ここは任せて先に行けを生で聞けるとは……
「さあ、ハーちゃん。監禁が良いですか? それとも縛り付けて一生飼い殺しが良いですか? 達磨……は少し可哀想ですね。でもその場合も私がちゃんと面倒見てあげますからね。フフフフフフ……」
ヒエッ、ヤンデレコース!?
「展開が早い上にめちゃくちゃ物騒!?」
「で、説明しろ」
「明らかに流していい内容じゃなかったけど冷静な!? いや、説明する前に説明して欲しいんだが? 確認だけど初対面だよね?」
「ええ、今日初めてハクア様とはお会いしました」
ですよね〜。こんな美人さん忘れないのよ。
しかしそうなると理由がわからん。
聞いても良いが下手に聞いて私も知らない新情報が出てくると、達磨De監禁コース、拘束監禁コースの現実味も増す気がする。
悩ましい。
「どういう事か説明してくれるか?」
「うわん。サクサク進むし!?」
「ハーちゃんうるさいですよ? そしてハーちゃんのものとか狡───羨ましいです。どういう事ですか」
「言い直しても隠せてないぞ。この馬鹿の事をどこで知って何を企んでる?」
おかしい。私の事のはずなのに一向に主導権が回ってこない。我、この会話の主役ぞ。
「申し訳ありせん。性急すぎましたね」
澪の言葉にルシェはニコリと笑いながら立ち上がる。
「個人的にハクア様になら全てを捧げても良い。そう思えると言うのもありますが、ワタクシにはどうしてもハクア様に叶えて頂きたい事があるのです」
う〜ん。この打算ありと言われた方がホッとする悲しさよ。
「その叶えて欲しいことというのは私達も聞いても良いんですか?」
「ええ、構いませんよ。それに───」
瑠璃に答えたルシェが私、澪、瑠璃を順番に見る。
「皆様方は薄々、勘づいているようですからね」
そう言ってまたニコリと笑う顔はとても美しく、とても作り物めいている。
まあ、本人の言う通りまだ正体は掴みきれていないが、私達はコイツが人間ではない事は既に確信して居る。
だからバラしても構わないそう言っているのだ。
そしてそれは同時に、本当に聖女としての身分はどうでもいいと言っているに等しい。
この発言だけでも先程の言葉の本気度合いが窺える。
「それでは改めまして……序列第一位の聖女ルシフェ=フォール。そしてワタクシの本来の姿は───」
言葉を切ったルシェの力が高まり澪と瑠璃が構える中、私は不思議とその必要はないと確信する。
そして私達の目の前でルシェの背中から漆黒の黒い六对十二枚の羽が生える。
それと同時に着ていた法衣も漆黒に変わり、オマケにスリットやら色んな所に隙間が開きとてもセクシーな物へと変化した。
「これがワタクシ本来の姿。この場の皆には堕天使ルシファーと名乗ればわかりやすいでしょうか?」
ルシェの名乗りにザワつく中、私は思った以上のビッグネームに、セクシーな衣装となり強調された胸元を見ながら現実逃避していた。
肉付き良い、胸も大きい、顔美人、スリットから覗く脚と黒いガータベルト、そして何よりその絶対領域が素晴らしい。
「現実逃避で観察してんじゃねぇよ」
「アイター!? なんばすっとかこの女」
「ハーちゃん。収拾つかなくなる前に進めて下さい」
「へーい」
とはいえ、私よりもはるかに巨大な力を持つ存在が、私に服従すると言う段階で意味がわからん。
そして何よりルシェが私に頼み事をしたいと言うのもわからん。私に出来てルシェが出来ない事の方が少ないだろう。
「やはり驚かないのですね」
「いや、十分驚いてるんだけどね。それよりもお仲間の方を先になんとかした方がいいんじゃない?」
そう言ってチラリと見たのはアルカとディルガの二人だ。
本来の姿を現すまで警戒していた澪と瑠璃は、堕天使としての力を解放した瞬間に警戒を止めたのだが、それとは逆に力を解放した途端、アルカ達は一気に警戒度を引き上げ戦闘態勢になった。
「ハクア様。お逃げ下さい」
「ああ、第一位がまさか堕天使だったとは……ここは仲間であった俺達がなんとしても食い止める。全員逃げてくれ!」
おお……ここは任せて先に行けを生で聞けるとは……というか、私も言う方やってみたい。
「二人共落ち着け。ルシェに敵意はないよ」
「そんなはず!?」
「彼女は神を裏切り、堕ちた者だぞ!」
そんなの言われても困る。
と言うか、私の目標の一つに駄女神に腹パン食らわすと言うものがあるので、どっちかと言えば私はルシェ側なんだけど?
そんな事を考えてる内に二人がルシェに挑み掛かろうとする。
「ほいっと」
「キャッ!?」
「なんだ!?」
そんな二人を動き出す前に拘束した私は少し考える。
と言うか、この世界でもルシファーは神を裏切った奴って認識なのな? ある程度神話とかは地球と似てるし、こっちの事象が向こうに流れてきてるのか?
「ねえねえ。ぶっちゃけどこまで本当なの?」
ルシファーと言えば、天使たちの中で最も美しい大天使であったが、創造主である神に対して謀反を起こし、自ら堕天使となったと言われている。
しかしその内容は諸説あり、どれもそれっぽい理由が綴られているだけなのだ。
興味本位でそんな事を聞いてみる。
「そうですね。ハッキリと言ってしまえば、ワタクシは神へ謀反を起こした訳ではありません」
「ほほう」
それは面白い。
「ハクア様。堕天使の言うことなど聞いては行けません!」
「そうだ。この拘束を早く解いてくれ!」
「シャラップ聖職者。お前らにとっても神話の話だろ? 後世に伝わる話なんて改変されていてなんぼなんだから少しは聞く耳もてよ」
「それは……」
「し、しかし相手はあの堕天使ルシファーだぞ」
「むしろだから大丈夫なんだろ?」
二人の言葉に何言ってんの? と言うように返す。
「どういう事でしょうか?」
「いや、ぶっちゃけコイツここの人間皆殺しにする位、数分あれば出来るんだよ。それなのに今現在死んでないのがいい証拠だろ?」
だから澪達も警戒を解いた。
抵抗しても無駄だからではなく、抵抗の意志を見せる方が危ないからだ。
その代わりアルカ達のように短絡的に襲いかかろうとするのではなく、こっそりバレないように体内で魔力を練り上げている。
まあそれも、バレた上で放置されてるんだけど。
二人もそれをわかっててやってるし、私はむしろ普通に魔力を練り上げてる。
しかもそれを見たルシェはとても微笑ましいものを見る視線を向けて来るくらいだ。
つまり余裕の一言だ。
「で、続き続き。はよ聞かせて」
「フフフ。そんなにワタクシの話をせがまれるとなんだか気恥しいですね。とはいえ、最初からこの話題に関してはお話する予定ではありましたが」
「そうなん?」
「ええ、この話がワタクシが先程申し上げた、ハクア様にどうしても叶えて頂きたい事に繋がるので」
やばい。思った以上の厄ネタが来そう。
「ちなみに断った場合は?」
「ご安心を。なにも致しませんよ」
「あれ? そうなの?」
てっきり殺されこそしなくても、さっきの発言は取り消しぐらい言われると思ったんだけど。
「ええ、先程も言いましたが、貴女様にお仕えしたいと言うのはワタクシの本心なので。そこは変わりません」
「そ、そうなんだ?」
あっれ〜? ギブアンドテイクな関係をご所望じゃなかったの? なんで堕天使ルシファーなんて大物が好感度カンストしてんの?
訳が分からず内心で盛大に首を傾げるのだった。




