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第119話


 「【ファイアボム】!」


 「【ウインドカッター】」


 飛び出した炎球を風の刃が切り裂く。

 裂かれた炎球は同時に爆発を起こし、煙を発生させる。


 リンフィアはそれを利用して奇襲をかけようとした。

 しかし、向こうもそのつもりだったらしく、同時に飛び出した。


 煙の一部が晴れ、そこから2人の姿が見えた。


 「っ………」


 「………」


 奇襲に失敗し、眉をひそめる。

 

 2人はぶつかり合い杖を押し合う。

 黒リンフィアは下に押し下げようとした。

 だが、リンフィアはそれに気づき、逆方向に力を加え、杖を抜き、攻撃を仕掛ける。


 「ハァッ!」


 棒術スキルもだいぶ上がって来た。

 攻撃の練度は確実に上がっている。


 だがそれは向こうも同じ。

 だから終わらない。

 なので少し作戦を変更した。


 「【グランドライズ】」


 地面が隆起し、黒リンフィアはバランスを崩した。

 そして続け様にもう一発。


 「【ファイアボム】!」


 多少の無茶は厭わない事にした。

 リンフィアはあらかじめ掛けておいた防御魔法でダメージが小さい。

 だが、痛いものは痛いのだ。


 「ぐっ………!」


 爆風で距離が生まれる。

 リンフィアは向こうが態勢を整える前に攻撃を仕掛けた。


 「やァッ!」


 防ぎきれず、何発か攻撃が通った。

 すると、

 

 「【ガスト】」


 魔法を使い、自分を飛ばして逃げる黒リンフィア。

 2人は回復をし、再び向き合う。

 

 「………」


 「………」


 2人は、この戦いの終わりが近い事を感じていた。

 相手が決めにかかって来ようとしていると分かっているのだ。


 そろそろ、この空間での成長可能な上限に到達する。

 そうなって仕舞えば、本当に終わらなくなってしまう。

 不安定で不確定要素の多い今だからこそ、決着をつけられるのだ。


 「これで、終わらせる………!」


 リンフィアは【デュオブースト】を発動し、身体強化をする。

 四級までなら詠唱短縮可能。

 それがこいつの武器。

 棒術と魔法を駆使して一気に攻める。


 「行きます!」


 デュオブーストによってスピードが先程までのもの以上に高まっている。

 走りながら杖を掲げ、


 「【ガスト】!」


 風魔法でさらに加速。

 一気に距離を詰める。

 そして、


 「【ブレイクサンダー】!」


 雷四級魔法【ブレイクサンダー】


 電撃を一点に収束し、直接ぶつける事でダメージを与える。

 攻撃範囲は狭いが、その分威力が高い。


 それを黒リンフィアはギリギリで避け、魔法を繰り出す。

 

 「【ファイアスラッシュ】」


 炎の刃は、リンフィアの杖を切り裂いた。


 「しまっ——————!」


 これは大変な事態だ。

 魔法の威力の減少はもちろん、棒術は使えないというハンデを負う。


 黒リンフィアはそれを利用し、接近して攻撃を繰り出した。

 今まで杖で受けていたところも全て躱さなければならないので、当然全ては避けきれず、


 「——————!」


 「がッ、ぁ………」


 ダメージを負った。

 急いで回復をしようとして、胸の魔法具に触れようとした瞬間、


 「【アイスバレット】」

 

 アイススピアと違い、尖ってはいない。

 しかし、重量とサイズはこちらが上。

 至近距離の場合は効果的だ。


 

 魔法! マズい回復を………でも攻撃を防がないと………いや避けるべきじゃ………どちらにしろ間に合わない………動かないとだって、だって、だって



 「死——————」







 一瞬。


 時間が止まった。

 

 ああ、頭………が、乱れ、て——————









———————————————————————————








 大きな影が見えた。


 それは血の記憶。


 リンフィアに流れている血に混ざり合った魔力がそれを見せている。


 では、見えている影は一体何何だろう。


 リンフィアはゆっくり影を覗き込む。

 すると、影もリンフィアを見ていた。


 わかる。

 これはヒトだ。


 ヒト、と言っても人間とは限らない。

 ただ、これが意思を持っているという事はわかる。


 すると、


 『汝、——————の血を受け継ぐ者。証をここに』

 

 証?


 リンフィアは何のことかさっぱりだった。

 それに、上手く聞き取れなかった部分もある。

 訳がわからずオロオロしていると、


 『汝の血をここに』


 と、言われた。

 よく分からないが、影は血を求めているらしい。

 リンフィアは親指を小さく噛み、その血を影に与えた。



 『汝、——————の血を受け継ぐ者。契約に従い、封じられし力の一端を解放する』










———————————————————————————











 そして時間は動き出す。

 依然、危機的状況のままである。

 しかし、



 「——————ぁ」


 と小さく声が漏れる。

 それと同時に前方の氷塊の軌道がそれ、帽子を掠めた。

 帽子は壊れてそのまま地面に落ちる。


 

 ツノが生えていた。

 魔族の特徴であるいくつかの部位にツノがある。

 半魔族も、魔力が高まり、限界を超えると出てきてしまう。



 ——————つまり今のリンフィアは、普通ではない。




 「………!!!」


 黒リンフィアは逃げようとしたが、上手く足が動かない。

 リンフィアはまるで幽鬼のようにふらふらと立ち上がり、黒リンフィアに手をかざす。

 そして、



 「      」



 リンフィアは明らかに通常の言語とは違う発音で何か言うと、黒リンフィアは霧のように消滅した。


 「あ………」


 リンフィアは自分の手をまじまじと見ている。

 何かが起きた。

 リンフィアは魔力を操り、何かをしたのだ。

 操られたり、無意識だったりではない。

 リンフィアは確実に何かを得ている。

 

 「今の力は………」


 そして、リンフィアの意識は現実に戻った。

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