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第1297話


 エルたちを見送ったその翌日。

 早朝から全員叩き起こして、今日からの予定を伝えることにした。




 「コウヤ。例のミッションの位置は、確かユグドラシルの幹でいいんだよな」


 「おう。そこにある洞窟の最奥にちっちゃい泉があるから、そこにコインを投げ込めばいい。ああでも、確か投げる時は後ろ向きに、とかだったかな」




 どこかで聞いたような話だ。

 確か、ローマのトレビの泉、だったか。


 童話じゃないにしろ、やはり何かしらの物語と結びついてはいるらしい。




 「へぇ、本当に向こうの文化を使ってるのね」


 「そういえばメルナは異界童話関連は初めてだったっけか」


 「まともなミッションをする余裕がなかったし、そもそも王候補が死んだと思ってたから、ミッションをして稼ぐって発想がなかったのよ。大変だったわ。あの気が狂いそうなモンスター討伐周回」




 身震いしながらそう呟くメルナ。

 ゼロも珍しく、わかりやすく嫌そうな顔をしていた。


 そう、こいつとゼロは固有スキルを取り戻すべく、モンスター相手にひたすら経験値を稼いでいたのだ。

 【元の肉体の能力のうち一つ、それを数値にして20%引き継ぐ】

 これを行うための経験値稼ぎだ。

 複数の値分の経験値が必要であった俺とは違い、こいつらの必要経験値はまだ少数でよかったのだろうが、それでもレッドカーペットに頼れない以上寝る間も惜しんで戦ったことだろう。




 「それはどうでもいいだろう。肝心のミッション内容はなんだ?」


 「それが文字化けしててよくわかんないんだよな」




 と言って、コウヤはゼロに攻略本の文字を見せた。

 覗き込むと、確かに文字がある地点から狂っている。


 暗号かと思ったが、全く違う。

 本当に適当な文字の羅列だ。




 「まだ俺の力じゃ見れない領域ってことかな」


 「それは………大丈夫なのか?」




 ゼロが懸念しているのは、管理者による罠の可能性だ。

 もっともな心配である。

 しかし、それはないと断言できるだろう。




 「大丈夫。この世界のルール上、奴は俺たちに対して不利な行動が一切取れないんだ。悪意を持って張った罠なんて完全に規制対象だろうぜ」


 「そういうことだ。んじゃ全員準備しろ」


 「えー、朝っぱらから行くのかよ」


 「文句言うな流。あとオメーはウルク起こしてこい」




 ぶつぶつと文句を言いながら奥の部屋へと流は消えていった。

 さて、俺も準備をするとしよう。


 この先、何が起きてもいいように。











——————————————————————————————














 「よし、次はここを………うん、左だ。右に行くなよ。クエイクドラゴンが巣を張ってる」




 攻略本の地図でモンスターの位置を把握しながら、俺たちは移動をしていた。

 力をつけたコウヤの攻略本は以前より更に詳細になっており、今のところ一度も敵と遭遇することなく移動することが出来ていた。




 「やっぱすごいね、君。一家に一冊欲しいかも」


 「それ、俺度外視じゃね? 本だけじゃね?」




 コウヤもウルクも、かなり余裕のある様子で会話をしていた。




 「気楽なものだな。王女だからか?」


 「言い方」




 と、メルナにゲンコツを食らいながら毒を吐くゼロ。


 だが確かに、こんな危険な場所のど真ん中でこうも余裕が見えていると些か妙に思うのは理解できる。




 「そりゃそうだよ。だってミー今ウルちんじゃないし」


 「!! その喋り方……………お前チビ神か」


 「そだよ。ウルちん寝ちゃってるから、ミーが今動いてんの。ミー本体がやってた要領でやってみたら、案外行けたんだよね、これが」



 そう、こいつの本体………つまり、先代命の神がウルクの体を乗っ取っていた要領で、今チビ神も体を動かしているということだ。

 乗っ取っているといえば物騒だが、この様子だと同意を得ている………というか、ウルク側から押し付けてる模様だ。




 「悪いねチビちゃん。ウチのがまた迷惑かけて」


 「なーちんが謝ることないさ。それに、ミーもたまには表に出てきて身体を動かしたいんだよ。それに、彼とちょっとばかし話がしてみたかったからね」


 


 じーっと、チビ神はコウヤに視線を送った。




 「? 俺?」


 「うん。面白い力を持ってると思ってさ。人のそれと言うよりは、どちらかというとミーたちのものに近い雰囲気を感じる」


 「! 罰の神の権能ってことか?」




 いや、何もおかしな話ではない。

 こいつの能力が、生物迷宮の王の力が混ざったものであるのなら、確かに性質的には神のものとなるだろう。


 そもそも、生物迷宮の力自体、罰の神に由来する。




 「罰の神………か。神々の間でも禁忌とされる過去の大罪。【自然の神】が犯した罪の象徴………」


 「「「??」」」


 「自然の神………?」


 


 初めて聞いた名前だ。

 面倒話が、また複雑になる予感がした。




 「えー。まだごちゃごちゃすんの?」




 コウヤのやつ、口に出しやがった。

 



 「罪だの罰だの、もう俺わかんねぇんだけど」


 「うーんそうだな。それじゃあ、道すがら簡単な説明をするとしようか」





 そう言って、ウルクの体を借りたチビ神は、語り始めた。









 ——————ともすれば、このフェアリアの根幹にも関わる話を。
















——————————————————————————————






 おさらい。

 必要な人は確認してください!





 罰の神。

 ラビや生物迷宮にとって、主神となる神。

 ケンの所属するミラトニア王国にとっての知恵の神と同じ構図。


 以前、ミレアが手にした勇者のレッドカーペットは、この神の力が眠るとされていた。

 ただし、実際には異なっており、眠っていたのは【罰の神】の力によって封印されていた【罪の神】の力であった。

 封印されているため、罪の神の力は感じ取ることすらできず、表面上には【罰の神】の力が残っていたので、力を保有するミレアは、一応【罰の神】の権能である裁定の力が少し使えた。

 要するに、【罪の神】の力を覆っている表面の【罰の神】の力だけでも権能の行使が可能だったと言うこと。





 罪の神。

 かつて大罪を犯し、元の名を奪われた神。

 以前は妖精族を治める主神であり、妖精王とはその後釜であった。(それ故に妖精には主神となる神がいないため、代理戦争に参加しなかった)


 現在は、【罰の神】による封印を、ガイアナの暴走ダンジョン内に残っていたノームの魂を消費することで解除し、ミレアがその力を使っている。

 

 





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