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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第413話 マギアの杖で村人全員を生き返らせてみた

 大きな馬車を引っ張って飛ぶ、ヒッポの背中に乗っているマグノリアが、俺に大声で叫んだ。


「聖女様! 見てください!」


 扉を開けて先を見ると、先で煙が上がっているのが見える。


「マグノリア! ヒッポを降ろして!」


「はい」


 高度を墜とし、煙が上がっている場所を見た。その村は建物が損壊し、人々が倒れているのが見える。俺達の馬車は、その村から離れた所に降りた。


「ネメシスに襲われた?」


「かもしれません」


「マグノリアはヒッポの上で待機! リンクシルがマグノリアの護衛して! 私とアンナが偵察に出る! シーファーレンは馬車に結界を!」


「「「「「はい!」」」」」


 俺とアンナが馬車を降り、急いで村へと向かう。


「酷い」


 建物が崩壊し、人があちこちに倒れていた。俺達が村を見て回ると、アンナが言う。


「人の気配だ。こっちだ!」


「行く前に、身体強化!」


 二人の体に身体強化をかけ、人の気配がするという方向に向かって走る。瓦礫の前に立ったアンナが、俺に振り向いて行った。


「聖女! この下だ!」


「埋まってるって事?」


「どうやらそうらしい」


「二人じゃ無理。とにかく村中を回って、安全確保が最優先!」


「わかった」


 それから二人で村中を回ってみるが、ネメシスの残瘴はあるものの本体や魔物がいる気配はなかった。


「アンナ」


 ピィィィィィ! 人の耳に聞こえない笛を慣らすと、ヒッポが飛んできて皆を連れて来る。


「みんな! この下に、人がいる。手伝って」


「「「「「はい」」」」」


 シーファーレンの魔法で大物を動かしつつ、皆で、瓦礫を手作業で除去していった。床が見えて来て、そこに扉がでてくる。


「明けるよ! せーの!」


 その扉の隙間に棒を突っ込み、グイっと上げて開く。アンナとリンクシルが、扉を持ち上げる。


「開いた!」


 リンクシルが叫び、俺が暗がりに向けて声をかける。


「誰かいますか!?」


 すると一瞬、子供の顔が見えたが、抱きかかえられるようにして消えた。


「怪しいものじゃありません。助けに来ました」


 するとようやく、大人の顔が見えた。俺の顔を見て、ぞろぞろと村人がハシゴを登って上がって来た。


「大丈夫ですか?」


「ば、バケモノが……村を襲ったのです。逃げたのですが、埋まって出れなくなってしまいまして」


 俺達は目を合わせる。やはり、ネメシスがここに降りたんだ。


「けが人は?」


「体調を崩した人が何人かいます」


 アンナと俺が梯子を下りていくと、広めの地下室になっていた。そこに寝ている人のところに行って、俺が魔法を発動する。


「エリア・メギス・ヒール」


 ぱあああああ! と光り輝いて、寝込んだ人らに治癒魔法が降り注いだ。


「な、治った」

「具合が良くなった……」

「足が……動く」


「とにかく、皆さん地上へ出ましょう」


「「「はい」」」


 皆で外に出ると、先に出た人達が、凄惨な村の惨状を見て呆然としていた。泣き叫んでいる人もいて、どうやら家族が死んでしまったらしい。時間が立っているので、蘇生はもう無理だった。


「もっと、早く来ていればよかった」


「聖女様のせいではありません!」


 ソフィアが、声を強めて言う。


「わかってる。分ってるけど……こんなに死んじゃうなんて」


 流石に、これは応えた。世界を救おうなんて思ってるわけじゃないけど、こんな無抵抗な人達が無残に殺されているのを見て、だんだんと自分に腹が立ってくる。


 そこで、シーファーレンが何かに気が付いたように言う。


「そうです! 聖女様! あの杖!」


「ああ。領主にもらった杖?」


「あれを試してみてはいかがでしょうか?」


「あれで、何を?」


「蘇生です」


「この状態で?」


 するとシーファーレンが、村人に尋ねた。


「村長! バケモノが来たのは、いつごろでしょうか?」


「半日ほど前です」


「聖女様! マギアの杖が、正真正銘女神フォルトゥーナ様の物であれば! 成し得るかもしれません! まだ、半日であれば、魂はまだこのあたりに彷徨っています」


「わかった」


 そうして、ルイプイがシルクに包まれたマギアの杖とやらを持ってきた。今、殺されたならまだしも、半日以上たっている状態で、死体に痛みも出てきている。その死体が、生き返るとは到底思えなかった。ジェーバが、ふぁさっ! と、シルクの包みを取り去ると、ルイプイの腕からマギアの杖が飛び出して、俺の側にふわふわと浮き始めた。


「えっ? 浮いてる?」


「そ、そのようです」


 まるで、俺が持ち主だとでも言わんばかりに、俺の側にそれは浮いていた。まるで、俺の分身のようにに指示を待っているようだった。


「不思議……」

 

 スッと手を伸ばすと、杖の方から俺の手の中に入って来た。握った途端、青い大きな石のような物が、真っ青に輝き出した。


「魔法使いが使えないって言ってたよね」


「ですが、聖女様はお使いになれるのでは?」


 もう、やってみるしかなかった。村人たちが泣き叫んでおり、この世の終わりのような悲痛な声が、俺にそう思わせた。


「では、やってみる」


 その杖を、更に頭上へと掲げたそのときだった。


 ぶわああああ! と、頭の中に、魔法のロジックみたいなものが叩きこまれた。その膨大な量に驚き、杖を話そうとしたが手が開かずに、しっかりと握り込まれたまま。


「な、ななな!!」


「どうされました! 聖女様!」


「えっと……」


 俺が知りもしない魔法陣の形が、頭の中にどんどん沸いて来る。今まで感覚でやってた魔法だったが、それらが理路整然と俺の脳中に並んだ。


「わかったかも……」


 シーファーレンが、目を輝かせている。


「聖女様……どうか……奇跡を……」


「使者の魂が黄泉の国に行ってしまう前に、我が福音を持って元の場所へ戻れ」


 勝手に口から出た言葉で、その青い光がバシュウ! と、村中を覆い隠すほどに広がった。


「メギス・ホーリーレザレクション!」


 ドーム状に青い光が村を覆い、その中が青い光で満たされて行く。するとふわふわと魂のような物が、それぞれの体に戻っていくのが見えた。


「パーフェクトヒール!」


 シャアアアアアン! と真っ青になり一瞬で光が閉じる。


 シーンとしていた。


 どうか?


 すると……あちこちで、亡くなっていた人たちが、目を開け始めたのだった。ちぎれた体が元に戻り、傷が全て癒えて起き上がる。


「パパ! パパ!」

「あなた!」

「おお、おまえ!」

「おばあちゃん!」

「あら、お爺さん、あたしゃあ……」


 皆が唖然としている。俺も。


 シーファーレンが、跪いて俺に祈りを捧げると、ソフィア、ミリィ、スティーリア、そしてみんなが、跪いて俺に祈りをささげた。見ていた村人たちも、同じ様に祈りをささげ始める。


 村の老人が言った。


「フォルトゥーナ様が……ご降臨なされた……」

「フォルトゥーナ様!」

「フォルトゥーナ様!」


 いや私の名前は、フラル・エルチ・バナギアらしいんだけどね。フォルトゥーナではない。


と思う……たぶん。


「とにかく! 村の皆さんの無事を確認して!」


 村人たちが、村中から集まってきて言う。


「一人たりとも欠けておりません。フォルトゥーナ様」


「えっと、違うというかなんというか。でもよかった! 治って!」


「「「「「「ありがとうございます!」」」」」


「とにかく! みんな力を合わせて、村を復興させてください! 私達は行きます!」


「せめて、お、お礼を! このまま行かせるわけには……」


だが俺は、そこで逆に言う。


「アデルナ。領主にもらった金貨を一袋頂戴」


「はい」


 ふくよかなアデルナおばさまが、金貨を一袋、俺に渡してくれた。それを手に取り、俺は村人に言う。


「みんな! ならんで!」


 列になったので、俺は最初の人から順番に、金貨を渡していく。


「はいこれ」


「こ、このような大金を!」


「いや、暮らすのに必要でしょ」


「ありがとうございます!」


 そうして順番に村人に配って、最後の一人に金貨を渡した。これで、みんなに配られた形になる。


「最後に、町長!」


「はい」


 俺は袋に入っている残りを、その老人に渡した。


「独り占めしてはいけません。独り占めすれば、天罰が下ると心にとめておいてください。復興のため、このお金を使うように。困っている人がいたら、このお金で助けるように。それともう一つ、領主には、このお金をもらった事は絶対に秘密です。税として持って行かれますから。」


「ひ、独り占めなどいたしませぬ! ありがとうございます! ありがとうございます!」


「みんなもいいですね! 誰にも言ってはいけません」


「「「「はーい」」」」


「では、私達は、あのバケモノを倒すために追います」


「「「「は、ははー!!」」」」


 皆で馬車に乗り込み、高く舞い上がる。村の人間達が生き返って、俺の罪の意識は全て払拭された。


 シーファーレンが言う。


「聖女様……私たちも……女神フォルトゥーナ様が降臨されたのだと思いました」


 皆が頷く。


「なわけないじゃない。私は私」


「はい……」


 みんなの眼差しが、さっきとは違うような気がして、ケツの座りが悪い感じがするのだった。

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