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第106話


 「こいつァ………」


 そこに書かれていた内容は人の名前だった。

 それなりの人数の情報が事細かに書かれている。

 例えば外見など。


 「名簿か? 何でこんなモンを………」


 「書かれてるやつをよーく見てみろ」


 確かにこれは名簿だが、ただの名簿ではない。

 書かれている人物には共通点があった。


 「ラクレー………ギルも………俺の名前も入ってやがる!」


 「そこに書かれてある名前はある一定の強さ以上の力を持った奴の名前だ」


 「!」


 ダグラスは紙を捲ってそれを確かめた。


 「マジじゃねーか。何でこんなモンを魔族が持ってンだ? どっかから情報が漏れてんのか?」


 改めて紙を見直すダグラス。


 「大体全員Sランク以上の冒険者だな………Gランクは流石にボウズだけだ」


 だろうな。

 逆にいたら会ってみたい。


 「G? 坊やがか? 何故だ」


 「まだ試験を受けてねーからだ」


 「全く、見合った実力の者には相応の地位を与えるべきだぞ。お前相手に圧勝ならSSくらいあってもいいだろう」


 「おまっ、何で知ってンだよ!」


 「私の情報力を知らないわけではあるまい」


 ニヤリと笑うギルファルド。

 それをみたダグラスはケッ、と悪態をついた。


 「まさかテメェが情報流してんじゃねェよな………」


 「それこそまさかだな。私ならもっと上手くやる」


 「そういうこと言ってンじゃねェよ!」


 ギルファルドがダグラスをからかって遊んでいる間に俺はメイと会話していた。


 「この魔族、どうするつもりですか?」


 「尋問するだろうな。向こうの目的やら何やら。でもこいつが小物だった場合はあまり期待できねーけどな。まぁ多分その心配はないと思うが」


 鑑定して見た限りこいつはAランク冒険者程度の実力はある。

 多少は情報を握っている筈だ。


 「もうそろそろ帰るか」


 「お、帰るのか? ボウズ」


 「ああ、あいつらにいつ帰るとか言ってなかったからな。早めに帰りたい。あ、こいつの尋問任せていいか?」


 「ああ、任せとけ。脅しが得意なやつに心当たりがある。ボンボン吐かせてやるぜ」


 それなら大丈夫そうだ。


 「そんじゃあな、ボウズ」


 「おう」


 俺が部屋を出るとき、メイも一緒について来た。


 「私もそろそろ帰ろうと思います。お先に失礼します」


 「ん、じゃあな」





 俺たちはダグラスの部屋を出て、ギルドの入口まで行った。







 「じー………」


 俺はメイをじーっと観察していた。

 すると視線に耐えきれなくなったメイが、


 「な、何ですか急に」


 「お前、やっぱマイにそっくりだな」


 「そうですか?」


 「顔は殆ど同じ。でもお前の方が多少垂れ目だな。後は髪の色くらいか? 他はもう見分けが付かん」


 「でも目が違ったら結構顔って違って見えるものですよ」


 確かに。

 よく見ると違う。


 「まあ、最初は混乱したが、今は大丈夫だ」


 「自分ではそこまで似ている感じはしないですけどね」


 「性格はお前の方が若干活発な感じの印象だな」


 「そうでしょうか?」


 「少なくとも俺はそう思う」



 


 そんな感じで会話していたらいつの間にか宿屋に着いていた。


 「着きましたね」


 「ああ、そんじゃあな」


 俺は再び外に出ようとした。

 すると、


 「帰らないのですか?」


 「ちょっと野暮用を思い出した。あのガキどもの家に行くつもりだ」


 「じゃあ、遠回りじゃないですか。直接いけばいいのに」


 「言うほど遠くねーし、俺も流石に送るくらいはする。じゃあな」


 俺は聞いた住所まで飛んで行った。

 メイはその様子を見えなくなるまで眺めていた。


 「ふふふ、優しいですね………ありがとうございます」










———————————————————————————











 「たしか………この家だな」


 ここはいわゆる貧民街。

 大都市の暗部。


 「ボロいな………貧民街とは聞いていたがここまでか。日本じゃありえないくらいの酷さだ」

 

 殆ど腐った木でできた家、穴に開いた壁、腐臭、ゴミ、酷い有様だ。

 ここに住んでいるのは訳ありの人たち。

 様々な理由で街に住めなくなった人がここに集まっている。


 「こんな環境で生きていたのか。そりゃあ金が必要なわけだ」


 俺は何枚か金貨を渡したが、あれで足りるだろうか。


 「入るか………邪魔するぜ」


 俺は家に入った。

 ここはあのパーティのヒーラーだった女の子が住んでいる家だ。


 「帰って来てねーのか? おーい」


 返事はない。

 留守のようだ。

 仕方ない、病人だけ治して次に行くか。


 「マジで誰もいねーの——————うおっ!」


 石が飛んで来た。

 それから次々瓶やらガラスやらが飛んで来た。

 いきなり家に入られて怒っているのか?


 「チッ、ンだよいきなり」


 「それはこっちのセリフだ」


 奥から現れたのは、俺と同い年くらいの男だった。

 

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