『クラリス：認める気ゼロね』

「感謝するぞ小娘ども！　我は封印されている間もずっとこの時を待ち望んでいた。そう、我は千年この時を待っていた！」

　突如として何の前触れもなく現れた魔王。

　〈マスターがわざわざ見付けてしまいましたよね？〉

　これもきっと、あの駄女神に付けられたスキルのせいに違いない！

『シルフィン：人のせいにしてますけど、封印の宝珠壊したの貴女ですからね……』

　偶然にも私達の目の前に現れた魔王。

　さてどうしようかな？

『クラリス：認める気ゼロね』

『ブリギット：あぁ、何がなんでもこのまま通す気だな』

『シルフィン：……この状況でまだしらを切るとか！？……ハクア恐ろしい子』

『ティリス：流石ハクアさんですね！』

『イシス：貴女最近それしか言ってないわね？』

　この緊迫した状況で和むなよ！！

「ハクアどうするの？」

「ご主人様」

　クソ、冗談抜きでヤバイな。こんなんとやりあえるほどの戦力、少なくとも今の私達には無いよ！！

　目の前のローブ姿の人物から発せられるプレッシャーは流石は魔王とでもいうような強烈なものだった。

　これはもう死亡確定なんじゃないか？

「ククク、どうした小娘ども恐しくて喋る事も動く事すら出来ないか！」

　魔王はプレッシャーに当てられ、動けずにいる私達を更に追い込もうとする。

　何とか、何とかこの窮地を脱する術を考えないと、皆こいつに殺される。

　私がそう考える間、魔王は余程機嫌が良いのか饒舌に話し続ける。

　〈マスター大変です〉

　この上まだ何かあるの！？

　〈魔王のステータスを表示するので見て下さい〉

　ステータスを？　何か打破する切っ掛けでもあるの？

　〈見た方が早いので今表示します〉

　ヘルさんがこんなに慌てるなんて状況はそこまで絶望的なのか。

　──そして私はヘルさんが表示した魔王のステータスを確認する。

　な！？　こ……これって、本当？

　〈はい、間違いありません〉

　ステータスを確認した私は静かに魔王に向かってゆっくり歩き始める。

「ククク、何だ白いの？　そうかそうかお前から殺して欲しいのか？　ん？　ならばその望み我が叶えてやろう！」

「ご主人様！」

「「ハクア！」」

「おねちゃん！」

　〈キュー！〉

　皆が私に向かって名前を呼ぶも魔王のプレッシャーに晒され動けずにいる。

　かくいう私も魔王のプレッシャーは感じているので正直脚がすくみそうになる。それでも何とか【魔闘技】を発動し魔王に向かって歩いていく。

「ふん、我に戦いを挑もうとはいい度胸だ！　だが貴様如き小娘がこの不死の王(ノーライフキング)に敵うと　ズドムッ！　みぎゃっ！」

「「「へっ？」」」

「あ……あ、あぅ」

　私は魔王が気持ちよく喋りながら眼を閉じた瞬間に一息に距離を詰め【鬼気】まで使った全力腹パンを食らわせる。もちろん衝撃が逃げないように攻撃の瞬間足を踏んで体を押さえるおまけ付きで、だ。

　まさか攻撃が飛んでくるとは思わなかった魔王は、その攻撃を無防備な状態で叩き込まれ、間抜けな声を上げ膝から崩れ落ち私の足元でピクピクしている。

　吹っ飛んだりして衝撃抜けないように足まで踏んで殴ったからね！　威力満点だぜ！

　そして、それを見た仲間達も何が起こったのか全く理解できずに思考も動きも止めている。

　私はこの状況で生前に見たボクシングの試合を思いだし、脳内再生されるゴングのカンカンカーンという音と共に右手を突き上げ勝利の余韻を噛み締めた。

　……勝利とはいつも虚しいぜ。

「「「いやいやいや」」」

　それを見た皆が何故か猛烈に首を振り否定してきた。

　何故だ？　解せぬ。