これもみんなスキルのせい!
「いや楽だね!」
精霊カーバンクル事、新しい仲間キュールの加入で戦術の幅が劇的に広がった。
今までは後衛を気にしながら戦っていたけど、キュールがディフェンスに徹してアリシア達を守っているので、私達が攻撃に専念出来るようになったのが大きい。
キュールが入るまで誰か一人はカバー出来るようにしてたからね。単純に攻撃に参加出来る人数が増えたって事はかなり大きい。
「キュール偉い!」
「うん、お陰で楽になったかな」
「そうですね」
──でも……一つだけ問題があるんだよねー。コレが。
「ゴブー!」
〈ギュー!〉
「うわ、また始まった」
「キュールもアクアもダメですよ!」
〈キュルー!〉
「アクアもね?」
「おねちゃん止めないで……ゴブ!」
そう、何故かこの二人? で良いか。この二人の相性がすこぶる悪い。
何故だ?
キュールもアクアも、流石に戦闘中はお互いにちゃんとカバーしながら戦えるけど、何故か戦闘が終わると威嚇しあったりお互いにちょっかい出しあっていた。仲良しか!
「もうダメですよ!キュール」
〈キュー!〉←不服そう
「アクアも落ち着こう」
「おねちゃん、人には誰しも戦わなきゃいけない時がある!」
何か名言言い出した!?
「でも、二人共本当に相性悪そうだね?」
「何でなのかな?」
本当にね!?
「キュールもアクア以外には普通になついているんですけどね? 何故かアクアにだけ態度が」
「今が決戦の時ゴブ!」
だから何で常に臨戦態勢なの!!
私はキュールに向かってファイティングポーズを決めているアクアを宥め、ダンジョン内を進んでいた。
ゴブリンとカーバンクルって種族的に仲悪いの? もしくは妖精種?
〈どちらも聞いたことがありません〉
『ほぼ全員:私達もない』
ヘルさんも女神もないとなると、単純にアクアとキュールの相性がすこぶる悪いだけなのかね?
その後も何度か戦闘を繰り返しダンジョン最下層の階段に辿り着いた。
因みにエレオノがレベル5に、コロがレベル3にキュールがレベル4になりました。
「……やっと最下層までついたね」
「長かった。てか本当に疲れたよ」
「いえ、多分早い方だと思いますよご主人様」
「アリシアの言う通りかな」
「ゴブ~!」
うん、アクアはまだ威嚇してるよ。
でもまぁ、地図だと寸尺狂ってて分からないけどこのダンジョン逆三角形だから、下に行くほど探索場所も少なくなるんだけどね。だから代わりにモンスターとの遭遇率も増えて、結果難易度も上がってくんだから良くできてる。
〈一応この先にはコボルト・ロードが居る筈でしたが、何故か20層にまで上がって来ていたので、何が出てくるかは分かりません。全員警戒を怠らないで下さい〉
そうなんだよね。果たして何が出てくるやら?
「全員直ぐに脱出出来るようにアイテムの準備忘れないで」
「分かりました」
「OK」
「分かったかな」
「ゴブ!」
言った後になんだけど、脱出アイテム使用禁止とかじゃないよね?
〈そのような特殊効果は確認されていませんが警戒するに越したことは無いでしょう〉
まぁそうだよね。
私達はヘルさんの忠告に従いHP、MPを回復し、アクアの強化魔法を掛け直して慎重に階段を降り始めた。
「暗くて見えないね」
「おねちゃん明かりはいる?」
「下まで降りてからにしよう」
階段を降りきるといつものように部屋の中に明かりが灯る。
私達は何が起きても良いように警戒を強めるが──。
あれ? 何も起きない? 何で? まさかの留守?
「何も居なくない?」
「ハクアもそう思う?」
「気のせい……。じゃないですよね?」
「多分ボクも気配は感じないかな」
「ゴブ」
〈キュルー〉
実は仲良いだろお前ら二人!?
じゃなくてどゆこと? ヘルさん何か分かる?
〈いえ、私にも詳細は分かりかねます。──が、ここには何も居ない事は確かですね〉
やっぱり何も居ないのか。
「ボス部屋にボスが居ないって事は誰かに倒されたの?」
〈恐らくは、コボルト・ロードが何らかの理由で上に行った為に、ここがもぬけの殻になっているのでしょう〉
「じゃあ私達がもう倒してしまったのでここにはボスが出てこないということですか?」
「そういう事じゃないの?」
「とりあえず辺りを調べてみよう」
「「「了解」」」
〈キュルー〉
私達はそれぞれに別れてボス部屋の探索を始める。
ぶっちゃけ何も居ないならそれでも良いけど、じゃあ何でコボルト・ロードは上にまで来たのかって事が引っ掛かるんだよね?
〈私もそこが気掛かりです〉
だよね。でも見た感じやっぱり何も無いな。
皆もそれぞれ探して入るが何も成果は上がらない。
やっぱり気のせい? でも何かありそうな気がするんだけどな?
〈それもゲーマーの勘ですか〉
イエス。あっ、そうだ。
私は何も見付ける事が出来なかったので何となく【魔眼】のスキルを使ってみる。
たま~に、こんな特殊スキルじゃないと見付けられない物が前半のダンジョンに在るんだよね。覚えたら戻って伝説の武器ゲットとか。
と、そんな事を考えながらスキルを使ってみると──。
うわっ、ビンゴかも?
私の眼には一見普通の岩壁に見える部分から魔力が漏れ出ているのが確かに見える。
コボルト・ロードが逃げ出したのはこれのせい?
〈分かりませんが他に原因もありそうにありませんし恐らくはそうかと〉
「何か見付けたのハクア」
私とヘルさんが話をしていると皆が集まって来たので、私はスキルを使ってみたら壁から魔力が漏れ出ていた事を皆に話した。
「どうしますかご主人様?」
「調べよう」
「だね」
私とエレオノが二人で魔力が漏れ出ている壁を触ると、何となく他と違う感じがした。
「ここなら壊せそうじゃない?」
エレオノの言葉に頷き私は全力の疫崩拳を放ち壁を破壊する。
……ちょっと手が痛い。
「中……暗いね?」
「皆は待ってて」
「私も行く」
「二人共気をつけて下さいね」
アリシアの言葉に返事を返しエレオノと二人で崩した壁の中に入って行く。
暗いけど、少し眼が慣れてきたかも?
「ハクアあれ何だろう?」
エレオノが指差したのは何かの石像のような物だった。
何これ?
私はそれが異様に気になり辺りを調べてみるとトンッ! と、何かに手が触れた感触がして、直後にガチャン! と、割れた音がした。
「……ハクア?」
「……ごめんなさい」
素直に謝るのも時には大事。
ゴゴゴゴゴ!
「うわっ! 何?」
「エレオノ前!」
「えっ?」
地響きの様な音がしたと思ったら目の前の像がいきなり崩れ始め私達は退避する。
「大丈夫ですか二人共!」
「何とか」
「同じく」
音が止み、もう一度確かめに入ろうとした時──。
「感謝するぞ小娘ども! 千年この時を待っていた!」
そんな言葉と共にローブを頭から足元まで垂らした人物が立っていた。
「……う、そ」
「そんなっ!」
「……あ……はは……これはダメかな?」
私達の目の前には、図書館の挿し絵で見た通りの格好をした、不死の王と呼ばれる魔王の一人が立っていた。
これもみんなスキルのせい!
『シルフィン:みんなスキルのせいにしないで貰えますか!?』




