第126話
「ねぇねぇ、見てあの服」
「何あれ! 可愛い!」
「美人がいるぞ!」
「あの子超可愛いな! 姉妹か?」
「あれ確かユカタだっけ?」
案の定注目の的になっている女子3人。
まぁ、目立つわな。
「ちゅーもくあびてる」
キョロキョロと周りを見るラビ。
こいつも見た目だけは可愛らしい。
しかしその分変な奴に目をつけられてる事も度々ある。
「お前に集まってる注目の半分はアブネーから無視しろ」
見る限り危険な害虫が湧きまくってるな。
特にあのおっさんいっつも見てるな。
いい顔してんのにもったいねー。
「そう言うケンくんにも注目が集まってますね」
「そりゃまた違う意味での注目だ」
俺もそこそこ注目を浴びる。
そう、あれだ。
金髪のガーディアンだ。
「おい見ろ、ガーディアンだ」
「ちくしょう、いつもあんな可愛い子連れ回しやがって」
「やっぱりワンチャン倒せそうじゃね?」
「馬鹿かお前。金髪のガーディアンと言えば、この前“万宝”相手に睨み合いで一歩も引かなかったらしいじゃねーか。万年Eランクのお前じゃ天地がひっくり返っても勝てねーよ」
最後のやつどっから広まったんだ?
「あ! あれたべたい! ししょうかってくれ!」
ラビが裾をぐいぐい引っ張ってくる。
「わーったから引っ張んな。にーちゃん、それ1個………ってアンタか」
「おや、ケンくん。久しぶりだね。君も今回の大狩猟祭に参加するんだったよね」
彼は以前ラクレーと会った居酒屋の店長だ。
みんな“てんちょー”と呼んで慕っている。
それにしても、
「てんちょー、店出してたんだな。アンタの飯うまいから嬉しいぜ」
「いやぁ、褒めてもらえて光栄だよ。そこの彼女達は君の仲間かい?」
「ああ、今回参加するメンバーだ」
「この子も?」
てんちょーはラビを見てそう尋ねた。
まぁ、みんな大抵最初はそう尋ねてくる。
「おう」
「へぇ。頑張ってね」
「アンタは小さいのにってピーチクパーチク言わねーんだな」
「人は見かけじゃないって言うのはわかってるつもりだよ。まぁ、僕の場合あの子を見てるからって言うのが大きいんだけどね」
「ラクレーか。確かにな。あんなナリで国内最強の剣士だもんな」
茶髪で小柄なヘアバンドが特徴的なあの少女の姿が思い浮かぶ。
確かに見た目じゃ測れない。
「はい、お待ちどうさま」
「おう。ん? ちょっと多いな」
「小さな冒険者へのちょっとした応援さ」
「やったー! ありがとー!」
出てきたのは串焼きだった。
やっぱ祭りではこんな風に立って食えるもんがいい。
「うま!」
美味そうに食いまくっているラビ。
そしてその横でしれっと食っているリンフィア。
そういえばこいつも大食いなんだった。
「じゃあなてんちょー。今度また店行くよ。あ! おいテメーら! 俺の分食うんじゃねー!」
「はいはーい」
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「ねぇねぇ蓮くん! お祭りだよ! お祭り!」
「ここの祭りは日本とは違う感じだね。結構好きだな」
「ナナミネ・コトハ………またレンと仲良くしてますわぁ〜………………」
「もしかしたらまだいるかな? 聖くん………」
「俺完全に場違いじゃね? 獅子島なんで連れてきたんだ、メンドクセー」
「すずっち、今くらいはしゃごうぜ?」
「ん」
「ちょっと、遊びきたんじゃないのよ」
フェルナンキア大狩猟祭。
勇者一行は祭りの会場のど真ん中にいた。
「優ちゃん、ちょっとだけ!」
「だーめ」
「いいんちょ、そんな頑固だといつまでたっても彼氏が出来ないぜよ」
「ほっといてよ!」
そして、予想通り三馬鹿の世話をしている綾瀬。
恨めしそうに蓮を見ると、苦笑していた。
「ごめんね、綾瀬さん。流石にこのテンション収めるの大変だからね」
「だとしてもちょっとくらい手伝ってもバチは当たらないんじゃない?」
「あはは」
「笑って誤魔化さない!」
と言いつつも三馬鹿の面倒を見てくれるので感謝している蓮である。
「あ、獅子島くん。あれって浴衣じゃない?」
「浴衣? あ、本当だね。へぇ、こっちにも浴衣ってある………いや、待てよ。浴衣………」
蓮は何か考え出した。
「美人さんだなぁ」
「ことりんがそれを言うかね。このモテ女!」
「琴葉ちゃんも負けてないと思う」
七海と美咲にそう言われて少し照れたような顔を見せる琴葉。
「いやぁ、あはは。あれ? 蓮くんどうしたの?」
「………あ、いや、考えすぎかな。何でもないよ。任務は確か明日からだよね。だったら今日くらいは楽に行こうよ」
「お! 蓮くん話がわかるねぇ。ししし!」
明るく笑う琴葉。
「綾瀬さんもそっちの方が楽でしょ?」
「そうね。うん、そうしましょ」
「気を抜きすぎないようにそこだけは注意してね。じゃあ、10時に宿泊先の宿で。大体その時間にルドルフ教官が到着するから遅れないように。じゃあ、解散」
彼らも結局今日は遊ぶらしい。
息抜きは大切だ。
「すずっち、ななみん、一緒に回ろうよ」
「おうよ!」
「ん」
三馬鹿はピューっと走っていった。
元気の良さは学年最強だ。
「綾瀬さん、一緒にまわる?」
「ええ、そうね。邪魔しちゃ悪いから高橋くんはこっち」
「まじかよ」
綾瀬と美咲と高橋はそそくさと去っていった。
「むむむ………」
「殿下、ご機嫌が優れないのですか? 先程から何も仰られないので」
「もう! 構って欲しいですわ!」
フィリアは蓮にしがみついたまま祭りを回った。
国宝級の美男美女のカップリングだ。
お陰で注目を嫌という程浴びまくったのは言うまでもない。
ちなみに魔法具でフィリアとは認識できないように細工はしている。
蓮は先程考えていたことを頭の片隅でまだ考えていた。
浴衣………まさかこの街にいるのか? ケン




