人形如きに苦戦するとは──
カーチスカの攻撃を回避出来ないと悟ったエレオノは、目をやられないよう閉じながら【魔闘技】と【闘気】を全開にして防御を高めると、何とかカーチスカの攻撃を持ちこたえようと身を縮め衝撃に備える。
しかし、轟音が鳴り響く中幾ら待ってもエレオノの身体に衝撃は来なかった。不思議に思いながら目をそっと開けると、ヘルの後ろ姿がエレオノの視界に映った。
「何とか間に合いましたね」
ヘルは【結界】と、その身体を使いカーチスカの攻撃を何とか受けきっていた。しかし、カーチスカの攻撃は凄まじくヘルの【魔道鋼殻】を持ってしてもダメージは大きく膝を突いてしまうほどだった。
そんなヘルに向いカーチスカは更なる追撃を掛けようと、もう一度先と同じ攻撃を放とうとする。だが、その攻撃は空から飛来したフレイムブラストにより中断された。
「ちっ!」
舌打ちと共に魔法を避けたカーチスカ。
だが、その避けた先の地面からは先端の尖った石の槍が襲い掛かる。しかし、カーチスカは風魔法で自身を浮かせ石槍を避けると、鞭を振るいその石槍を根本から切断する。
同時にもう一本の鞭で石槍を掴み、上空を飛ぶ魔法を放った人物──アリシアとアクアにその槍を投げ付ける。
いきなりの攻撃に焦りはしたものの、アクアは素早く飛ぶのを止め、重力による落下で石槍を避けると、再び羽を動かし滑空しながらエレオノ達に近付いて来る。
「エレオノ遅くなりました」
「お待たせゴブ」
「ハクア達は?」
「マスターと澪は後からです。足の早い我々が先行して帰って来ました」
「わかった」
それだけ聞いたエレオノは簡単に今の状況を説明する。
とはいえ言う事はルリがフロストの代わりを務めてる! の一言だ。
それだけで状況を理解したヘルは、こちらに向かって来るヘル達を見付けて合流して来たクーをコロの援護に回し、それと同時にヘルが傷付いた戦闘服を【魔創】のスキルや回復系スキルで修復する。
そしてエレオノは「ガーゴイルは空中戦が出来る私とアクアが引き受けます」と、言うヘルの言葉にガーゴイルの相手を任せ。
当初の計画通りアリシア、エレオノでカーチスカと戦う事になったのだった。
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ヘル達が帰還した事で自由になったクーはコロと二人で敵の対処に当たる。
当初の計画では、HPが無く回復の要らないクーとヘルで組む予定だったが、敵の勢力に飛行型のモンスターが居た為、急遽編成を変え空中戦闘が出来る二人にガーゴイルを任せ、コロと二人フードの男を見据える。
「コロ、あやつとやってみてどうじゃった?」
「……ボク的には魔法も厄介ではあるけど、それ以上にあの身体能力の方が厄介かな」
コロの言う通りフードの男の筋肉はオーガのように膨れ上がっている。
この世界ではステータスに敏捷の項目も在るため、普通ならば発達した筋肉は行動が阻害されてしまうが、体の大きな者もステータスさえあればひたすら速い者が居る。
早く言ってしまえばこの世界では恐竜でも、アクションゲーム並の速さで行動出来るのだ。
大きさ=脅威度と言う簡単な目安にもなる。目の前に居るローブの男は正にそのタイプであり、大型モンスター並の力と動物のような俊敏性に加え、多種多様な魔法とデバフまで使いこなしていた。
「少しやりあった感じだと、あの目と体は別々で動いてるみたいかな? 魔法はあの目が撃ってるみたい」
「了解じゃ」
それだけ言うと、コロは向かって来た火球を切り裂き接近していく。
再び接近してくるコロに向い、ローブの男は剣技【乱れ撃ち】の構えを取る。だがその攻撃を放つ直前、コロの後ろからクーの放ったダークボールが、コロを追い抜きフードの男の目の前で弾けた。
すると弾けたダークボールはそのまま黒い霧のようになり、ローブの男の視界からコロの姿を隠す。
それでも、慌てた様子も無くフードの男はバックステップでコロとの距離を取り、霧の中から何かが出て来るように霧が動いた瞬間、剣技【乱れ撃ち】を放った。
だが、霧の中から現れ【乱れ撃ち】が攻撃したのは、クーがダークボールの直ぐ後に放ったダークネスアローだった。
空中でダークネスアローと【乱れ撃ち】が激突し、双方の攻撃が相殺し合う。
【乱れ撃ち】を放った直後の硬直したタイミングで、ダークボールの霧に紛れ、後ろに回り込んだコロは斧技【蒼天破斬】を大剣で放ち一撃を狙う。
しかしその攻撃が当たる瞬間、ローブの男の腹から覗く目が妖しく紅く光り輝く。
その瞬間、コロは金縛りにあったかの如く一瞬動きを阻害され、ローブの男はその一瞬の硬直の隙を突き剣が霞む程の速さでコロへと迫る。
しかし、その攻撃はいつの間にか近付いて来ていたクーの【魔法拳】の一撃で、軌道を逸らされコロの肩を浅く切り裂くに留まった。
そして、コロは振り抜いた直後にフードの男の顔を蹴技【豪脚】で蹴り抜きその反動を堪える事無く、推進力にして吹き飛び何とか間合から抜け出す。
しかし、コロの【豪脚】で首が中程で引きちぎれ皮で垂れ下がっているだけにも拘わらず、その直後にまたも目が紅く光りコロに向かい六つの火球が迫る。
反動で吹き飛びながらも【疾風刃】で、火球を四つ迄は切り裂き、同時にクーが一つだけ何とか間に合い叩き落とす事に成功したが、二つ目は迎撃が間に合わず無情にもコロへと向かう。
避けられないと判断したコロは咄嗟に大剣を盾に火球を受け止めるが、その衝撃に空中に在った体は更に吹き飛ばされ、地面をバウンドしながら転がり地面に跡を残して起き上がらない。
「コロ!」
コロが魔法を喰らい吹き飛ばされた事でローブの男から目を離してしまうクー。
その一瞬に巨体とは思えぬ俊敏性でクーとの間合いを一気に詰め、その突進力をそのまま力に変えた剣技【パワースイング】がクーを襲う。
それに気が付いたクーは咄嗟に【結界】による防御を完成させ、攻撃に間に合わせた。──が、パリィイ! と、硬質な何かが砕けるような音と共に【結界】はいとも簡単に砕けてしまう。
だがそれも想定の内だった。
クーはその僅かな隙に何とか体と剣との隙間に杖を潜り込ませる。
だが、その僅かな抵抗もバキッ! という破壊音と同時に【パワースイング】がクーの体の左側を撃ち据えコロの方へと吹き飛ばす。
攻撃が杖に当たる瞬間に衝撃を逃がすように自ら跳んだクーだったが、その余りの威力に左腕は一瞬で粉々に砕けてしまった。
「クー……大丈……夫?」
「コロこそ平気か? しかし、つくづく弱さを実感するのじゃ。まさか、人形如きに苦戦するとは──」
【高速再生】で腕を修復しつつローブの男を見るクーは、自嘲気味に呟く。コロとしては何とも言えず、いつものように苦笑いで返す。
「しかし、それぞれは強力じゃが同時には動かんようじゃな」
「うん。それに魔法で視界を塞いだ時は、反応が少し遅れたけど。ボクが顔を攻撃した時はすぐに攻撃してきたかな」
「うむ。どうやら本体はあの目で間違いないようじゃな。恐らくは人間の身体に寄生している感じなのじゃろう。頭が無くても行動出来る事から体を攻撃しても、あの目をどうにかせん限り戦闘は終わらんのじゃ」
「だね」
話している最中にもローブの男は、皮だけで繋がっていた首を完全に引きちぎり捨て去っていた。そして、またも目が紅く光り今度は辺りを霧が包み込もうとする。
クーは霧が辺りを全て包み込む前に地面へとダークネスブラストを放ち、その爆風で辺りの霧を散らして行く。
だが、そのせいで位置が判明してしまったクーに向い、ローブの男の剣技【閃光】が放たれる。しかしその瞬間、クーは確かにその口をニィ! と、歪め嗤うのをローブの男は見た。
それもその筈、このローブの男の攻撃はクーが自らを囮にする事で攻撃するように仕向けたものだったからだ。そして、そのタイミングでコロは、クーの事を攻撃してきたローブの男を横から大剣技【烈空】を放ち攻撃する。
「えっ?」
「なんじゃと!?」
しかし、コロの【烈空】がローブの男に当たると思われた瞬間、技の発動中にも拘わらず目が紅く光り【結界】とウインドカッターの二つで威力を殺し、コロの【烈空】を防ぎきる。
その今までと違う対応に多少動揺しながらも、クーは後ろに飛びダークネスブラストを二つ放つ。
その内の一つは、ローブの男の顔の脇を掠め後方の空に飛んでいく。もう一つは迫るローブの男の、正面に当たりその爆風でお互いの距離を無理矢理稼ぐ。
(まさか、同時に使えたとは油断したのじゃ)
至近距離の爆風に晒され、至る所に傷を負いながらも見詰める先では、同じく吹き飛んだローブの男に向い、コロが大剣技を駆使しながらローブの男と切り結んでいる。
(さて、どうやって攻略するかじゃな? に、しても気持ち悪い奴じゃ)
新しくは・み・る・な日常と言う白亜、澪、瑠璃を主軸に置いた小説始めました。
不定期な更新になりますが良かったら二つ合わせてお楽しみ下さい。
ゴブかみのシリーズタグで行けます




