流石! 流石土属性! やっぱり良いね土属性!
「え~、無いわ~」
私は目の前に居座る爛れ竜を見ながらそう呟く。
そもそもドラゴンゾンビとか、RPGの中盤以降に出てくる中ボスないしボス手前くらいの山場じゃん。それをこんな序盤で出すとかセンス無いわ~。八つ当たりだとは解ってるけどきっと駄女神のせいに違いない!
そんな決めつけをした私は仕方なくステータスだけでも調べてみる。
見かけ倒しの可能性もあるしね!!
【鑑定士】スキル成功
腐毒竜
レベル:50
HP:5000/5000
MP:2150/2150
物攻:1000
物防:1000
魔攻:4500
魔防:3550
敏捷:500
知恵:40
器用:1005
運 :50
スキル:【突進】【毒ブレス】【腐敗の息】【腐毒体】【腐毒爪】【腐毒弾】【回復逆転】【竜力】【光弱点】
【腐毒体】
効果:体から常に腐毒を生成し、触れた物全てを腐らせ毒で溶かす。魔法付与されている武器でも一瞬で溶かすほど強力。物理軽減、魔法減。
「うわ~」
えげつない。本当にえげつない。
調べて分かった事は物理が弱く、魔法が強いという事。しかし、ステータス的に物理が弱くても【腐毒体】というスキルが弱点を全てカバーしてる。
あのドロドロに爛れたような皮膚は腐毒で出来ており、物魔両方の攻撃を阻み弱点である光属性も通さない。
また、腐毒竜に物理攻撃を仕掛けてもこれまたあの体の腐毒が、本体に届く前に全てを腐らせ、毒によって瞬時に溶解させてしまうのだ。
その為、あの腐毒を突破しないと物理攻撃が通じず、腐毒をどうにかしようにも今度は高い魔法防御と腐毒に阻まれてしまう。
出来るのは例え僅かでも魔法でチクチクと削るだけかな。めんどくせぇー。辛うじて回復魔法掛ければなんとかなるかもだけど、私の回復力では中々期待出来ない。うーむ困った。
ヌルに手伝って貰う事も考えはしたが、威力のある魔法はまだ使えず、物理攻撃が主体になるであろうヌルでは危険と判断して、この場所で待っていて貰う事にした。
しかし、こいつはどっちだろう?
本で読んだ事だが、ダンジョンとはダンジョンコアに魔力が貯まる事で迷宮化した物をいう。
コアの大きさはその土地や作成者の魔力によって違うが、最初の大きさが出来上がるダンジョンの大きさをと難易度を決め、そのコアに永い年月が経ち魔力が満ちると、コアがダンジョンを生成するのだ。
ダンジョンの階層の多さはそのままダンジョンの難易度になる。
階層が少ないダンジョンはモンスターも弱く、階層の多いダンジョンはモンスターも強いのだ。それなのになぜ10層という少ない階層にも拘わらずここまで強いモンスターが居るか。
それは単純にガダルがこのダンジョンを掌握して、本来ならダンジョンの力で作り出すモンスターを、外から引き入れる事で戦力を増やしているからなのだ。
しかもそのモンスターは侵略者という扱いになる為ダンジョンの魔力も溜まり、私がモンスターを倒すと更に魔力は高まっていく。という寸法なのだ。
戦っても戦わなくても相手に有利な状態になるとか……やる気無くなるわー。
本当にヤになるわ〜。唯一の救いは龍種じゃなくて竜種って事だけどね。ステータス見るにそろそろ至る寸前だったんじゃない? まっ、何を考えてもしょうがないか。やるしか無いもんなー。
しかし、ならば何故私がそんな事を気にするのかというと、ダンジョン産のモンスターなら宝箱がドロップする可能性があるからだ。
なんでもダンジョン産のモンスターはダンジョン内の魔力を蓄積していく事で強くなり、倒されるとその蓄えた魔力分の宝箱になる事があるそうだ。
まあ、ゲームと同じで強いヤツ程良い物が貰えるんだけど、私まだ1回も見てないんだよねー。物欲センサーの感度高すぎるのかしら?
私や澪は出ないけど瑠璃は出やすいんだよなー。アイツ装備とかどうでも良いから。そう考えるとアリシアも出やすそうだな?
他は……うん。皆センサー強そうだな。あー見えて装備関係になるとコロも目の色変わるからなー。
「……しょうがない。行くかぁ〜」
いつまでもここでウダウダしている訳にもいかないので仕方が無く覚悟を決める。決して助けが来るのを待ってる方が身の危険を感じるからではない! 断じて無い! 無いからな!
良く分からない自己弁護をしながら、生唾をゴクリと飲み一人腐毒竜の居る部屋へと足を踏み入れる。その瞬間、今まで動かなかった腐毒竜の顔がグリンッと動き私を捕捉する。
そしてゆっくりと立ち上がると……。
「GAAAAAA!」
ちょっと待って! 今までと違う! 君外国産なの!? 確実に咆哮がローマ字表記だよね!?
そんな出会い頭からの咆哮を上げた腐毒竜は、挨拶と言わんばかりに【腐毒弾】を私に向かい放ってくる。
放たれた弾は八つ、その全てを躱すのは不可能だと判断した私は【オルト】を使いクイックドロウでその内の真ん中四つを撃ち落とし、身を投げ出すように弾丸の後を追うように飛び込み、撃ち落とした空間を潜り抜ける。
転がるように着地すると後ろでは丁度【腐毒弾】が壁に着弾してジュっ! と、音を立てながら壁を溶かしている。
恐るべき事にダンジョンの修復機能を以てしても【腐毒弾】で、溶かしたところは修復されず未だに溶かし続けているようだ。しかも、靴の先も触れてしまったのか見事に溶かされている。
あれ食らったら一瞬で溶けるな。しかもこれ、広がってる!?
魔法阻害の効果も効いているのか威力はかなり減衰していた。これは思ったよりもやばいかも知れない。と、思いながら一番貫通力のある弾岩で腐毒竜の攻撃を避けながら、こちらの攻撃を加えていく。
試しにほかの属性も使ってみたが、やはり腐毒に阻まれ中には届く前に威力がほとんど無くなったものまであった。そんな中で弾岩はダメージこそ小さいもののある程度一定のダメージを与えていた。
流石! 流石土属性! やっぱり良いね土属性!
腐毒竜の攻撃は単調な物が多く【毒ブレス】は私には効かず【腐敗の息】は効果範囲外に逃れる事で防げている。
【突進】も強力なのはやはり腐毒なので、スピードが無いこいつの攻撃なら簡単に避ける事が出来た。因みに【腐毒爪】は腐毒が爪の形になるだけのもので同じく私のスピードなら避けられる。
互いに決め手のないまま戦闘が続き戦闘は膠着し始める。
しかし決定的に私に不利な事がある。それは腐毒がフロアを侵食し始め、私の回避場所がだんだん無くなって来た事だ。
そして、何度となく繰り返した回避だが遂に回避した場所にも腐毒が迫り、私の靴をジュっ! と溶かす音が聞こえる。
「ちっ! しまっ!」
思わずそこを見てしまった私の決定的な隙を狙ったかの様に【突進】を繰り出す腐毒竜。大きくバックステップして【結界】を足場になんとか回避しようとするも完全には躱しきれない。
くっ、完全には避けられない!?
タダでくれてやるか! と、腕に【魔力装甲】を纏い。腐毒竜が私を喰らう為に大きく開けている口に向かい思い切り拳を叩き付ける。
少しでもダメージくらいやがれ!
スローになる景色の中、そんな気持ちで繰り出した攻撃はゆっくりと腐毒竜に近づいて行く。
そして……ビシャっ! と、音を立てながら腐毒竜の頬が裂けました。
「あれ?」
溶けてないよ? なんで?
予想外の事態に思考が停止してしまい腐毒の池に着地する。しかし、靴は溶けども私自身はまったく溶ける気配が無い。
何故か腐毒竜も攻撃せずに私の事を見詰めている。その目は何故か私の事を責めているように見える。
まさか?
【腐敗】
効果:相手を腐らせる状態異常をさす。
あー、と。つまりは最初から腐敗も毒も私には効かなかったって事か。て、事は……。
正面を見て優しく微笑む。
何故か腐毒竜が怯えているように感じるのは気の所為だろう。
「さて、覚悟して貰おうか?」




