甘い!
ダンッ! ダンッ! ダンッ!
引き金を引く動きに連動して銃声が鳴り響く。
銃口から飛び出した弾丸は私の狙い通りの弾道を描きながら、迫り来るオークの眉間を貫いていく。
もうずいぶん前から何十、何百と繰り返した攻撃は、弾丸が飛び出す毎にオークの命を刈り取る致死の一撃と化していた。
しかし何も私は本当に弾丸を撃ち込んでいる訳ではない。
今は【オルト】に圧縮と無属性のマガジンを入れ、土魔法を圧縮して弾丸ならぬ弾岩を作り、それを更に風魔法で勢いを付けて飛ばしているだけだ。要は出店のコルク銃の凶悪な物を思い浮かべてくれれば良い。
無属性のマガジンは純粋な魔力を攻撃に転換、威力を向上させる物だが、他の属性マガジンとは違い私の制御次第では、属性を自前で付加する事も出来る汎用性があるのだ。
因みに属性マガジンは発射速度、消費魔力、攻撃力と無属性よりも特化している為威力が高くなっている。その代わりセットした物以外の属性は普通に魔法として使うだけで【オルト】の恩恵は受けられない。
私の魔法でコイツらを確実に葬ろうとすると、どうしても魔力消費がバカにならないからね。
本来なら土属性マガジンをセットすれば自分の制御部分が無くなり、行使するのは風魔法だけになり楽なのだが、敵がどこから来るか分からないのに自分の攻撃手段を制限するのはよろしくない。
なので汎用性があり全ての魔法を補助出来る無属性マガジン。
少ない魔力消費で高い攻撃力を実現出来る圧縮マガジンを選択したのだ。制御機構などはある程度マガジンを入れなくても【オルト】自身の機構に付いてるからね。
しかしそんな致死の一撃を以てしても多勢に無勢。どれ程上手くやった所で数による圧力は容赦無く私を攻め立てる。
今も私の銃弾を仲間を盾にする事で潜り抜けて来た数匹のオークが迫り来る。
その内の一体。突出して出て来たオークは大盾を構えたまま私に突進してくる。
盾技の【シールドバッシュ】だ。
スモールシールドなどの攻撃ならいなす事も受ける事も可能な技だが、大盾で行われれば車に跳ねられる程の衝撃になる。
そんな物を受ける事が出来るほど私は強くない。なのでこの攻撃は避け一択なのだがそう簡単な話ではない。
これを後ろに避け続けても相手はそのまま当たるまで突進を続けるだけ、左右どちらかに避けても大盾を構えて視界を塞いだオークの後ろに続く別の個体からの攻撃が飛んで来るのだ。
そこで私は【跳躍】のスキルを存分に生かし、後ろでも左右でもなく上に避ける事を選択する。
飛び上がり避ける私の事を驚いたように見詰める大盾のオーク。
それはそうだろう。このままのスピードで突き進めば私の真下を走り抜ける事になるのだから。このスピードを緩めた所で止まるのは私の真下、そうなれば私はこいつを思い切り踏み砕けば良いだけだ。
しかし相手も見事な連携を見せる。
真上に飛んだ私を確認した瞬間、大盾のオークの後ろからいきなりスピードを上げて飛び上がり、三匹のオークが前と左右の三方向から同時に私を狙う。
それは驚きはしたものの最初からある程度予測もしていたであろう完璧な動きだった。
左右のオークは槍。前から来るオークは拳による攻撃だ。しかも目の前のオークはハイオーク、どうやらコイツがこの小隊のリーダーだろう。
急な動きで繰り出そうとしている攻撃は、互いに空中に居るにも拘わらず私の芯を捉えるような完璧な一撃だ。ただのオークならともかくハイオークの完璧な一撃ともなれば私のダメージも大きな物になる。
それに加えて左右からの槍の攻撃も突進していたスピードを生かした威力のある突きだ。これを全て喰らえば私は立て直す事も出来ずにオークに蹂躙されるだろう。
【思考加速】のスキルを使いながらそう分析する私は、慌てる事無く【オルト】を使い、風魔法ウインドブラストを圧縮した攻撃を左右のオークに放つ。
圧縮された魔法はオークに当たると、そこを起点に全力のハンマーで叩いたような衝撃と音を伴って、空中という逃げ場の無い場所に居るオークを吹き飛ばし、壁に激突させ絶命させる。
そして風魔法を使った影響で私の体は少し浮き、それだけで目の前のハイオークの繰り出そうとする攻撃は芯を捉える事が出来なくなる。
その動揺を見てとった私は、体を倒し独楽のように縦の回転をしながら、体全体の力を鞭のようにしならせた足に全て集約し、武技【剛脚】を使いハイオークの脳天に強烈な一撃を叩き込む。
ゴギャッ! と、致命的な音を鳴らしたハイオークは、そのまま自らが飛び越えて来た下を走る大盾のオークの真上から砲弾のような勢いでぶち当たり、オークの首の骨をゴキッ! と、折りながら二匹仲良く絶命した。
しかし、襲撃はそれだけでは終わらなかった。更にその後ろから体勢を崩す私にもう一匹の隠れていたオークが飛び掛かって来たのだ。
空中で体勢を崩した私にはこの攻撃を避ける術は無い。それをわかっているオークの顔にも勝利の確信と、その後の蹂躙を望む歓喜の表情が浮かぶ。
しかし、それは普通ならの話だ。
私は【結界】を使い、空中に足場を作り三角跳びの要領で体勢を整えオークを迎え撃つ。
歓喜の表情が驚愕に染まりながらも攻撃を繰り出して来たのは評価に値するが、動揺から繰り出された一撃はなんの工夫も体勢すら整えられていない状態で繰り出された、ただの拳打だった。
私はその拳打の腕を取ると前に向かう力の流れを縦に変える。
するとオークの体は前のめりになり真下に向かい勢いを付けて行く。そんなオークに更に力を加えると、数倍に引き上げられたスピードはオークの体を急速に地面へと近付け、脳天から地面に突き刺さる結果となる。
流石と言うべきかそれでも死なないオークに、真上から振り下ろすような一撃を加え絶命させると、白打を大きなハンマーに変え、地獄門の鎖で持ち手を掴み力任せにその場で回転して振り回す。
そして鎖を伝い魔力を流しハンマーに描いた魔法陣の機能を発動すると、私の魔力に反応したハンマーの片側の面からジェットのような風が吹き荒れ、回転のスピードは一気にトップスピードになって、どんどんと鎖の距離を伸ばしていく。
そして不運にもそのハンマーの餌食になるオーク達。
風の吹き荒れている反対の面に打撃されたオークは、ハンマーのもう一つの機能である打撃面に施された魔法陣の効果により、打撃される度に爆発が起こり体を爆散させていく。
そしてそのハンマーの勢いを止めようハンマーを掻い潜り、鎖を掴もうと近付くオークは鎖で切り裂かれる。
何故鎖で切り裂くなんて真似が出来るのか?
それもひとえに【オルト】のお陰だ。
この銃は手に持った状態で使えば勿論十全にその力を発揮するが、実は持ち歩いているだけでも効果がある。
それプラス、幾らかとはいえ成長した私の魔力をコントロールする技術を使い、鎖に魔力を纏わせ相手に当たる部分を極限まで薄く、鋭くする事で魔力を刃のようにしているのだ。
この技術自体は実は存在している。
元は武器に魔力や気を纏わせ攻撃力を上げるシンプルな物だが、鈍器に纏わせても相手が切れる訳ではないのに、何故刀や剣などの切れ味が上がるのか?
それを不思議に思い調べてみた結果が、刃に添うように形を変える魔力の存在だった。
剣に魔力を纏わせる際、無意識にだが私達は魔力で刃を作っていたのだ。それを意識してやれば、例えば手刀でも物を切る事が可能だという事に気が付いた。
しかし、イメージは出来ても刃の無い物に魔力だけで刃を作るのは意外に難しく、刃が出来ても強度が足らないというのが現状だった。
実際他の皆もやってみたが成功者はゼロ。が、私はモンスターの特徴である魔力をそのまま使う特性と【オルト】を使う事で無理矢理成立させたのが今のこの状況なのだ。
鎖の範囲に居た数十体を切り裂いた所でオークがこちらに寄って来なくなり、遠くからオークメイジや弓を構えたオークが攻撃の準備をしているのが見える。
甘い!
私は回転の勢いを消さないままに角度を付けて、ハンマー投げの要領でハンマーをメイジ達の方へと投げ飛ばす。そして当然鎖に繋がれた私もその勢いに釣られハンマーと共に飛び上がる。
実際はタイミングよく自分も飛んで勢いを消さないようにはしてるけどね。
空中に文字通り投げ出された私は丁度良い所で体を縦に回転させる。すると鎖も私の後を追い縦の回転を始め、ハンマーもそれに追随して行く。
そして、ハンマーが地面スレスレを通り過ぎた所で風を起こしてスピードを上げ、一回転すると勢いのままにメイジ達が居る待機場所をハンマーで強襲する。
「うぅぅらぁぁっ!」
声を上げ引っ張られそうになる体を無理矢理押さえながら、ハンマーを叩き付けると爆発の魔法陣が同時に発動してドガァァァア! と、まるで大規模魔法攻撃のような爆発を起こした。
ハクア「こんな無双ゲーム展開を待っていた!」




