ハクアさんも思わずニッコリ
「……ふむ。寝足りぬ」
「四日間寝てた人間の台詞じゃねぇ」
「あっ、澪。おふぁ〜」
「欠伸しながら話すな。今ほかの連中も呼ぶから寝るなよ」
「ふぁ〜い……」
「布団に潜り込むな」
「みぎゃあああ!?」
▼▼▼▼▼▼▼
「……えっと、おはようございますハーちゃん。目が覚めて良かったです」
「あの……この状況で話し続けますの? だって私絶賛氷漬けですのよ?」
ぱっぱと二度寝しようとした結果、私は澪により全身を凍らされていたりする。
寒ひ……。
「自業自得だ。それより体は平気なのか?」
「震えが止まらない程度には健康です」
「……なんの問題もないな」
「いや、あるでしょう。流石に溶かしてあげなさいよ」
「流石千早、いい事言う」
だから早めに出してくれると嬉しいです。
「全く」
ため息を吐きながら澪が指を鳴らすと、私を捕まえていた氷がその場で砕け散った。
……少し見ない間に制御能力が更に上がっとる。
くっ、人が居ない所でパワーアップしてるなんてなんて奴だ。
「所で白亜さん」
「どしたん千早?」
「えっと……聞いた時はそんな事ある? って、思って聞いてたんだけど」
「うん?」
「本当にそんな風になるのね……」
「そんな風?」
なんの事だ?
「だから言っただろう。この不可思議生物に常識求めるだけ無駄だって」
「私は良いと思いますけどね。むしろこのまま……えへ
♪」
今なんかゾワッとした気がするけど気の所為だよね?
いや、それよりもこいつらは何を言っとるんだ?
おかしな所がないか自分の姿を見ようと思ったが鏡がないので、まずは自分の手をチェックする。
うん。小さいけど普通……小さい?
「いや、小さいやんけ!?」
「……お前、今の今まで気が付いてなかったのか?」
「起きてすぐに氷漬けにされたので違和感感じる余裕もありませんでしたが!?」
「自業自得だな」
「それはそう!」
いや、わたしも寝れるとは思ってなかったけど、思ったよりもキツめのが来たんだからしょうがないじゃないか。
「しかしあれだな。連れ去られた事自体はまあ、いつも通りの展開と言えば展開だが、幼女化に加えてケモ耳ガチャまで内包してくるのは予想外だったぞ」
「ハッ!? うわ、こっちもだった」
澪の言葉に頭を触って確かめると確かにある。
「今日はなんなのさ」
「短くて小さい耳とシッポ……なんだろうな?」
「恐らくはプレイリードックかと」
「げっ歯類やんけ!? せめてもうちょっとメジャーでわかりやすいのだけにしてくれませんかねぇ!?」
いきなり現れたテアに衝撃の事実を伝えられ叫ぶ。
同じげっ歯類ならネズミの方がまだわかりやすい。
いや、それだと千葉のネズミに喧嘩を売る感じになって危ないのか? ある意味邪神よりも勝ち目がない戦いになりそうなのでやっぱりいいや。
「テアからは目覚める直前に耳が生えてくると言われていたが、まさか本当にそうだとは思わなかったぞ」
「……そんなんなの!?」
私も知らない私の事実がここに!?
「何はともあれ起きたんだから良いじゃないですか」
「「お前は早く鼻血拭け」」
「あっ、すいません。つい」
私が動き出した辺りでとてもいい顔でダラダラと流し始めて少し怖かったが、澪と私のツッコミを聞いてようやく吹き取った。
「んんっ! しかしどういう原理でそんな風になったんですかハーちゃん」
しっかりなかったていで話を進めやがった!?
「体力の消費を抑える為に小型化して、体力の回復を早める為に獣化しとるらしい。色んなものの治りが当社比2.75倍ほど?」
「相変わらず微妙な数値をたたき出すな。まあ、凄いのは凄いが」
「3倍弱と考えると確かに凄いわよね。一ヶ月掛かる怪我がたった十日とちょっとで治るって計算だし」
「本当にハーちゃんは少し目を離すととんでもない感じになって来ますよね」
「私のせいではないんだが……」
そこを間違えちゃアカン。
「で、実際の所調子はどうなんだ?」
「多分、平───アデッ」
平気と言おうとしてベッドに手をかけたら、力が抜けて頭から落っこちてしまった。
「おい、大丈夫か?」
「大丈ぶぁっと!」
今度は起き上がる為にベッドを掴んだら、支えにした部分を握り潰してそのままズッコケた。
どうなってんの?
「ふむ。身体には問題がないようですが、白亜さんの身体と意識が出力を把握しきれずに、めちゃくちゃになっているようですね」
マジか。
「えっ、どうなんの?」
「恐らくは数時間もすれば徐々に慣れて行くと思いますよ。それまでは───」
「私の出番ですね」
とてもいいタイミングで部屋の中に車椅子を持って現れたのは、クラシックタイプのメイド服に身を包んだミカだった。
白と黒を基調としたメイド服に金の髪がよく映える。
カチューシャはしていないがそれでも誰がどう見てもTheメイドがここに居る。
いや、中身天使なんだが……待てよ。これが本当のメイド天使というものか!?
「何を考えてるか分かるが、馬鹿だろお前」
「だって本物のメイド天使だよ!?」
「まあ、そのワードは確かに少しワクワクしますよね」
「まあ、確かにな」
こればかりは普段否定的な二人も同意してくれた。
やはりメイド天使というパワーワードは強いようだ。
しかもクラシックメイドの格好なのに、本人のスタイルが良すぎて露出は少ないのに色気が凄いという。
「さあ、ハクア様どうぞお座り下さい」
そう言って近付いで来たミカに抱き上げられた私は、そのまま車椅子へと座らせて貰う。
凄い至れり尽くせりだし、抱き上げられた時にものすごいいい匂いと暴力的な柔らかさがががが。
見るとミカが私だけに見えるようにニコリと微笑み、シーと唇に指を当てた。
ま、まさか、計算のうちだと!?
ミカ、なんて恐ろしいメイド天使なんだ!?
「ハクア様」
「な、何?」
「起きたばかりで申し訳ないのですが、こちらを見て頂けますか?」
そう言って差し出された書類の束に手を伸ばそうとして、今の出力がばがばの状態で受け取ると破いてしまうのではと少し躊躇する。
「白亜さん。出力は時間が経たなければどうにもなりませんが、自身を操ってみては? 身体全ては難しいでしょうが、上半身に集中すれば大丈夫だと思いますよ」
「あっ、そっか」
テアに言われて目を閉じる。
自分の身体を中から動かせないなら、自分で外から身体を動かせばいい。
幸いおばあちゃんとの修行で五感を失った時に感覚は掴んでいる。
そのおかげで少し時間は掛かったが無事上半身だけはすぐに動かせるようになった。
「無駄に器用な奴め」
「はぁ〜、相変わらず器用ですねハーちゃん」
「えっ? 何したの?」
「本当に凄いですねハクア様は、それは魔力で身体を動かしているのですか?」
「うん。そうだよ。さてさて、これは……ふむふむ。ミカ?」
「は、はい!」
「大好き!」
「ヒャワッ!? ハ、ハクア様!? そ、そんないきなり……う、嬉しいです」
書類を見て感極まった私は正面に居たミカに思い切り抱き着き、素直に感情を表すと、ミカは今までの余裕はどこへ行ったのか、真っ赤になってしまった。
「いきなりどうした?」
「……ハーちゃん?」
「瑠璃さん顔怖い。それよりコレ見てよコレ!?」
「なんですか? って、なるほど」
「ほう。最近色々聞かれたがこういう事か」
書類を見た二人は私の行動に合点がいったようだ。
そこに書かれているのは土魔法建設の作業日程や給与の詳細、更に孤児院や出資している店の収支、更にはこの間話に出た聖女見習い達を住まわせるマンションの設計も詳細に描かれていたのだ。
その内やらねばと思っていたがずっと放置していた報告書のあれこれが、私が作るよりも遥かに詳しく出来上がっている。
これにはハクアさんも思わずニッコリで素直に感情を出すのも納得である。
良かったミカを雇って本当に良かった。
幼女化やらケモ耳やらそんな事は一気に吹き飛んだ私だった。
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