何と戦わされてるの私!?
「……えっと、つまりこういう事?」
突如現れたミカエルこと、ミカの説明を聞き終えた私はその情報の整理を含めて要点をまとめてみる。
この世界には元々罪過の邪神は居なかった。
しかしある時、それは何をきっかけとしてかは分からないが邪神としてこの世界に現れた。
ミカ達の知る限り最初に現れたのは傲慢、憂鬱、怠惰、虚飾の四体。
そしてその中で虚飾だけは本体が顕現せずに、元々この世界に居たベリアルを依代とした状態で現れそれぞれが思い思いに世界を荒らし回る。
更に暴食、憤怒、嫉妬、色欲、強欲もいつの間にか現れ、世界は混迷の時代に突入した。
だがそうして現れた邪神に対し神々も何もしなかった訳ではない。
私が知っているだけでも憤怒は封印され、怠惰であるベルフェゴールもまた先代龍神に封印されていた。
そしてミカの話では傲慢と虚飾のベリアルもまた同じく神によって封じられたらしい。
天界……と、呼んでいいのか、天使達の座する場所へと攻め込んできた傲慢と虚飾は、大多数の天使の犠牲と神の力によって倒された。
特に依代で顕現した虚飾は、依代となったベリアルが瀕死の重傷になるほど叩き潰され、邪神の権能は疎か天使としての力も奪われたらしい。
そして───。
「傲慢の邪神と虚飾の力を当時最も神の信頼が厚く、力のあったルシファーに封じ込めた……と」
「ええ、そうです」
「つまりルシファーの堕天ってのは」
「はい。傲慢に虚飾。この二つの力をその身に封じ込めた影響です」
なるほど。確かに私達の世界でも神の右腕とまで言われたルシファーが、なぜ神に逆らったのか少なくとも私は知らなかった。
しかしそれもそういう理由なら納得出来る。
「ちなみにそれでなんで裏切りなんて話になってるんだ? 私が知ってるのは神に逆らったからって話だったが」
「同じ事ですハクア様。私は主上である神の反対を押し切りこの身に邪神を封じました。それが伝わったのでしょう」
つまり反対を押し切って封じたルシファーが堕天して、そのまま天界を去ったから二つは繋がったというわけか。
とはいえ凄まじいのはルシファーこと、ルシェの力だな。
同じく封印した水龍王ですら、魂ではなくその肉体を封じるだけでその力のほとんどを持っていかれてた。
それなのにルシェは傲慢の肉体と魂、虚飾の魂の全てをその身に宿したまま一見すると普通に暮らしている。
ぶっちゃけとんでもない事である。
"……マイロードは怠惰である私と、暴食を封じてますが?"
ちょっと黙ろうかベルディアさん。
"申し訳ありませんでした"
「しかしなんで虚飾と傲慢は一緒に行動してたの?」
「性質が近かったようです。あの時の私は傲慢と共にあるのは心地よかったように思います」
「他人事っぽく言うね」
「これを言うと色々と思う所はあるのでしょうが、あの時の私はまるで夢の中に居るようでした。現実か夢か分からない中、フワフワと漂いながら、世界を滅ぼすという事だけを考える悪夢の中に」
「……邪神になった後と前で変化は?」
「分かりません。正気だったようにも狂っていたようにも思います。しかし神に敗れ力を奪われてからは、頭のモヤが晴れるように思考がクリアになりました」
その言葉にベルディアを見ると頷いてベリアルの言葉を肯定する。
おばあちゃんも身体を乗っ取られてた間は、夢を見てるようだったとか言ってたっけ。
意識の塗り替え、いや、上書きされた意識と混ざり合うという感じかもしれない。
「まあいいや。ここは考えても答えが出ないし、で……その後、ルシェは力を失ったベリアルと共にこっちに来て、ミカも居て……なんで宗教? と言うか聖女?」
「それはですね。私はベリアルとルシファーの監視という名目でここにやってきたんです。そしてルシファーは堕天したとは言え、人々を導きたいと、そして私もその気持ちは同じでした」
「ふむ。つまりあれだね。人助けしてたらいつの間にか祭り上げられて、都合が良いから放っておいたら付き従う人間や協力者が増えていったと」
「お恥ずかしながらそうなります……」
ミカは本当に恥ずかしそうにちょっと顔を赤くしてる。
とはいえ本当の所、ミカの本当の任務はルシファーとベリアルが暴走した場合の処理というところだろう。
邪神の魂二つをその体に宿しているルシェ。
その身体から邪神の力が解き放たれた時、その被害予想は国どころか地形を簡単に変えてしまう程の被害が出る。
そしてそんなルシェが暴走した時に素早く処理出来るとしたら、ルシェと同等の力を持った熾天使ミカエルは妥当な人選となるのだろう。
にしても変な所で教国の成り立ちを見たな。
多分、最初はその聖女を利用する形で取り入れたのが教会勢力なのだろう。
互助組合から政治の力を得て、制御する形へと時代が替わり推移して行ったというところか。
支える立場から政治的な部分の支えに取って代わり、そこから組織を強化して聖女のおまけから聖女を擁する団体へと認識を変えて行ったのだろう。
……あれ? そうなると本当に教国って女神となんの関係もないのでは?
神が身近に居る世界で、神となんの関係もない組織が神の名を語って、世界的な教義にまでなってるとか闇が深い。
これ、知ってるだけで消されてもおかしくない案件だよね……よし、私は何も気が付かなかったと言うことで。
「ふむふむ。すっげー興味深いし深掘りしたいけどここまでにしとこう。すっげー興味深いし深掘りしたいけど」
「どんだけ深掘りしたいんだよ」
「ハーちゃんそっち系好きだし、本当に興味あるんでしょうね。まあ、後で聞けるでしょうし今は我慢してくださいね」
「わかってらい。……わかってるよ?」
「はよ進めろ」
「へいっす。ごちゃごちゃと面倒な部分は置いといて、そこからどうして私に繋がる? 正直ここまで聞いてもピンと来ないのだが?」
"私はなんとなくわかる気がしますが……"
えっ、マジで?
「そうでしょうね。ですが私達は貴女に希望の光を見ました。当然、断る権利はハクア様にあり、私達はハクア様の慈悲にすがるだけなのですが」
そんな言い方されて断ったら私が悪いみたいなんだが!?
「率直に」
「わかりました。では率直に……ハクア様にはルシェの中にある傲慢と虚飾、二つの邪神の力を奪って頂きたいのです」
oh......なるほどそう来たか。
「テアはそれって大丈夫だと思う?」
「そうですね。確かに白亜さんなら大丈夫な気もしますが、傲慢と虚飾の二つを一気にとなるとどうなるかは分かりませんね」
「……ねえ? 白亜さんは今まで居なかったのに普通に聞くし、テアさんは今まで参加してなかったのになんで普通に会話に交ざれるの?」
「千早ちゃん。つっこんだら負けですよ?」
「何と戦わされてるの私!?」
よくある事である。
私が質問すると同時に突如として普通に現れたテアに、ミカとルシェ、ベリアルは素早く頭を垂れる。
そうかそういえばテアは元女神だから知ってても不思議じゃないのか。
「頭を上げなさい。今の私はお嬢様のメイドですから貴女達が頭を下げるような者ではありませんよ」
「い、いえ、しかしそれは……」
テアの言葉にミカが反論しようとするが無言の圧力に負け、全員椅子に座り直した。
「白亜さん。私だけではなんとも言えないのであの子にも聞いてみては? 一応白亜さんの身体の調整を何度かさせてますし」
「ふむ。そうだね。おーい、出て来い運営」
「それでいいのか?」
「まあ、ハーちゃんですし、向こうもハーちゃんに合わせられるくらいですから」
おいそれどういう意味だ?
『なんですかハクア。私だって忙しいんだから簡単に呼ばないで下さい……よ? えっ、どういう状況ですか?』
私だけではなく、テアにルシェ達まで居る状況に、ずいぶん簡単に出て来た駄女神が驚いて固まった。
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