うっさいよオーディエンス!?
更に読んで貰えるようにタイトルとあらすじを変えてみました。センスないから内容よりも頑張った……。
「クッ」
情け容赦ない怒涛の攻めが私を刺し穿つ為に雨のように降る。
それをなんとか回避しながら攻撃を差し込むが、そのどれもが簡単に防がれてしまう。
こんなんどうしろと?
咲葉の反射神経を凌駕するには後1歩半踏み込みが足らない。
だがその半歩を踏み込むと私も危ない───というか普通にハクアさんの串刺しが出来てしまうので中々踏み込み辛いというのが現状だ。
……ままならぬ。
とはいえこのままの状態を続けても咲葉は満足もしなければ、許してもくれないだろう。
そして遠くない未来に私の方が先に折れるのは想像に難くない。
であれば道は一つ。
危なくても行くしかないよねぇ〜。
「フッ!」
「ようやく来たわね」
鋭く息を吐き、僅かな隙間を狙い済まして更に半歩踏み込む。
ここはもう死地の断崖。
飛ぶか踏みとどまるかの境界で踊り続けるしかない。
それを理解した咲葉も壮絶な笑みを浮かべ私の踊りに付き合う。
先程までの多少なりとも余裕のある回避とは違う。
一瞬でも判断に狂えばその先は崖しかないギリギリのライン際だ。
「ッ!?」
完全に避けられるような間合いではない為、私の体には無数の浅い傷が出来ては高速で再生していく。
だが一度流れた血は傷が塞がっても跡が残る。
傍から見ればだいぶ酷い様相だろう。
その証拠に私の姿を見るオーディエンスのリアクションが中々に酷い。
それでもこの場所に踏み込んだら最後まで踊り続けるしかないのだ。
最低限の回避で致命の攻撃だけを避けながら、必要最小限の動作で肌を裂かれながらひたすらに隙を探して攻撃を差し込む。
それだけの代償を払って、やっとの事で咲葉にも同じように浅い傷を負わせる事が出来る。
これも通常の攻撃に追撃効果が合わさってようやく同程度と言ったところ、下手をすればそれでもまだ負けているくらいだ。
しかしそんな一進一退のギリギリの攻防も唐突に終わりを告げる。
私が不用意に踏み込んだ数ミリの位置、それを悟った咲葉が更に踏み込んだ事で、私の予測はずれ一瞬の間に刀を弾き飛ばされ、首元に槍の穂先を突き付けられた。
「参っ───ッ!?」
参った。
そう言おうとした直後に穂先が僅かに動き、私の喉を軽く突く。
それは行動で示されたこれ以上先を言えば本気で殺すと言うサインだ。
「え〜と」
「まさかとは思うけど参ったなんて言う気じゃないでしょうね?」
ニコリと笑うが目が笑っていない。
完全にスイッチが入っているので不用意な言葉を発するだけで殺られる。
私、経験則でわかるんだ。
だって地球に居た頃は、それで崖下に突き落とされそうになった事あるもん!
だからこの状態の咲葉に逆らったらいけないと、私の本能と理性と魂の三セットが肩組んで訴えかける。
「実際刀弾き飛ばされて、穂先も突き付けられてるんですが?」
これでどうしろと?
「ええ、そうね。だからウォーミングアップはここまででそろそろ本気を出しなさいと言っているのだけど?」
いやいや、今までもかなり本気で戦ってましたが!?
それで納得いかないからってこれは酷いと思うの。
「まだスキルも魔法もほとんど使ってないでしょ。それで本気と言われても納得しないわよ」
いやまあ、確かにそうですが。
本日は新しく手に入れたスキルと、権能の検証をしながら戦ってたから、確かにスキルも魔法もいつもに比べたらほとんど使ってない。
そうは言っても一応建前的には模擬戦なわけでして。
「納得いってないみたいだけど、この程度で炊飯器を素直に渡して貰えると思ってるの?」
「なぬ!?」
それは困る。
だって今の私のモチベーションは、これが終わったら炊飯器を貰ってご飯を炊く事なのだから。
解析が完了する前に取り上げられたから自作は出来ないし、肝心の部分に踏み込めなかったから似た物は作れてもきっと上手くいかない。
時間をかけて研究すれば取っ掛りは出来たからその内作れるはするが、私は今日! この後に! 炊飯器でご飯を炊いて食べたいのだ。
「……わかった。全力で行くぞ!」
「そう来なくちゃ」
大きく後ろに飛び退る咲葉。
槍を構え直し、殺気を込める。
私も力を解放し、鬼の力を呼び出して【鬼神・酒呑童子】へと変化する。
お互いに高まる殺気に空気がピリピリと震える。
「……なあ、なんでこのテンションでかけてるのが炊飯器なんだ?」
「それはまあ、ハーちゃんと咲葉さんですから」
「あの二人に真面目なシリアスを求めるだけ無駄なのは、分かりきった事じゃないですか」
うっさいよオーディエンス!?
外野の声が多少気になるがそれはそれ。
今最も重要なのは咲葉に認められ炊飯器をゲットする事なのだ。
「フッ!」
「ハッ!」
互いに一足飛びで間合いに侵入した私達の紅いオーラを纏う拳と、咲葉の神力が宿った穂先がぶつかり合う。
今までの私なら咲葉の槍など拳で受ける事は出来なかっただろうが、先程の授業の効果で強力になった新たな鬼海のお陰で打ち合う事が出来ている。
数合拳と槍が打ち合い互いに吹き飛ばされる中、私は各種属性の火、風、水、雷、土、氷の魔法を放つ。
雷の一撃は最速の速さで咲葉に届くが、神力がこもった槍で簡単に打ち消され、続く風の槍は前に出る動作と同時に避けられる。
その後を追う火と水を空中で衝突させると、水蒸気を発生させ視界を奪い、氷魔法を自ら砕き雹の雨を降らす。
しかしそれも槍を回転させ防ぎ、次の巨岩も槍の一突きで穿ち壊された。
「ガアッ!」
だが、水蒸気を発生させると同時に岩陰に隠れて接近した私は、岩が壊されると同時にその破片に紛れ咲葉に渾身の一撃を見舞う。
「クッ! ハハハ! 良いわよ白亜!」
【ヘルorヘブン】も乗った一撃は、武技こそ使っていないがそれに匹敵する破壊力を叩き出す。
しかし咲葉は、その一撃さえも受け切り、私の攻撃を弾くと同時にお返しとばかりに強烈な一撃を叩き込んで来た。
「チッ!」
咄嗟に【神魔の両腕】でガードすると同時に、その勢いを利用して離脱しながら、今度はクッションとして使い衝撃を殺す。
「へぇ。ガードにも使えるなんて随分と便利ね。それに思った以上に硬いから少し驚いたわ」
「ハッ、そりゃどうも」
これは私も誤算だったが、どうやら【神魔の両腕】の耐久性は込めた力だけでなく、それを出力する形態によっても少し変わるようだ。
鬼の力が強く出る酒呑童子ではどうやら強度が上がるみたいだな。
鬼神モードの弱点である防御力の助けになるのは嬉しい誤算である。
「まだまだ行くぜ!」
「なっ!?」
自身の動きに合わせて地面を蹴ると同時に【神魔の両腕】で大地を殴り付け更に加速、そこに【超神速】のスキルも発動させた、今の私の最高速度を叩き出す。
想定を大きく上回る速度に一瞬、面食らう咲葉だがそれも一瞬で収まり、次の瞬間には私の攻撃を見事に受け切った。
「面白い! なら私も【超神速】」
「なぬ!?」
もちろんスキルとして存在するなら、使えるのは私だけではないと思っていたが咲葉も使えるとは……。
先程驚かせた咲葉に今度はこっちが驚かされる。
だがそれでも戦闘は止まらない───いや、今まで以上に加速した高速の戦闘に移行した。
読んで頂きありがとうございます。
全力で殴り合って、欲しい物は炊飯器。
いつも通り平常運転のハクアさんです。
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