そう……またかお前という視線がな!
「皆さんまだ遊んでいたんですか?」
「この状況を見て開口一番その反応はどうかと思うんですが!?」
やって来たテアが今の状況を見るなりそんな事を言ってくるのでそう返す。
人一人が木に吊るされて囲まれている状態を遊んでいると定義するのはどうかと思うんよ!?
「もう準備出来たのか?」
「ええ、出来ましたよ」
だが、私のツッコミなど何処吹く風で呆気なくスルーされてしまった。
なんでこの人達私の声は届かないのだろうか?
「いえ、届いた上で無視してるだけですが?」
「なお酷いわ!?」
そして毎度毎度人の頭の中を読むなと言っているだろうに。
ぶら下がって逆さまの視界の中にはテアと一緒にシーナ達ドラゴン組も来ていたが、様子から察するにまだ何をするのかはわかっていないようだ。
そして遅れるようにエレオノ達も合流し、一気に大所帯になったが誰も私の事を下ろそうとしないのは何故だろう?
これだけ人が居るんだから一人くらい私の事を助けようとしてくれても良いんだよ?
「で、今日は何をするんだ? いつもは別れて修行をしてる全員を集めてるが」
私の事などお構い無しに澪が集まったメンツを見ながらテアに問う。
えっ、このまま話進む感じですの?
「今日の修行はコレです」
テアがそう言って指を鳴らすとその瞬間、ミコト達が力を解放したのがわかった。
はて? だからなんだろう?
ああ、もしかしてせっかく龍族が居るから本気で皆と模擬戦するとかって流れか?
などと考えていた私の視界に何故か苦しそうに膝を突く皆の姿が映る。
「何事!?」
「お前……は、当然何も感じてないよな」
「ああ……流石ハーちゃんですね」
「貴様らなんだその目は」
やめてくれるそんな諦めた感じの目で見るの。
「で、どういう事なん?」
見ていてもなんにもならないので、その中で平気そうに立っているテア達に視線を向けて訳を聞く。
「本日の修行内容は高濃度の魔力───言い換えれば龍族の力を浴びてそれに慣れる為の訓練です」
「高濃度の魔力はそれだけで魂に過負荷を掛ける代物だ。これに身体を慣れさせる事で高負荷の魔力放出にも耐えられる身体を作れるようになる」
テアの説明を引き継ぎ心が膝を折る全員に聞かせるように言う。
「龍族の力ともなればその負荷は最高峰に近いのよ。それに慣ればかなりの出力を出せるようになるわ」
「なるほど」
締めくくるように話す咲葉の言葉に頷く。
と言うことは私は知らない間にその負荷を受けてて今は大丈夫という事か?
でもなんで里で一緒に居たユエまで苦しそうにしてるのだろうか? 君も私と一緒に慣らされていたのでは?
「いやいや、ハクアの場合は別っすよ」
「そうなの。里では力を抑えるなんてまどろっこしい事してなかったの」
シーナとムニの言葉になにか風向きがおかしくなる。
「わたし達もここに来る時にテア様から言われて初めて気が付いたけど、龍族の力は抑えなきゃいけないって聞いた事があったんだよね。ハクアが気にしてなかったからすっかり忘れてたけど」
ミコトの言葉に膝を折る全員の視線が私に突き刺さる。
そう……またかお前という視線がな!
「いやいや、里でそんな事してなかったって言うならユエも大丈夫そうだったからね? なんか今は同じように苦しんでるけども」
「ええ、里では私達が交代でユエは守っていましたから」
衝撃の事実がここに───。
つまりは私だけが龍の力に晒されたままずっと過ごしていたと?
「ええ、ある程度予想はしていましたが、白亜さんは龍族の力にも全くと言っていいほど反応がありませんでしたからね。それなら丁度良いので利用させて貰いました」
「一言断ってくれても良いんだけど!?」
「そうしたらきっとなにかと言い訳を言うでしょう?」
「そんな事はない」
「……顔逸らさず言えよ」
いや、だってなんか納得いかないからとりあえずごねるじゃん?
「むしろだから秘密にされるんだと思いますよハーちゃん」
「くっ」
何も言えねぇ。
「でも本当に白亜さんは何も感じてないの? こんなに息苦しいのに」
「あ〜……うん。なんにも」
「1回同調しようとしたけど、結局バレるからやめたな」
「そうですね。全くわからないからしょうがないんでしょうけど」
「やめて!? 人の心の機微を正確に推し計らないで!?」
ただツッコめよ! 1回やめたとかは言わなくてもいいんだよ!
「ミコトを含めたドラゴン組は同じく私達がこうしましょう」
次の瞬間、テア、心、ソウ、咲葉の四人から同じようにプレッシャーが吹き出した。
どうやら神力を解放し、その力をミコト達にだけぶち当てているようだ。
やり方は威圧に少し似てる感じだ。
限定的に五行山と同じ環境を作っているのだろう。
まあ、そうは言ってもミコト達が感じてるのはあそこよりも更に強い神の力だけど。
「そうですね。同じようなものです」
ついでに言うと私にもプレッシャーを向けているがやはり何も感じない。
なんかちょっと寂しい。
しかもこれのいやらしい所は、神力に対抗しようとミコト達が力を高めると、今度はその力に反応して澪達の方が辛くなるというシステムになっている。
そうする事でテア達の方で修行の出力を調整しているのだろう。
まあ、今回は私は楽出来るっぽいので皆は存分に苦しむと良いんだよ。たまには私の苦労を知ると良いんだよ。
「安心してください。白亜さんには後で別の事をするので大丈夫です」
「……りありー?」
「YES」
「お前、この後に及んで自分が楽出来るとか思ってたのか?」
「ハーちゃん。それは流石に考えが甘いですよ」
「わかってたけど夢くらい見たっていいじゃないかぁ!?」
「儚い夢だったな」
「人の夢で儚いですからね」
誰が上手いこと言えと!?
「さて、とは言え今日は初日で何も出来ないでしょうから座学と行きましょう。明日からはこの状態で動くので皆さん覚悟してくださいね」
ニヤリと嗤うテアに皆がぶるりと震えるが誰も逆らわずにコクコクと頷く。
とてもよく訓練されている。
「それでは座学を初めますよ」
「あのすいません。私ここに吊るされたままですの?」
「……さあ、始めましょうか」
「無視とか良くないよ!?」
「そうですね。では縛られていて丁度良いので───」
「あっ、ごめんこのままで良いやさっさと始めようか」
急激に嫌な予感がしたために先を促すが判断が遅かった。
「まあ、そう慌てるなよ。私もずっと吊るしたままなのはどうかと思ってたんだ」
「そうですよハーちゃん。苦しい時は皆で乗り越えましょう」
「クソ! お前ら急に復活してないで大人しく死んどけや! なんでこんな時ばっか復活してくんだよ」
「もちろん嫌がらせのためだが? お前だってそうするだろ」
「失敬な私はそんなことしないぞ」
「「ダウト」」
このド畜生共め。
「では二人ともそのまま押さえていてくださいね」
「早く頼む」
「手早くお願いします」
「は〜な〜せ〜!」
縄抜けしようとするが対私用に特殊な結び方をしてあるため、どれだけ頑張っても手足の位置がおかしくなるだけで抜け出せない。
「では封縛魂」
「ぎにゃぁぁあーーーーー!?」
テアから受けた攻撃に苦しむ中、とても満足そうに離れた二人の姿にいつか復讐を誓う私であった。
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