あっ、起きたくなくなってきたかも……
「うっ……ここはっ───」
「おっきろー!」
「ぐわっぱい!?」
目を覚ましてすぐに見えたのは、見事な跳躍で私の腹に目掛けてフライングエルボードロップをかまそうとする人影。
しかし時すでに遅し、気が付いた段階ではどう頑張っても回避は不可能な状態だった私は、見事にその奇襲を食らうのだった。
「はぁ、全く。起きろと言ってるのに更に寝るなんてなんて奴だ」
「おま……フライングエルボードロップをストマックに打つのは永眠案件だぞ……」
「それくらいで君が死ぬなら誰も苦労しないだろう?」
「私だって普通に死ぬ時は死ぬんだぞ!?」
「ええ〜……」
「なんでそこで懐疑的な目を向けられなきゃアカンのや!?」
本日のナニカは金髪ツインテの貧乳メスガキスタイル、しかもタンクトップにミニスカート、ニーソと完全装備のメスガキスタイル。
わかってやがる。
これはこれで需要が高そうなのがムカつく。
「だって君、邪神と戦って精神空間で何回殺されたと思ってるのさ。あんなの僕でも耐えられる気がしないし、なんで燃えながら普通に喋るのさ」
「……だって出来ちゃったんだもん」
「いや、普通出来ないから」
そんな事を言われても私だって困る。
実際あの時は、自分自身が死んだと思わなければ大丈夫とわかっていただけに、最初は多少キツかったが後半はなんにも感じなかったのだからしょうがない。
「いや、それがおかしいんだからね?」
「知らぬ。余は何も知らぬ!」
「変なキャラで誤魔化そうとしても無駄だよ。まあ、君の異常性を今ここで言ってもしょうがないからこれ以上追及はしないけど。言い始めたら止まらなくなるしね」
こいつ、本当に失礼な奴だな。
「で、私がまたここに居るって事は本体は寝てる感じ?」
「そうだね。アップデートの為の再起動中って感じかな?」
「人をパソコンみたいに例えるのやめてくれません!?」
「だってわかりやすい例えだし。実際わかりやすいでしょ?」
「ものすっごく分かりやすかったのが逆に嫌だ」
全く、なんで私の周りの奴はすぐに人を物に例えたがるかね。
「まあ、アレだね。今回は少し長いかも」
「そうなん?」
「そりゃそうさ。邪神二つの力に最上級天使の力、そんなものを一つの器に無理矢理収めるんだ。むしろなんでこの程度で済むのかが分からない……いや、本当にどうなってるの君?」
「知らんがな」
途中から奇妙な生物を見るような目で見るんじゃないんだよ。
「で、どれくらい?」
「上、上」
「上?」
上を指差すナニカに習って上を見上げると、そこには天空時計とでも言うようなカウンターがあった。
「僕の方で君の最適化が終わる予測時間を表示してみた」
ドヤッとない胸を張るナニカ。
それをやるなら次はぜひ盛った状態でやって頂きたい。
いや、ない胸を張るのもそれはそれで需要はあるんだけどな! むしろそれがいいまである。
しかし約四日かぁ。本当に長めだな。
「しょうがない。さっき言ったけどものがものだからね。これでもだいぶおかしい時間だよ? 本来数年単位で寝ても良いくらいのものなんだから」
「マジで?」
「マジで」
皆して大丈夫って言ってたけど、実は結構綱渡りだったのでは?
「いや、見立ては正しいよ。本来、暴喰を受け入れられた段階でおかしいんだから。それに実際こんな数日で君は起きる予定でもあるしね」
「う〜ん。そう言われるとそうなのか?」
基準がないからよく分からん。
「それに今回の件は渡りに船だったと思うよ」
「と言うと?」
「君は先の戦いで怠惰の力も吸収し、己のモノにした。そのせいで君の中のバランスが著しく乱れていたんだよ」
「そんなん知らないんですけど!?」
「そりゃそうだ。中からは僕が抑えていたし、外からはあの元女神達が働き掛けていたからね」
なんと!? そんな事をしていたのか!?
「龍の里に入った時から知らず知らず怠惰の力に少なからず影響を受けていたんだよ。だからここ最近彼女達のスキンシップがいつもより多かった覚えはないかい?」
……そう言えばそんな気もする。
「だとすると、やっぱり止めた方が良かったんじゃね? だってルシェとミカの天使の力があっとしても、それは邪神よりは弱いだろ? それに邪神も天使も二人分なら、結局は邪神側の力が強くなるんじゃね?」
「そこがミソなんだけど、邪神の力って言っても魔の力だけって訳じゃないんだよね。腐っても彼奴らも神な訳だし」
そりゃそうだ。
「だから言ってしまえば邪神の力の内訳は魔が6、聖が4って感じなんだよ」
「意外。もっと魔が多いと思った」
「体や魂を維持するのは自らの神性だからね。あまりに魔に偏り過ぎると神よりも下に墜ちるんだよ。その内の一つは君も知ってると思うよ」
「……上位精霊。セクメトの事か」
「そう。彼女も元を正せば神から生まれた神だ。しかしその属性が魔に偏り過ぎた為に神としての神性が保てなくなり、精霊へと身をやつした」
「なるほど、セクメト神がなんで精霊なんだよとかって思ったけどそういう理由か」
ここ最近出番なくて酒煽ってアリシアに怒られてるのしか見てないけど、確かにそれなら辻褄が合う。
「……神性を取り戻せば神に戻れるのか?」
「う〜ん。難しいだろうね。良くて半神、今の君と同じくらいだと思うよ」
「それくらい魔に染まってるっていう事か?」
「いや、単純に彼女は魂の核が傷付いてる。恐らくは堕ちた時の影響だろうね」
なるほど、そんなのもあるのか。
「で、話を戻すけど、最上級天使の彼女達の力の大部分を取り込んだ事で、少し足りないけどかなりバランスを取り戻せる予定なんだよ」
「予定なんだ?」
「……君は結果が出るまでどうなるか分からない所があるからね。まあ、計算上ではこの世界に来て一番安定した状態になるんじゃないかな」
「私結構長い時間ここに居る気がするんだが、今まで安定した事なかったん!?」
「そりゃね。最初は魂に対してミニゴブリンなんて不釣合いな身体。それで少しは良くなってきたと思ったら神の力を奪うし、鬼の力に龍の力、邪神まで取り込んで安定なんてしてる暇あると思う?」
改めて羅列されると私すげーな。
「いや、自分で自分に感心してないで少しは労りなよ。一応起きてる時の君は覚えてないけど僕も居るんだし」
「頑張った結果なので大目にみろ」
「まあ、確かにその通りなんだけどね。実際、どの要素が抜け落ちても今君はここに居ない訳だし、千回試して一回成功すれば良いような確率だろうしね」
千分の一の確率で生き残ってるってどうなのよ……異世界どうなってるんだってばよ。
「まあ、何はともあれ、君は起きればまた新たな邪神の力、それに天使の力を得た事で白化は天使化に変わるはずだよ」
「ほほう天使化ねぇ……って、天使化だぁ!? 聞いてないんですが!?」
「まあ、誰も言ってなかったからね。でも元女神の彼女達は多分知ってたよ。今も嬉々として君の天使バージョンの衣装を考案してる最中みたいだし」
「あっ、起きたくなくなってきたかも……」
こうして嫌な事実を突き付けられた私は、それを忘れる為に起きるまでの間、ナニカと新しい力の訓練をするのだった。
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