バレてるーー!
「う〜あ〜、もう疲れたよぉ〜」
開幕から泣き言を嘆き、私に抱きつくミコト。
まあ、しょうがない。
今まで邪神が自身の中に封印されていたミコトは、そちらに力が割かれていたせいで実力が上がらず、加えて成長もしなかった。
しかしその原因である邪神が今回の騒動で取り除かれた結果、龍神の娘として相応しい実力と誰も彼もを魅了する外見を手に入れ、今まで見向きもしなかった里のオスから一気にアプローチされているのだ。
「わたしは全然変わったつもりないのに、いきなり変な視線ばっかり増えて、番にどうだとか薦められたり……手のひら返しが凄すぎて信用出来なくなってきたよ」
なるほどなるほど……潰すかこのトカゲの巣。
「ハクア? なんか変な事考えてない?」
「いや別に、大してなにも?」
うーむ。鋭い。
「ならいいけど」
「まあ、アレだ。それだけ可愛くて綺麗になったんだからしゃーない。昨日の視線も凄かったしね」
「うえっ!?? あっ、うん。か、可愛いとか綺麗って思ってくれてるんだ。じゃなくて! 昨日ね昨日。確かに昨日は今まで以上に視線に晒されたなぁ」
なにやら動揺していたミコトだが、昨日のことを思い出しまたも疲れた雰囲気を出す。
昨日は今回の騒動に対処したメンバーに褒賞を渡す場が設けられた。
全ての住人が集まる中で行われ、龍神の口から直接皆が納得するような経緯が語られる。
真実とは違うが、終わった事で恨みを産んでも仕方がない。と、言うわけで内容は当たり障りのないものへと変更された。
そして更に龍神から騒動への感謝が綴られ、全員に元老院達から奪ったドラゴンコアが与えられた。
ちなみに内訳はアトゥイやレリウス達が一つずつ、ミコト、トリス、シフィーが二つ配られ、全員実力が更に上昇した。
ユエに関してはドラゴンコアは意味をなさないので、その代わり宝物の中から一つ武器を選んで貰えるらしい。
そんな衆人環視の中での場ではあったが、それだけなら龍神の娘であるミコトは既に何度も経験している。だが問題は別にあった。
それが最初に言った感情の変化だ。
今まで、龍神の娘という事で表立って侮蔑こそされなかったものの、強さを重んじる龍族の中にあって実力の伸び悩むミコトは軽視されていた。
だが今回の騒動で本来の力と容姿を取り戻した事で、周りが手のひらをくるっと返したのだ。
そして今回初めて衆目の的にされた事で、今まで感じた事のない下世話な視線に、好奇の目というまとわりつくような視線の数々を受けて、すっかり人間不信───もとい龍不信状態になってしまった。
今までがどちらかと言うと侮られた視線ばっかりだったのが、いきなり手のひら返し&下世話な視線に変わればそうなってもおかしくないだろう。
うん。やっぱり滅ぼそうかこのトカゲの巣。
「ハクア?」
「なにも考えてないっす」
「まだ何も言ってないっす」
しまったリアクションが早すぎた。
「まあでも次はハクアの番だよね」
「ねー。クソほどめんどい」
そのミコトの言葉通り、何故か私だけは日にちを変えて今日という事になったのだ。
おばあちゃん達は、功績が一番大きいから差を付ける為だとか、特別感を出す為だとか言ってたけど、龍神もおばあちゃんも妙にニコニコしていたのが気になる。
なんなら報酬なんぞ貰わずにこのまま逃げ出すべきかもしれない。
まあきっと簡単に捕まって拘束されるのがオチだけど……。
「ん? どうかしたのミコト?」
いつの間にか黙ったまま私を見詰めるミコトに思わず聞く。
「……えっと、ハクアはやっぱり明日にはもう帰っちゃうんだよね」
その事か。
「うん。流石にそろそろね。でも魔法陣も設置させて貰ったからいつでも来れるよ」
「そっか……うん。そうだよね。そうだよね。ごめんね変なこと聞いて、ハクアのことを心配して待ってる仲間が居るもんね」
くっ……言えない。心配なのはこれ以上帰らなかった時の私の処遇だなんて、とてもではないがこんな顔をしているミコトに言えない。
「ミコト様。そろそろご準備を」
「あっ、はい。今行くよ。じゃあハクア後でね」
「う、うん」
言い淀む間にミコトはあっという間に部屋を出ていく。
うーん。なんて言うべきだったんだろうか?
でも流石に帰らないと言うには私の命が危ない気が何故かするし、ミコトの事を簡単に連れ出したら今度はドラゴン側から命狙われそうだし。
うーん。デットオアデットしかない不思議。
「別に白亜さんが望むならこのままここに居ても良いんですよ。どうせお嬢様達も定住すると知れば来るでしょうし」
「そうだねー。ハクちゃんがそう決めれば大丈夫だと私も思うよ」
「あのすいません。騒動以降一向に姿見せなかった癖にサラッと出て来るのやめて貰えます?」
ついでに心の中を読まないで欲しい。
「で、どうします?」
「あぁ、無視ですか。いや、帰るよ。だってここの料理まだ成熟してないし」
私が広めたおかげで少しずつ進歩しているがやはりまだ荒い。そろそろテア以外の料理も食べたいのも事実なのだ。
「うん。流石ハクちゃんサイテーだ」
「失敬な!?」
「ハクア様。ご準備のほうはよろしいでしょうか?」
抗議の声を上げていると呼ばれてしまった。どうやら準備が調ったらしい。
そのまま案内の人に連れられて行くと、昨日ミコト達が呼ばれた場所に着き、一斉に全員の視線が私に突き刺さる。
しかもテア達が元女神だという事は知られているので、その二人が私の後ろを付いてきているため、まるで従えるように歩いてる形になって更に視線を集めている。
あっ、これ嵌められてる。
チラリと見ると龍神もおばあちゃんも笑っている。しかも後ろの二人からも笑いを堪える気配がする。
ドチクショウ。
龍神の前にやって来た私は、一応昨日見たミコト達に倣い頭を下げる。
すると龍神は楽にしろと一言私に告げ、その後におばあちゃんが私が今回どんな形で事件に関わったのかを喋っていく。
概要だけど聞いてるとまるで私が英雄かなにかのようである。
ミコトを含め私のことをよく知る面々が笑いをこらえているのが分かる。やかましいわ!
「さてそれでは報酬だが、まずはこれをやろう」
そう言って龍神が投げ渡してきたのは二つの指輪だ。
「それは亜空間リングという、アイテムボックスのようなモノだ」
「ほほう」
指に付けて念じると中のモノが分かると言うのでやってみると、どうやら元が元老院達だった素材が入っているようだ。
確かにこれは普通に渡せないだろう。
「そして二つ目。ハクアお前には攻法殿全ての閲覧許可を出す」
うーん。微妙……。いや、良いんだよ気になるものなんていくらでもあるから良いんだけど、もうここ出てくし何より───。
「そして同時に、攻法殿全ての許可を出した事で、お前の罪を許そう」
龍神の言葉に周りがザワつく。
バレてるーー!
そう、実は私は攻法殿の一部の閲覧許可しか出てないが、こっそりと全ての物に目を通しているのだ。
その成果が、心龍召喚や本当の契約、そしてあのミコトの強制進化に繋がる訳だが、やはりあそこまで大々的に使えばバレてもおかしくなかった。
いやでも使わなきゃ死んでたし。なんもツッコミ受けないからバレてないかと思ってたのに。
「な、なんの事かは分からないけどありがたく受け取るよ。にゃはははは……」
汗がダラダラ流れる。
うん。皆からの視線が痛い。なんなのかねそのまたやったのかみたいな視線は! 心外だよ全く。
「後は宝物殿からお前の好きな物を一つ持ち出す許可をだそう」
おっ、これは素直に嬉しいかも。龍神の持ってる宝ならさぞいい物があるだろう。
「そして最後に」
「えっ?」
龍神の言葉にミコトを含めおばあちゃん以外の全員が素でびっくりしている。どうやら打ち合わせになかった展開らしい。
そして龍神はそのまま横に立っていたミコトの手を取り───投げた。
なにしてんのこいつ!?
読んで頂きありがとうございます。
ハクアの事を応援しても良いよって方は評価、感想、レビューとかどれでもしてくれると嬉しいです!




