いや、パソコンじゃないんだから……
さて、思わず魅力的すぎる提案にOKしたのは良いが本当にこんな感じで契約を決めてしまって良いのだろうか?
いや、言ってきたのは本人だしその辺は対して気にしてる訳でもないのだが。
チラリと見たら視線が合いニコリと微笑まれた。
おぉ……なんだろう、ショップの店員を思わせる笑顔に少しビビる。
いや、あれだよ?
異世界に来て、人間やめて、モンスターと命の取り合いして、なんで今更ショップの店員系スマイルにビビってるのとか言われそうだけど、あれはあれでコミュ障には高いハードルなんだよ?
そして私は誰に言い訳しているのでしょうか?
「お気になさらないで下さいハクア様。言い出したのは私なので」
「ああ、うん。まあ、そうなんだけどね」
「まあ、私としましても是非このような採用のされ方ではなく、私自身を欲して欲しかった所ではありますが」
すまんて。
「そもそもなんで君達の好感度そんなに高いの? 幾ら私の動向チェックしててもそこまでならんやろ」
だってパラメーターで言えば、初対面で好感度MAX、フラグへし折らなきゃ自動的にこのコースに入ります状態よ?
流石に高すぎだと思うんだってばよ。
「そこは多少個人的な思惑も入ってます」
「個人的な思惑?」
なんだろう? 不穏な感じのする言葉だが、思惑と聞いてちょっとホッとしてる自分が居るのが悲しい。
「それなら私にも分かるよハクちゃん」
「えっ、マジで? わかんのソウ?」
いきなり現れ後ろから私に抱き着きながら言うソウに思わず素で返す。
「うん。この子達にとってハクちゃんはもの凄い優良株なんだよ」
「ほう?」
「邪神の力を取り除ける。自分達を従える力がある。個人的に気に入る要素がある。色々と理由はあるけど、結構大きな割合を占めてるのがハクちゃんの状態だね」
「私の状態?」
はて? なんだろう?
「引き寄せ体質か?」
「トラブルメーカーですか?」
「良し。その喧嘩買ってやるよ親友共」
体育館裏来いやコラー!
「まあ、当たらずとも遠からずではあるけど、そうじゃないよ」
「待って、むしろそこも要素に含まれてますの?」
「うん」
マジかよ……。
「で、こいつの状態とはなんだ?」
「それは───」
「簡単です。今の白亜さんは神に片足を突っ込んだ状態。亜神にかなり近しい存在だからですよ」
「あっ、テアさん私が言おうとしたのに!?」
「中々進まないのでしょうがないでしょう」
「つまりはコイツがいずれ神になるかもしれないから青田買いしているって事か?」
「ウニャン……」
澪に襟首を掴まれ持ち上げられたので思わず猫真似する。賢いからちゃんと身体は丸めてます。
「ええ、そうなりますね」
「でもそれって何か意味があるんですか? 今ここには元とはいえ女神のテアさん達も居て、シルフィンさんも居ますよ? 神になるか分からないハーちゃんより、皆の方がいいんじゃないですか?」
「そこは違うよ〜。私達元女神もだけど、この世界の女神もあまり下界には干渉出来ない。その点ハクちゃんは違う」
「この世界の住人から神に至った奴は制約が緩いんだろ?」
鬼神しかり、龍神しかり、この世界で神の力を手に入れた奴は、ある程度この世界に駄女神達よりも干渉出来る。
制約はあるが桁違いに緩いという所だろう。
「おっ、正解。ちなみにこの子達の場合は他にも理由があるけどね」
「眷属か」
「ええ、鬼神、龍神、その他の神も自身の眷属は同じ種族で固めています。なのでどの派閥にも属さない白亜さんはこの子達にとって魅力的な上司なんですよ」
上司という言葉で一気に俗っぽくなったが確かに言い分は分かる。
「女神様方の言う通りです。とは言え、私がハクア様の為に働きたい、ハクア様のモノになりたいと思ったのも事実───いえ、違いますね」
ミカは首を振り自分の言葉を否定する。
「私は……私達は貴女の魂に惹かれました。そして貴女になら支配されても良いと思えたのです。ですのでハクア様、どうかこの身を貴女の為にお使い下さい」
それはハッキリとした忠誠。
思惑も何もかもを取っ払ったような飾り気のない剥き身の言葉に思えた。
そしてそんな事を言われて否と言える言葉を私は持っていない。
「私の世話は大変らしいよ?」
「貴女となら楽しい日々が送れそうです」
「私もミカと同じ意見です」
全く、変わり者には変わり者が寄ってくるらしい。
「そう言えばここまで来て聞くのもアレなんだけど、ルシェとミカの二人と契約とか私平気なん?」
『むしろ出来るなら一緒の方が良いですよ』
「そうなん?」
『ええ、聖魔のバランスを取る為にもミカエルの力があった方が安定しますからね』
なるほど、確かにそっちの方が安定しそうだ。
「……でもコイツ、聖なる力にやられたりしないのか?」
「確かにハーちゃんですもんね」
「テメーら本当に喧嘩売ってんのか?」
自分でもちょっと思った事をハッキリ言うんじゃないんだよ!
『その辺は多分大丈夫です』
「そこハッキリしてくれませんかねぇ!?」
あっ、クソ、顔背けやがった。
「ハァ……わかった。それじゃあ行くよ」
「「はい」」
二人の返事を聞いた私は魔力を解放する。
契約の方法はミコトと交わしたものをアレンジしたもの。
ミコトとは対等な契約だったが、二人の力を支配下に置く為に、主従の契約を交わす。
そうしなければルシェの邪神の力は取り除けないし、ミカの力も存在の格が違い過ぎて受け取れないのだ。
「汝の忠誠我に捧げよ 汝の力我の為に 汝が魂我が為に その魂朽ち果てる時まで我と共に生きよ」
「「我が身 我が血 我が魂 御身の為に 永劫の誓いを捧げん」」
私の詠唱に応え、ルシェとミカの二人も言葉に魔力を込めながら詠唱する。
互いの魔力がこもった言葉が魔言となり、溶け合い混ざり一つになっていく。
「我が名はハクア」
「我が名はルシファー」
「我が名はミカエル」
「「「今此処に互いの名を魂に永劫に刻み悠久の時を共に生きん」」」
私とルシェ、ミカの間に魔力のパスが繋がり魂の深い所で繋がった事が感覚的に分かる。
そして同時に二人から私へと強大な力が流れ込んだ。
あっ、これ多分ダメなやつだ。
──『警告:個体名ハクアに重大なエラーが発生しました。強制的に意識を遮断します』
はい。またスリープ入りま───。
▼▼▼▼▼▼▼
「おっと、成功……ですね」
いきなり倒れたハクアをキャッチしたテアがハクアの顔を覗き込みホッとしたように言う。
「そうなのか? 明らかにやばい倒れ方したが?」
「まあでも、ハーちゃんだからいつも通りと言えばいつも通りですけど」
「確かに」
「それもどうなの?」
澪と瑠璃の言葉にドン引きしながら心配そうにハクアを見る千早。
「大丈夫です。今はそうですね……入り込んだ力に適応する為にスリープモードに入った感じですね」
「またそんなパチモンのアップデートファイルをダウンロードした感じか」
「と言う事は、再起動まで時間が掛かる感じですか?」
「そうなりますね」
「いや、パソコンじゃないんだから……」
「似たようなもんだ。で、そっちの二人は大丈夫なのか?」
ハクアが倒れると同時にミカとルシェも同じく倒れ込んだ。
こちらは元々姿勢を低くしていた為に放置だったが、怪我はないようだ。
「ええ、大丈夫でしょう。予想以上に白亜さんに力が流れて一時的なショック状態になっただけです。後でベットに運ぶとしましょう」
「……しかし、エライ事になったな」
ハクアが黙らせていたがほとんど全員状況について来れずに混乱中だ。
聖女など目を白黒させて今にも倒れそうだ。
「はあ、これもコイツの【レアイベント遭遇率up極大】の効果か」
「いえ、ありませんよそんなもの?」
「どういう事ですかテアさん?」
「それはシルフィンが白亜さんをからかう為に置いたもので名前が表示されてるだけです。ですよね?」
『うっ、はい。すいませんでした!』
テアに睨まれたシルフィンは素早く土下座して謝る。
本当にハクアに似てるなと思いながら澪は疑問を口にする。
「その割には効果があったように思うが」
「白亜さんの魂は特別ですから、試練のようにトラブルなどが引き寄せられるんですよ。なのであながち間違いではなかったので放置してました」
「そうなのか?」
「ええ、強い魂には様々な者が引き寄せられる。特にこの子達天使のような高次の生命体は、人の美醜ではなく魂の輝きに惹かれるので尚更です」
「つまりいつもなら敵として来ることが多いが、今回はコイツの強い魂の輝きに惹かれた奴等が仲間として来たって事か」
「そうですね」
「「ハァ……」」
テアの言葉を聞いた澪と瑠璃が深い溜め息を吐く。
その姿を見て千早は一人、相変わらず苦労してるなと思いながら、この大変な状況を見て見ぬふりするように、眠った友人の寝顔を見つめるのだった。




