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第1306話


 「真髄………?」




 こくりと、ギルヴァーシューは頷いた。




 「同じ力を持っているからわかる。お前は、まだこの力を本当の意味で使いこなせてはいない」


 「………それは………」




 わかっている。

 俺の力はまだ完全ではない。


 使えたら、きっともっと早くこのフェアリアでの問題も解決できたはずだ。


 だったら知りたい。



 それに、確かに強くなるくらいの手土産がなければ、ミラトニアで何かあった時に、蓮達に申し訳がたたない。




 「じゃあ、どうやるんだよ」




 ふむ、と。

 ギルヴァーシューは、顎に手を運び、首を手で掴みながら、人差し指でフェイスラインをさすった。


 これはどうやら昔からのようだ。




 「………知る力まで使えると言うことは」


 「ん?」


 「一応、神の知恵がどんな力なのか理解はしているんだな?」




 その質問の解答は、当然YESだ。

 神の知恵………その本質は知識ではない。


 この能力は、保有者に知識を与え、知る力によって物体、現象の情報を知覚させた上で、それらを自在に操作するというもの。

 世界を作り変える、真の意味で神の如き力を持つための知恵。


 それがこの神の知恵だ。




 「当たり前だろ」


 「ふむ。だったら多少なりに使えると思うが………お前、意図的に封じてるな?」


 「ああ。知る力を使う前、一度無理やり使ったせいで制御が効かなかった。その時から、」


 「——————待て」




 ギルヴァーシューは、ただならぬ様子でこれの言葉を遮った。

 そしてぶつぶつと何かを呟くと、再び質問を投げてきた。




 「じゃあ、無理やり使おうと思えば使えるのか?」


 「一応な。けど、まだ知る力との統合が取れてない以上、まだ周囲を巻き込みかねないんだ」



 先代命の神と戦った時に、俺は一度神の知恵の能力を、自分が正常に使える範囲を超えて使った。

 おかげで勝つことはできたが、ルナラージャの国土の半分以上が壊滅した。


 知る力で、多少正しい使い方は出来るようになったが、まだ扱うべきでないだろう。

 説明書だけで人が難しい機械を使えないのと同じ。

 技術が必要なのだ。


 だが、その技術を得る方法がないのだ。

 使用中は特に意識が保てず、暴走してしまうため、慣れもクソもない。

 そもそも使えば誇張なく一帯が滅びる。


 練習も出来ない。

 


 こいつは一体、どうやって俺にそれを教えるつもりだろうか。

 そう思っていると、




 「……………ククク。それは良い。お前、あと少しで完成だぞ」


 「!?」




 予想外にも、ギルヴァーシューはそんなことを言ってきた。




 「良いか。本来神の知恵の使用権限にはロックがかかっている。最初は知識。次は読み取り………つまり知る力。そして最後って具合にな」


 「あ………」




 確かに、知る力を得た時は、ある日突然使えるようになった。

 あれはロックと言うことだろう。




 「心当たりはありそうだな。つまり、ロック自体はお前にもあったわけだ。だが、お前はどう言うわけか最後のロックを破壊している。神でもねぇくせに大したもんだ」

 

 「ケッ、そうかよ」


 「なにぃ? 態度悪いガキだな」



 ただでさえ悪い目つきをさらに尖らせるギルヴァーシュー。

 親父だとわかっていても、このあまりにも俺の親父らしくないところが今日にむず痒い。

 いまいち調子が狂う。



 「まぁとはいえ、だ。お前が力を使いこなせねぇペーペーだってのに変わりはねぇ。お前より力を使いこなせる俺が出てきちまってるのがその証拠だ」


 「ぐぬ………」

 



 悔しいが何もいえない。

 俺の記憶から抜き取られたはずのこいつが俺よりも力を使いこなせていると言うことは、つまりまだ俺は神の知恵について使えてない部分が多々あるということ。


 だが、やはりまだ上がある。

 癪な話だが、従う価値はあると言うことだ。




 「要するに、お前は本来ゆっくり時間をかけて強くなる力を、最大出力で渡されちまってる状態だ。だから、その出力を抑えながら使う方法を学ぶ必要がある」


 「わかった」




 微調整ができるようになればだいぶ変わるだろう。

 今の俺は、抑え方すら知らないのだから。




 「んーじゃあそうだな………よし、テメェにおもちゃをくれてやろう」


 「オモチャだぁ、ぉあ!?」




 ギルヴァーシューは、乱暴に俺の頭に手を置いた。

 すると、




 「今から三つほどパズルのイメージを送る。力を使う要領で………つまり、神威を使ってこいつを解け」


 「シュミレーターってわけだ」


 「そう言うこと、だ!」


 「!!」





 頭の中に、三つのイメージが流れ込んだ。

 パズル………なんて生優しいものではない。

 とてつもなく難解な術式の結界だ。




 「手の甲を見てみろ」


 「む」




 手の甲に、3本の線が入っていた。




 「そこを知る力で見るのがスタートの合図だ。結界を解除すれば、線が一本消える。言っとくが、ただの結界じゃない。トラップ付きだ。そこトラップを踏まないようにはトラップを耐えず押さえ込む必要がある。それで力を抑える要領がわかる」


 「なるほど。抑え方と使い方、どっちも学べるわけだな」


 「そういうことだ」




 とんだ知育玩具だ。


 しかも、結界中のトラップに触れた瞬間電撃が流れる嫌がらせつき。

 なんて性格が悪いんだ。




 「あ、10日で解けよ」


 「10日ァ!?」


 「ああ? おいおい勘弁しろよ。まさかこの程度のパズルに10日以上かけるような情けねぇこと言わねぇよなぁ」




 ニヤニヤと。

 この男はわかりやすい煽りをしてきた。


 しかしムカつく。

 他でもないこいつに言われているのがムカつく。




 「まぁそこまで言うなら、今からちょっとだけ俺が教えてやらなくもねぇかな」


 「この野郎………」




 ………しかし、これで強くなる目処はたった。

 

 俺はまだ、先へ行ける。


 

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