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最弱♀ミニゴブリンに転生、寿命30日から始まる神の箱庭~吸収能力と進化で最弱からの成り上がり~  作者: リーズン
英雄育成計画

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何者なのですか

『なら……あげましょうか。貴女が言うそのチートスキルを』


 口をついて出たその言葉は、シルフィンの本心でもあった。


 思い出すのは昨日の事、ヘグメスの館からギルドに移動したハクアは、その足でヘグメスに捕らえられていた獣人達の元へ向かった。

 ハクアが着いた時、助け出された獣人はヘグメスや、研究者達が自分の親、兄弟、友をまるで玩具のように扱う様を見てきた。

 それ故、助け出され自由になった今、その怒りと憎悪をヘグメス達に向けるのは当然の結果だった。


 ハクアとてその気持ちはわかった。だが、それでもハクアは彼等を止めた。

 助け出してくれたのがハクアだという事は彼等も理解していた。だからこそ手荒な真似こそしないが、助け出した恩人に暴言や怒りの感情をぶつけてしまう程には、彼等の憎しみは深かった。


 それでもハクアは言った。


「気持ちもわかる。想いもわかる。その憎しみも怒りも当然だ。けれど、だからこそあんた達まで……あんな奴らと同じにならないでくれよ。……頼むよ」


 本人はただ言葉を尽くして説得しようとしただけだったのだろう。

 ──だが、誰よりも泣きそうな顔で、誰よりも辛そうな顔で、誰よりもボロボロになったその姿で、自分達を助け出した少女のその姿は、なんの力も持たない幼子のようで、怒りと憎悪に燃える獣人達に理性を取り戻させるには十分だった。


 唯一、その本人だけがいきなり静まった獣人達に首を傾げて、全く分かっていなかったのが、またハクアらしいと思わせる出来事だった。


 そして、転生してからの短い期間で、ハクアはかなりの成果を上げている。それを踏まえれば、ハクアの言うチートスキルの一つ位は与えても問題は無いはずだ。

 その考えがシルフィンにその言葉を言わせたのだった。


 そんなシルフィンの言葉に驚きながら、その真意を確かめるようにじっと顔を見詰めるハクア。

 だが、何を思ったのかすぐに鼻で笑うと「いらねえよ。バーカ」とシルフィンに舌を出しながら言い放った。


 ピキリと額に青筋を浮かべながら、それでも自分を精一杯に落ち着かせたシルフィンは、努めて冷静に言葉を選び声を出す。


『ちょっとは空気を読みなさい! 今のはどう考えても感謝する場面でしょうに!』


 否、全く落ち着いても冷静にもなれておらず、取り繕うことすら出来ていなかった。

 そんなシルフィンをうざったそうに手で払いハクアは言葉を続ける。


「人に面白おかしいスキル付けた奴の言葉なんか信用出来るかバーカバーカ。今更なんの制約も無しにくれるとか言われたって怪しさしか感じんわ」


『相変わらず本っ当に失礼ですね貴女は……』


 握りこぶしをプルプルと震わせながら、この後頭部を思い切り殴ってやろうか? そんな事を考えていると、ハクアは「それに……」と続けた。


「お前、(モンスター)なんかにそんな物渡して大丈夫なのか?」


『──っ!?』


 それは口にした本人であるシルフィンも考えた事だ。

 確かに過去何度か、この世界に降り立った後の人間に、功績としてスキルを授けた事はある。だが、それはあくまでも人間に……だ。

 ハクアが元人間、今も人に害を為す存在ではないとはいえ、モンスターにスキルを与えてどうなるかは、スキルを与える本人のシルフィンにも確かな事は言えなかった。

 その事を目の前の少女に見透かされた気がして、シルフィンは思わず言葉に詰まってしまった。


「まあ、色々言っても今更そんなもん要らないってのは本音だけどな」


 転生の際に選べるスキル、授かるスキルは確かに規格外と言ってもいい性能のものが多い。

 だが、それも個人の資質が大きく物を言う。人が人生をそれだけにかけて到達しうる、出来たかもしれない資質と能力。


 それが転生の際に選べるスキル。


 呆れる程の時間を費やし、折れずに努力を情熱を持ち続る。それをただ選んだだけで修得出来るとなれば正にチート(イカサマ)と呼ぶに相応しい。


 だが、ハクアはそれを知って尚そんなものは不要と言い切った。


 その誘惑がどれ程魅力的か、数々の力に溺れてきた人間を、幾度となく見てきたシルフィンはその言葉に少なからず衝撃を受けた。


「それを持っていれば確かに優位には立てるだろうね。身体も勝手に動いてくれるし、魔法だっていちいち思考しなくても制御出来る。でも、それでなんとかなるほどこの世界甘く無いのは知ってるしね」


 嫌という程、そう言いながら笑うハクアの言葉をシルフィンは黙って聞き続ける。


「スキルがあればある程度以上の事は出来る。けど、本当の意味でそれを使いこなせる経験値がなけりゃ、そんなもん宝の持ち腐れだ。【暴喰】も似たようなものではあるのけど、それはまあ、ご愛嬌って事で」


『大丈夫ですよ。【暴喰】はスキルの経験値を得る能力ですからね。転生時に渡すスキルと違って余程の相手からでない限りは、いきなり上位スキルとはいきませんから。それに貴女はスキルの訓練だけはマメなようですからね』


 シルフィンは知っている。ハクアが訓練の時間以外でもスキルや魔力操作の訓練を行っている事を──。

 勉強中、仕事中、食事の最中、休憩中、それこそ寝ている最中や今話している時でさえ、二十四時間何かしらの訓練を自分に課している。

 だからこそ、不自然な点(・・・・・)はあるがハクアは格上相手に今まで生き残ってきたのだ。


「さあ、なんの事か知らんね。さてと、私はそろそろ寝るわ。ドクターストップどころかゴットなメイドからストップかかってるからね。早く寝とかないと何言われるかわからん」


『え、ええ、そうですね』


「見事に振られましたね」


『──っ!? テ、テア様!?』


 部屋へ戻るハクアを見送り、さて自分も帰ろうかと考える背中に、不意に声を掛けられ思わず上擦った声を上げるシルフィン。

 そんなシルフィンに声をかけたテアは苦笑しながら隣に移動する。


『い、いつから居たんですか?』


「貴女がスキルの事を言い出した辺りですよ」


『結構前からじゃないですか!?』


「それにしても、随分と危ない橋を渡ろうとしましたね。まあ、白亜さんなら受けるとは思っていませんでしたが、仮にそうなった場合は止めるのに苦労しましたよ」


 ハクアならああ言うだろう。そうは思っていたが、もしハクアにとってシルフィンがなんとも思わない相手なら、ハクアは迷わずスキルを受け取っていた。

 そうなれば幾ら自分とて説得には苦労しただろうし、何よりも自分からあんな事を言う程、なんだかんだとお互いの事を気に入っているのだろうと、テアは微笑ましい気持ちになっていた。


『それは、まあ。ですがハクアが実際にそれほどの成果を上げているのも確かですから』


「そうですね。まあ、その礼については地球の食材やスパイスでも渡せば喜びますよ」


『それはそうでしょが。テア様も欲しいだけですよね』


「あれば助かりますね」


 隠そうともしない言葉に若干呆れながら、シルフィンはテアの横顔をじっと見詰め、少しの逡巡の後、意を決してシルフィンは前から思っていた、そして今回の事で決定的となった疑問をテアに問い掛ける。


『テア様。あの子はハクアは何者なのですか』


「随分と抽象的な質問ですね」


『はぐらかさないで下さい。ハクアの戦闘センス、あれが対人間だけならばまだ分かります。ですがあの子は異形に対しても、時折予めわかっているかのような動き……いえ、経験した事があるかのような動きをする。それにスキルや魔法についてもです』


「それはあの子の努力の成果でしょう。それに戦闘に関しても同じです。地球でもそれなりに訓練は積んでいましたし、異業種に付いてはダイブ型VRゲームの影響もありますからね」


『確かにそれもあるでしょうが……この世界に来てからの訓練だけで、あそこまでスキルも魔法も使いこなせるものではないはずです。それに決定的なのは──』


「少し待ちなさいシルフィン。興奮しすぎですよ。昔から貴女は興奮すると視野が狭くなるのは相変わらずですね」


「ミギャース!?」


 シルフィンを窘めながらテアが指をパチンっと鳴らす。その瞬間、何かが弾ける音が鳴り、何処か遠くの方からハクアの悲鳴が木霊した。

 その声にビクッと身体を震わせるシルフィンに、テアはバルコニーに落ちた何かを拾ってみせる。


『これはハクアの【暴喰獣】?』


 テアが見せたものはハクアのスキルによって作られた【暴喰獣】の掌サイズの蝿だった。だが、それもすぐに魔力となって空中に霧散してしまう。


「私が居る事に気が付いていたのでしょうね。自分が退散して私達だけにすれば、制約の隙を突いて、普段聞けない会話を聞けると思って盗聴していたのでしょう」


『い、何時の間に……』


「本当に油断も隙も無い子ですね。まあ、思いがけず自分の話になって気配が漏れたのは、相変わらず詰めが甘いというか白亜さんらしいですが」


 女神である自分を出し抜くハクアもハクアだが、それに慣れた様子で対処するテアに対しても乾いた笑いが漏れる。

 しかし当の本人は気にした様子も無く、シルフィンに真剣な顔を向けた。


「率直に言えば分からないというのが本音です。確かに私達も訓練を施し、あの子自身も二十四時間全てを使ってスキルか魔法の訓練をしている。しかしそれでも、貴女の言った通りあの子の成長スピードは異常です。それに昨日のタイプキメラとの戦いの事もあります」


『はい。あの戦い、不自然な点が幾つもありました。まず【照魔鏡】なんてスキルは私も知りません。全てのスキルが私の管理下にある訳ではないですし、個人の資質に合わせて新たなスキルが顕現するのはよくある事でもあります』


「ええ、勇者のギフトがその最たる例ですね」


 コクリと頷きシルフィンは自分の考えを更に続ける。


『なのにあの子はあの戦闘中、スキルが顕現する前にスキルを使おうとし、それに応えるようにスキルも現れた。それにあの技』


「羽々鬼離……ですね」


『そうです。鬼人族が使う流派、鬼刃流の技。ハクアは未だに鬼刃流の使い手と戦った事も無ければ鬼人との戦闘もありません。なのにあの子は、実際に羽々鬼離を使ってみせた』


「ええ、あれには私も驚きましたよ。鬼力を使うのに一番適しているあれは、その内教える予定でしたがまさかあの場面で使うとは……。まあ、本人もなんとなくで使ったとしか言っていませんでしたが」


『……有り得ると思いますか?』


「偶然同じ流派の名前と、同じ名前の同じ効果の技をたまたま使ったと言うのであれば」


『そんな事……』


「ええ、有り得ませんね。たしかにあの子には秘密があるのでしょうね。しかも本人さえ自覚していない……いえ、覚えていないような何かが」


『本人でさえですか?』


「ええ、今までも時折、初めての技とは思えない完成度の技を使う事が何度もありました。まるで初めから知っていて、思い出したかのように。それにラインとの一戦、あれも途方も無い経験値からくる動きです。ですが、地球での経験、この世界での経験、私達の課した訓練を足してもあれ程の動きが出来る訳がありません」


『そう……ですね。ではあの子はなんなんでしょう?』


「分かりません」


 結果的にどれ程話をしても最初の結論に戻る。


 即ちハクアは何者か?


 だが、その答えをシルフィンは疎か、テアですら持ち合わせてはいない。

 互いに沈黙が訪れる中、テアが先に口を開いた。


「地球では私達の力にもかなりの制限が掛かります。力を無くしているなら尚更に……ですが、一度あの子の事を調べた事がありました」


 テアの前にハクアが現れたのは、ハクアの姉が同じ水転流を学ぶ瑠璃と澪に妹だと紹介した時だ。

 そしてそれを瑠璃から聞いた瑠璃の父親が、念の為とハクアの事を調べた事があった。

 なぜならハクアの姉には、その時まで妹という存在は周囲に一切知られていなかった。

 だが、結果としてはハクアの事は何も分からなかったらしい。どんなに手を尽くしても瑠璃と澪の前に現れた、六歳以前の記録が全くといっていい程出てこなかったからだ。


『全く……ですか?』


「ええ、全くです。ですが、その話を聞いて私が調べた時には、不自然な所が何も無い程普通の経歴が出てきました」


『どういう事ですか?』


「あの子の姉が用意したんですよ。本人からもそう聞きましたしね。何よりも先に友達を作らせたかったけど、こんなに早く調べられるとは思っていなかった。と、笑いながら改めて調べていた私の元に資料を持って言いに来ましたよ」


『それでどうしたんですか?』


「そこで終わりました。あの子の姉は私も信用していましたし、何よりもあの子自身、初めて会った時は何も出来ない子でしたから、安全だと考えました」


『何も出来ないって……子供なら当然なのでは?』


「いえ、あの子は初め、喋る事すら満足に出来ていませんでした」


『会話ではなくて、喋る事をですか?』


「ええ、親に閉じ込められていたと後から聞きましたが。それにあの子の姉もよく言っていました。【私が集大成の結晶だとすれば、この子は私達(・・)の希望。何も知らず、何も持っていない白紙の子。だからこそ可能性が詰まっている】とね」


『白紙の子……』


「ええ、未だにその意味を理解しているとは言い難いですが、あの子が可能性の塊というのは、いやでも理解出来ますしね」


『そうですね。しかし、姉ですか……他の家族は──』


「居ません」


 シルフィンの呟きに被せるような答え。

 そのテアの瞳には、増悪の感情が籠っている。


「あの子の家族は姉だけでした。父親は私も知りませんし、アレは母親とは言いませんよ。何せアレが白亜さんの前に現れたのは、姉の葬式の日にあの子を殺そうとした時のたった一度だけですから」


『──っ!?』


「ですから、私達はアレとの繋がりになる白亜さんの過去は知らないんですよ」


 そう……冷たく言い放つようなその言葉以降、テアが口を開く事は無かった。

ハクア「耳が超痛い……の……」

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