う〜ん。神基準
「さて、それではレベルアップとは何か? お嬢様は分かりますか?」
「えっと……ハーちゃん曰く相手の魂を取り込む行為……ですよね? それによって自身の魂をより強固にして一定量取り込むと、魂と共にそれに見合う器に変質させる。でしたっけ?」
「ええ、その通りです。極めて正確に捉えてますね」
「エッ!? レベルアップってそんな感じなの!?」
「ハーちゃん曰くそうらしいですよ。と言うか、アイギスちゃん聞いてなかったんですか?」
「初耳なんですけど……なにそれ怖い。ゲームや漫画で普通に見てたから受け入れちゃってたけど、そんな魂とか身体の変質とかって感じなの?」
「むしろなんもなくて体が勝手に人外レベルに強くなる方が怖くね?」
「まあ、それは確かに……」
説明を聞いたアイギスや結衣ちゃんは結構ショックを受けているようだが、その辺の意識の感覚も地球でそれらを受け入れ易い土壌を作られていたからだろう。
異世界に来た時に違和感を抱かないように調整されてるとは言わんとこ。
澪や瑠璃には話したけど普通の感性の人間には耐えられんだろう。
「ちなみにこの世界ではレベルアップが適用されてるが、ほかの世界などでは純粋に自分の力を磨く事で魂を練磨する所もある」
「へぇ〜、心がそう言うって事は世界によって結構違うん?」
「違うよぉ〜。その辺は世界の難易度とかにより変わる。ここでは魔物を始め魔王に邪神、神の存在も近いから、魂の練磨に即した世界としてレベルアップが適用されてるんだ」
心やソウの言葉通りだとすれば、難易度が低い世界だとここまでわかり易い方法で強くはなれないのか───いや、むしろ魔物が強いから魂を変革させる力も強いのかもしれん。
で、その難易度は死にやすさではなくて、世界そのものの強さによって変わると。
世界によってはそれこそラノベや漫画、アニメのように多種多様にスキルだけが価値のある世界、職業だけが価値のある世界。
そもそもなんの力もない状態で生き抜かなければいけない世界も沢山あるのだろう。
う〜ん。神基準。
「まあ、個人の主観で言えば明確な強くなる方法があるだけマシな部類と言えなくもないと思うのだけどね」
「それな」
咲葉の言う通り、クソ難易度でも明確な手段のある世界は個人的に当たりの部類と言えなくもない。
クソ難易度だけど!
「ちなみに言うと白亜さんは知っていますが、個人の魂をシステムに組み込む事で、霊力を別の形に加工した物が皆さんがステータスと呼ぶ物の正体ですね」
「おい、サラッとすごい事言ったぞこのメイド」
「流石テアさんですね。情報が解禁されたら垂れ流すのに容赦ないです」
「と言うかお前は知ってたのな?」
「いや、知っていたと言うか予想と推測なのですが……まあ、前に話して正解は貰ったけど」
「世間的にはそれを知っていると言うんだ馬鹿者」
「バカって言うない!?」
「では次はそれを踏まえて本命のこれです」
そう言ってテアはホワイトボードに新たに魔力と気力と書く。
「次は澪さん。この二つの説明は出来ますか?」
「魔力は魔臓器官と呼ばれる特殊な臓器から生まれる精神力の一種。この世界の生物には元々備わり、私達はこちらの世界に来ると同時に付与される」
「そうなんですか!?」
「ああ、って知らなかったのか結衣? まあいい続けるぞ。そして気力とは人の生命力を元にした力」
「ええ、その通りで───」
「と、言われているが実態は当たらずとも遠からずと言った所だ。この二つは別物で反発する性質を持つとも言われているが、その実この二つは元々が同じもの───魂の力が漏れ出たモノ……だろ?」
おお、流石。魂の修行を始めてるからもうそこまでわかってるのか。
「みーちゃん。私初耳なんですけど?」
「確証があったという程ではないがテア達の反応からすると当たっていたようだな。お前も同じ意見なんだろ?」
「まあね。魂から漏れ出た───もしくは元々魂の力を普通に使う為に生み出された方法なのかは知らないけど、そんな感じのものだと思うよ」
「ええ、お二人の言う通りです」
元々、生物が持つ力は魂の力のみ。
だがその力を使う為には一種の悟りのような物が必要であり、軽々に使える物ではなかった。
そこで考え出されたのが気力と魔力という概念だ。
魂という物を扱えない未熟な生物は常に力が少し漏れ出ている。
それらに精神力と生命力をそれぞれブレンドし、扱い易くした物が気力と魔力と言う訳だ。
「つまりは漏れ出る魂の力の一部を使って生命力を活性化させた物が気力。精神力という概念に近い扱いにくい物を、効率よく魂の力と活性化させる器官が魔臓器官で魔力って事か」
「そうなるわね。強いて言うなら魔臓器官は神の意図したものではなく、貴方達生物が進化の過程で自らに生み出した物って事ね」
なるほど、そこまでデザインされていた訳ではないのか。
「ああ、だから獣人はそうなのか」
「そうだな。獣人は進化の過程で精神力よりも生命力を活性化させる進化を選んだ。同じように魔法を得意とする種族は魔臓器官を体内に生み出す進化を果たした訳だ」
「そうなると、魔臓器官がないのは先祖返りに近い感じになるのか」
「ああ、なるほどそんな考え方もあるのかぁ。私達としては別種の適応体って感じだと思ってたけど、確かにそんな風に捉える事もできるね」
「確かにな。ハクアの言う通りだとすれば」
(な……なんかすっごい頭の良い会話でついて行けないんだけど私だけ?)
(エレオノ。シッですよ。私も全部ついて行ける訳ではないですがご主人様達は大事な話の最中なんですから)
(エレオノ大丈夫だよ。私もついていけてないから)
なにやらミコト達まで含めてボソボソと話してるけど確かに脱線し過ぎてるか。
テアを見ると同じように考えたのか咳払いをして場の空気を戻す。
「話が逸れましたね。澪さんの仰る通り、魔力も気力も源流となる力は魂の力によるものです。そしてそこに自然のエネルギーを組み込んだ物がマナと仙力となります」
今思えば自然の力を感じる事は霊力の感知にも近しい。
これを踏まえれば段々と段階を踏んで魂の力を扱えるようにしているのだとわかる。
「それは聞いていたが質問だ。どうして自然のエネルギーを組み込む事で威力や出力そのものが上がるんだ? それに気力や魔力が魂由来の力なら、変な物を混ぜない方がいいんじゃないのか?」
「いや、多分それ前提が違うんだと思うよ?」
「「前提?」」
「白亜さんの言う通りです。まず一つ目の質問ですが、気力や魔力は魂に個人の力を混ぜる事で扱い易くしながら、同時に力の扱いに慣れる行為と話しましたね」
「ああ」
「皆さんも既に経験済みですが、そこに自然のエネルギーを混ぜる事で魂の漏れ出た力ではなく、その根源にアクセスする為のゲートを作り、自身の力で魂の力を取り出す必要があるんですよ」
「まあ、要は大元の力を引っ張り出すための出力を得る為に自然のエネルギーが必要だって事だよね?」
「その通りです。自然の力は生物が持つ力に比べて膨大です。その力を混ぜる事で大元の出力を上げるのが目的ですね」
「同じように魂の力である霊力を扱うには【第六感】や【魔気感知】【霊圧】のスキルが本来必要となるわ。そしてそれらを取得する為にも自然界の力の流れを意識しながら、同時に扱う術も学ばなければいけないの」
私は色々とすっ飛ばしたけど本来はそうなんだよなぁ。
「なるほどそう言う事か」
「ええ、本来これらのものを学ぶ事で、長い時間をかけて霊力を操るようになります。間違っても一足飛びで覚えるようなものではないんですよ」
その瞬間、私に視線が集中したような気がするのはきっと気の所為に違いない。
違いないからこっち見んな。
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