またやらかしてしまったようだ
「で、ずいぶんと派手な帰還だったなこのバカタレ」
「いやいやそんな」
「とってもハーちゃんらしいと思いますけど褒めてはないですよ?」
クソ。なあなあで流れないか。
「えーと、私もね。頑張って早く帰ってこないとなーって思ってた訳ですよ?」
「既に疑問形じゃねえか!」
現在私は龍の里から帰っきた。
そして───何故か正座させられていた。
「何故かじゃねえだろ」
「あの……すいません。私なんにも言ってないのに思考読まないで頂けます?」
そしてついでで良いのでアイアンクローをやめて欲しい。
なんで人の思考を簡単に読んでくるかなコイツは。
「そもそも今回はお前だけじゃなくて、お前ら───だろ」
「あー……そーね」
澪の言葉に横を見ると私と同じ様に正座をしている面々がいる。
ミコトやトリス、ユエだけではなく、シフィーにシーナ、ムニも一緒にだ。
何故かテアとソウはちゃっかり向こう側の立ち位置に居る。解せぬ。
時は遡り数時間前。
私は当初の予定通り龍の里を後にしようとしていた。
「じゃ、そういう事で」
「「「軽い!?」」」
「いやだって、ミコトにも言ったけど、なんだかんだですぐ来れるようにはなってるし、別に良くない?」
「ええ!? でも旅立ちって言うか、お別れって言うか、そういう時にはもっとこう……もっとこうさ!」
「やれやれ、これだから故郷から出た事がないお嬢様は、ちょっと外の世界に行くくらい大袈裟にするもんじゃないだよ?」
「えっ、そういうもんなの?」
「そうそう」
「うーん。じゃあ良いのかな?」
「うむ。いいのだ。で、意外にも皆付いてくんのね?」
視線を横に移すとそこには、ミコトやトリスと同じく旅立ちの準備をしたシフィーやシーナ、ムニの姿がある。
一応の名目としてミコトの護衛としてトリス、シフィーが、シーナとムニは世話役としてということらしい。
まあ、ミコトレベルの奴をどうにか出来る奴なんて、正直あんまりいないから護衛必要ないし、世話役なんて二人とも世話役なんて柄ではないのであくまで名目だ。
本来の目的はミコト同様、外の世界を体験する事にある。
ドラゴンは引きこもり種族だからね。
「正直ほかは予想の範疇だったけど、シフィーまで来るとは思わなかったよ」
「ん。私もその気はなかったけど、付いて行っても良いって許可が出たから」
「そうなの?」
「ん。トリスと一緒に外の世界を体験して、龍王としてもっと相応しくなれって水龍王様が」
なるほどおばあちゃんの差し金か。
おばあちゃんは突拍子もない事をするからしょうがないか。
「それは白亜さんが言う事ではないですよ」
「それハクちゃんは言えないよ」
「そういう事を言うのはこのお口かしらねー?」
「ふぃふぁふぁふぁひほひぃっふぇふぁふぃんふぇふはぁ(だから何も言ってないんですが)!?」
「何言ってるかわかんないわよハクアちゃん」
そりゃ頬思いっきり引っ張られてますかね! と言うか、口に出してない事を正確に把握するなら、何言ってるかわかんなくても、口に出した言葉は把握してくれませんかね!
「あー、痛かった」
まだヒリヒリと主張を続ける頬を撫でつつ戦略的撤退。
力が下がったとはいえ、おばあちゃんのステータスは遥かに私より高いのだ。
「それじゃあハクアちゃん。ミコト様も皆もお願いね」
一転、少し寂しさを滲ませるおばあちゃん。
「うん。まあ、たまにはお菓子やご飯持って遊びに来るよ。私の仲間もちゃんと紹介したいからね」
「ふふ、そうね。楽しみにしているわ」
それを聞いたおばあちゃんは少し驚いた後嬉しそうに笑う。
「皆も修行頑張ってね。特にアトゥイ」
「ああ、ハクアが作ってくれたチャンスだからな。皆に認められるように頑張るよ」
「うむ。良き。さてとそれじゃあ今度こそ行こっか?」
私が話をしている最中に皆もそれぞれ別れは済ませているのは確認済みだが、それでも一応声を掛ける。
別れのシーンなんてどこかで切り上げないと終われないからね。
そうして来た時と同じようにトリスの背に乗って出発した私達は順調に進み、途中で手土産&ストックとしてアイランドオーク狩りを終え、しばらく進んだ後昼休憩を取る事にした。
しかし、後になって思えばこれがいけなかったのかもしれない。
アイランドオークをトンテキにして美味しく頂いてる最中、シーナの何気ない一言が発せられた。
「いやー、美味いっすね。に、しても意外とゆっくり帰るんすね? 結構早く帰るもんだと思ってたけど……まあ、それはそれで新しい場所を見るのに丁度いいから楽しいっすけど、逆にちょっと疲れるっすね」
と、とても良い笑顔でそんな事を言うものだから、一部の空気……いや、ここまで私達を運んで来たトリスがものすごい空気を放っている。
んーと、よし。私は何も見ていない。聞いていない。あー、トンテキ美味しいな。
「ね? ハクアもそう思うっすよね?」
待てー!? なんでピンポイントで私狙い打ちしやがった!? あっ、クソ、全員視線逸らしやがった。
「……そ、そう? 私自身はこんなに速くも飛べないし、続けても飛べないから凄いと思うけど? ミコトやムニもそう思うよな?」
ハッハッハッ。そんな顔で見たって私を見捨てた奴らの事など知るか。
「そ、そうだね。わたしもそう思う……よ?」
「ム、ムニもそんなに速くも、長くも飛べないから凄いと思うの」
「えー、でも、私の方が早く着けるっすよ」
「……ほう、ならお前がこの後連れて行けば良いだろ」
「あっ、そっすね。私が運ぶのが一番早いっすもんね」
その瞬間、別の方からまたも不穏な空気が漏れ出た。
「シーナ。それは少し聞き捨てならない」
「どうしたんっすか姉さん」
なんか鎮火しないまま別の争いが始まったので、そっとおかわりのトンテキをトリスの前に置いたらブレス吐かれた。
酷い。
「残念だけどシーナは確かに速くなった。けどまだ私には敵わない」
「いやいや。姉さんこそ何言ってんすか。確かに前は姉さんの方が速かったけど今は私の方が速いっすよ」
えー、なんでこんな事になってるの?
(風龍にとっては速く飛ぶ事が一番の自慢なの)
(うん。里でもよく、風龍が飛び回ってスピード勝負はしてたよ)
(そうなんか)
うーむ。確かに最近の修行の成果で、私の見立てでは二人にそこまでの差はないと思う。
強いて言えば初速とトップスピードに乗るまではシーナの方が、最高速度と速度の維持はシフィーに軍配が上がる感じだと思う。
シーナが勝つには最初にどれだけ引き離せるかって所か。
「「で、ハクアはどっちに乗るの!」」
なんて事を考えてたらいきなり詰められた。
気が付くとさっきまで近くに居たミコトとムニはいつの間にか離れている。
因みにテア達はユエを連れて既に退避中。
私も連れて行って欲しかったの。
いつの間にかどちらが先に着けるかという勝負の流れになっていたようだ。
その後も誰がどっちに乗るかでもめにもめながら勝負スタート。
その結果───。
「ドラゴンだ! ドラゴンが凄いスピードで迫ってぞ!」
「は、早くも逃げろ! ドラゴンが襲って来るぞ!?」
と、フープは当然のように混乱の坩堝と化したのだった。
そうして出張ってきた澪や瑠璃達を含めた私の仲間に囲まれて、帰還そうそう全員で正座して反省する羽目になったのだ。
それにしても合流して早々に正座させられるとは、皆もうちょっと気を付けた方がいいのではないだろうか?
「お前が言うな」
「ハーちゃんが言える事じゃないですよ」
だから言ってないんだって。
どうやら私は───いや、私達は帰って早々にまたやらかしてしまったようだ。




