だってなんとなくわかるんだもん
「そう言えばあの知的眼鏡も冒険者にしてはいいモノ着てるな」
「そうですね。その割には……ですけど」
「そうだね〜」
「何がそうなの?」
私達の言葉にまたも着いて来れない千景。
どうやら私達の言葉は少し足らないようだ。
「いや、装備の質の割に動きがね。あれ多分冒険者じゃなくて学者系」
「それで……だ。冒険者でもないのにあのレベルの質の良い装備を身に付けているという事は」
「それなりのお給料を貰える立場、もしくはどこかの紐付きって感じですかねー。って事です」
「……怖い。なんで会ってもない人間のプロファイリングがそこまで正確なのよ。というか、この位置からでなんでそんなに見えるの?」
「目に魔力を集中すると視力上がるよ。最初から全力でやるとビックリするから少しづつ試した方が良い。んで、あの手のコツは体重移動や身なり、視線の動きで大体どの辺の奴か分かるようになるよ」
近接、遠距離、斥候、サポートでもそれぞれ立ち方が違うし、動き方も変わる。
更に近接なら動き方で武器持ちかそうでないか、どんな種類の武器を扱っているかはわかりやすい。
身なりにしても同じ。
高そうな服を着ていても動きで強さはわかり、逆に動きに素人臭さがあれば普段戦闘に関わらないタイプだと分かる。
貧乏人が普段と違うものを着れば動きはぎこちなくなるし、着慣れていればいちいち服を気にしたりもしなくなりこれもわかりやすい。
その他視線の動きでも普段の傾向が出やすいので、それらを統合して考えれば大体の人間はわかる。
「───と、言う訳ですな」
「そうなのね。普段スパイを見付けてるのも同じ方法?」
「ああ。ああいうのは普段から警戒してるから、それはそれで見付ける事は出来る。まあ、それでも普通は全部は無理だが」
「まあ、こっちにはハーちゃんが居ますからね。スパイの人が可哀想になるくらいです」
「だってなんとなくわかるんだもん」
んで、そのまま見てるとおかしくないけどおかしい動きをするからわかる。
「なにそれ、なぞなぞ?」
「うーん。簡単に言えば物音した時に反応が鈍かったり、全員が気にするものにも反応しなかったり遅れたりとか?」
「訓練された人間は動きに出ますからね。例えば私みたいに武術を習ってれば、気配に敏感になって戦闘態勢取るとかです」
「逆にスパイの場合は訓練受けた動きを出さないように、無意識レベルの反射も表に出さないように、意識下に置いて行動するからやっぱりズレや違和感があるんよ」
「中にはそれを完全な形で押さえ込んで演技出来るのも居るがな。まあ、それでもコイツに見られた時点で些細な違和感を感じ取られて、スパイは残念だったなとしか言えない状態になる」
「……はぁ。異世界だろうがなんだろうが、本当に白亜さんは白亜さんよね?」
おい貴様どういう意味だこのやろう。しかもそれについて本人に同意を求めるとか何考えてやがる。
「ええいやかましい! とりあえずわからんから保留と言う事は確かなんだよ。しかも問題なのが……あの場にいるほぼ全員がそんな感じって事だね」
「だな」
「ですね」
「えっ? あの冒険者風の人と小さい子も?」
「そうだよ。冒険者風の方は多分あれ、野盗とかそっち上がりだろうね」
「ああ、視線の動きが警戒よりで、余裕はあるが微妙に顔を隠してる。恐らくどこからしでやらかしたことのある奴だろうな」
「ちょっ!? そんなの大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。あの程度ならフロストさんでもなんとかなりますから」
それよりも……と、瑠璃が言葉を飲み込み結衣ちゃんへと視線を向ける。
「あっちの方が問題ですよね。ハーちゃん的には」
「まあ、スパイだろうが、野盗上がりだろうが、王族だろうが構わないが、私もあれが一番気に食わないな」
「うむ。あれが一番イラつく」
「ちょっと、そのラインナップよりもヤバいって本当に危ないんじゃないの?」
「あ〜、危なくは……でも、ある意味では一番危ない? んん〜なんて言っていいか迷いますね。って、ハーちゃん!?」
視線の先、小さい男が結衣ちゃんに「お姉ちゃん」とか言いながら抱きつこうとする姿を見て、私は即行動に移す事にした。
「は、白亜先輩!? えっ、どうしたんですか!?」
いきなり現れ、男の手を掴み拘束した私に目を白黒させながら結衣ちゃんが驚きの声を上げる。
「あ〜、やっぱりハーちゃん我慢できませんでしたね」
「まあ、あの状況を見てた段階で普通に予想の範囲内だな。むしろ殴り飛ばさずに腕を掴んでるだけならコイツにしては上出来だろう」
「お前ら……人をなんだと思ってやがるんでい」
「だってハーちゃんですし」
「お前のなにを信用しろと?」
よし。喧嘩ならいつでも買うぞコノヤロウ。
「ちょっ、み、皆速っ……速い……なんでこんな距離……簡単に一瞬で移動出来るのよ。ハァ〜……白亜さんに関しては、移動する所すら見えなかったわよ」
「いや、普通に走って移動したが?」
「……逆にスキルかなにかであって欲しかったわ」
知らんがな。
「み、皆さんまで、どうしたんですか? と言うよりも、白亜先輩はなんでキース君を捕まえてるんですか?」
ふむ。
結衣ちゃんに視線を戻すと、いきなり現れた私に対してフロストを除く三人が警戒態勢を取っている。
一番最初に反応したのは冒険者風の男、次は俺様チックな奴、最後は学者風か……どいつもこいつも遅いな。
私の登場に呆気に取られてボーっとしてるようじゃ、やっぱり大した腕でもなさそうだな。まあ、見てわかってたけど。
「お前は誰だ!」
「結衣! 退るんだ!」
「フロスト……結衣を頼む。おいお前、一応そいつは俺達の仲間なんだ離してもらおうか」
いちおう仲間意識合ったんかコイツら。
「クッ、離せよ!」
「あの……先輩? すみませんが、なにかしでかしていたのなら謝るので離してあげてくれませんか?」
「そうよ白亜さん。流石にいきなり拘束するのはやり過ぎじゃない?」
「いや、私もコイツが他の奴らみたいに普通にアタックするならなにもせんよ。ただ、こいつのやり口が気に食わない」
「やり口ってどういう事ですか先輩?」
うむ。今更ながらにどうしよう?
なんとなく体が動いて出てきてしまったがこのあとのプランがない……というか、覗き見して遊んでたのがバレるのは嫌なんだが。
とりあえずこいつの事話すか? と視線を澪達に向けると頷かれた。
どうやら私の好きにしろとの事だ。
「ねえ結衣ちゃん?」
「はい。なんですか先輩?」
「こいつの事結衣ちゃんはどういう扱い?」
「えっ? え〜と、弟みたいな感じ……ですかね? お姉ちゃんって言ってよく抱きつかれるので」
「ほう?」
「クッソ! 良いからいい加減離せよ!」
「お宅らは?」
「一応そんな奴でも仲間だ!」
俺様風が私の問いに対してまっすぐ答える。
他の二人も気持ちは同じだとでも言うように頷く。
「なるほど……弟で仲間ねぇ」
これ、ここまで来ると言っても良いのだろうか? …………まっ、いっか。コイツがどうなっても私に関係ないし。
「コイツ、この場の中で最年長だぞ」
「「「ハッ?」」」
「オマケに……弟キャラを演じるのもおこがましい三十代後半だ」
「「「えっ……ぇぇぇぇええ!?」」」
私の告発に結衣ちゃん達の驚きの声が響き渡った。
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