泣く事すら許されなかった。悲しひ……
「では始めましょうか」
「結局このままかい!?」
あの後、封縛魂というなにやら魂を縛る術を受けた私は結局そのままの形で放置されている。
やられたうえに放置とか完全にやられ損だと思うの。
ちなみにこの封縛魂というのは魂に負荷を掛け続け、魂の強度を高めるのだとかなんとか?
正直、体が重だるい気がするけど思ったよりも平気だったりもする。
「いえ、普通はそんな程度では済まないはずなんですけどね」
うん。何も聞こえないんだよ〜。
「普通はどうなるんだ?」
「ちょっと気になりますね」
「そうですね良い機会なので実践してみましょうか。それではここに何の変哲もないゴブリンを用意します」
「どっから出したのそれ!?」
やだ怖い。普通に後ろに回した手が前に出てきたら掴んで出てきたよ!?
しかもご丁寧に麻痺らせて騒がないようにしてあるし。
「メイドなら当然です」
「だからお前のメイド観絶対間違えてんだよなぁ」
「ツッコんでもどうにもならないからやめとけ」
「アレだけは変わらないですよハーちゃん」
おかしい事をおかしいと言える人間で在りたい今日この頃。
「さて、理解していただいた所で」
「一ミリも理解はしてないけどね?」
「理解していただいた所で【封縛魂】と」
やろう。メイドなのに世話してる人間の言葉無視しやがった。
……それは何時もの事か。
テアによって封縛魂を受けたゴブリンは動かなくなり、そのままテアの作った結界に閉じ込められた。
閉じ込められてすぐは動かなかったが、少しすると苦しみのたうち回る。
そして───バチュンと弾けて結界の中が赤く染め上げられた。
「二十秒程ですか」
それだけ呟くとテアが結界を縮小していき、極小レベルになった結界はそのまま空中で跡形もなくなり消え去った。
「さて、授業を始めましょうか」
「行かせるかぁ〜!! 何涼しい顔してしれっと進めようとしてますのん!?」
「なかなかエグかったな」
「そうですね。あそこまでだとは思いませんでしたよ」
「えっ、ていうか今ハクアってあの状態なんだよね? なんでこんなに元気にうごうごしてるの?」
「ミコトさん。うごうご言うのやめて」
その表現はハクアさんも少し嫌なの。
「ごめんごめん。それよりも今はこっちだよ。なんでハクアは無事なんですか?」
「白亜さんなら大丈夫だから。という確信があったのですがまさかここまで順応するとは思わなかったというところですね」
「普通なら龍族でも体を動かすのでいっぱいいっぱいになるものだからね。神の領域に片足突っ込んだとは言え、普通ハクちゃんレベルでは動けなくなるはずなんだけど……まあ、やっぱり予想は超えてくるよね」
流石ハクちゃんとか言いながら呆れるのやめてくれる? ほらまたこいつはみたいな目で皆見てるじゃん。
「なんだ。分かりやすく強く掛けたとかではないのか」
「むしろ出来る限り弱く掛けていたわね。それでもあの結果だけど……ハクアにはその二十倍程度の負荷って所かしら」
「咲葉様? 二十倍ておかしくない? また何時ものPONで間違えただけだよね?」
「何時ものPONとか失礼ね。本当よ」
くそう。お前PON属性の癖にそういう時だけPONしないのかよぉ!
「落ち着けハクア。私達全員で話し合ってそのくらいなら大丈夫と判断したから、テアの独断ではない……一応」
「一応てなんですの心さん!?」
「いや……その。一応話し合いでは最大でそのくらいで、様子を見つつ負荷を上げようかと言う話に収まった筈なんだが……」
そう言いつつチラリとテアを見る。
「白亜さんなら大丈夫だと確信したので」、とテアは良い笑顔でサムズアップしながら言い放ちやがった。
文句を言いたい、言いたいけど私は知ってるんだ。
ここで下手なツッコミを入れたらもっと大変になるって、だからここは我慢の子なんだよぉ〜。
私は学習出来る子なのだ。
「テアの独断とは言え、この強度でこの程度の影響と考えるとまだまだ行けそうね。どこまで行けるか試してみましょうか?」
「ええ、そうですね。私も丁度同じ事を考えていましたよ咲葉」
「アレ〜!? ツッコミ入れなくても向こうから突っ込んで来たんだが? なにこれバグ?」
「一番のバグキャラが何言ってんだ?」
「貴様喧嘩売ってんのか!? 買ってやるからこのまま私を連れて行ってください!」
「シームレスに去ろうとするなよ」
チッ、気が付かれたか。
最後の最後に本心が出てしまった。無念。
「と、言う訳で私からもっと」
「みぎゃ〜!? ノータイムで来るのはやめて欲しいんでけどぉ〜!?」
その後、咲葉どころか心にソウの2人にまで封縛魂を掛けられ動く事すらままならなくなった。
「……動けぬの」
「いや、やっといてなんだがなんでその程度で済んでるんだ白亜は」
「本当に凄いですよね。私でも四重に掛けられたら死にそうになりますよ。心さんもですよね?」
「ああ、私も同じだな。これで耐えられるのはテアや咲葉くらいだろう。元々人間の私と聡子では二重……良くて三重が限界だな」
「……すいません。ここで転がってるのも元人間、元ミニゴブリンのか弱い子なんですが」
「白亜さんは別枠なので大丈夫です」
「せめて人間のカテゴリーの中には含んで欲しいです……」
「そうは言っても普通の人間ならさっきのゴブリンと同じ結果になるわよ」
そもそもそんなのを人にかけるのが間違いだという事に最初に気が付こうよ。
「では白亜さんも大人しくなったので授業を始めます」
「「「は〜い」」」
「順応早いね皆さん!」
誰もこっちの心配しないとかなんなん? さっきゴブリンさんが汚い花火になったの見てたよね!?
「全てはお前だからの一言で済むからな」
「「「うん」」」
なんで皆そんなので納得するのさ!?
「しくしくしくしく……」
「白亜さんうるさいですよ」
「はい。静かにしてます」
泣く事すら許されなかった。悲しひ……。
「さて、まずはおさらいとこの世界の常識から壊して行きましょう」
「初手からやばいないようぶち込み過ぎだろ」
「いえ、皆さんはすでに白亜さんという実例をもって知っているので大丈夫です」
「それは聞いちゃって大丈夫なんですかテアさん?」
「ええ、皆さんもその領域に立っています。それに及ばない方も居ますがこの知識に関する制限は取れていますので」
ふむ。つまりは知識としてなら知る許可はおりているって事か。
納得した全員の顔を見渡したテアは口を開く。
「では初歩の初歩から行きます。今から皆さんに話すのはこの世界について───いえ、全ての世界についてですね」
「全ての?」
「ええ、最初に言っておくとほぼ全ての世界はある一つの目的をもって設計されています。白亜さんは分かりますよね?」
テアの台詞に私へと視線が集まる。
ああ、これ……前にちょっと考えたやつか。
「魂の練磨、その果ての神へと至る者を作る事?」
「その通りです。まあ、正確に言えば魂を練磨する事で世界を存続させるのが目的ですね。その過程で神に至る者も生まれればラッキーと言った所でしょうか」
「神の扱い軽くね?」
私の言葉に全員が頷いた。
まあこいつ、神よりもメイド至上主義だからしょうがないか。
「それで納得出来るのお前だけだよ」
解せぬ。




