない。


 感情が奪い返した舵も、全ては無駄。




 何故なら、そういう契約なのだから。





 「言っただろう? 契約だって——————」





 ずぶ、と。

 嫌な感触がコウヤの手に伝わる。


 胸に刺さった致命傷。

 しかし、その死は肩代わりされる。

 レッドカーペットの力によって。



 そして、その手は一瞬拘束され、管理者にとって絶好の隙を生んだ。




 「さぁ、」




 隙を利用し、コウヤを羽交締めにする。




 「何人犠牲になるのやら」






 その瞬間、光が辺りを包み込んだ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ