第392話 女だらけの湯煙風呂会議 後編
男女平等。そんな言葉を聞いた事が無いみんなが、目を丸くしている。それどころか俺は、女性上位の世界にしたいと言ったのだ。驚くのも無理はない。
ウェステートが聞いて来る。
「……聖女様。女性上位、そんな事が可能なのでしょうか?」
「私、さっき言ったのが答え。私の代で終わらせたい。ならそれは必須だよ」
「はい」
「そして、その未来をけん引していくのが、この十三人」
それには、元奴隷として売られそうになった、ジェーバとルイプイが驚く。
「あたしらがでしょうか?」
「そんな、御立派な事は……」
俺は首を振る。
「もうすでに、メイドとして働けてるよね。それだけ、あなた達は能力が高い。奴隷の男が、執事になるのはそんなに容易じゃない。だけど、二人はそこから這い上がって来たでしょ」
「は、はい」
「えっと、はい」
「この十三人には意味がある。そうだよね、ソフィア」
「はい。夢を見ました。この十三人で戦う夢を……」
するとマグノリアが聞いて来る。
「十四人では?」
「ん?」
「ソフィア様、アンナ様、シーファーレン様、ミリィ様、スティーリア様、ヴァイオレット様、アデルナ様、ウェステート様、リンクシル様、マロエ様、アグマリナ様、ジェーバとルイプイ、そしてわたし……。もしかして、私が違うんじゃ……」
するとソフィアが首をふりながら言う。
「違うわマグノリア。……実は、私は夢では、十三使徒には出てこないのです」
「えっ! そんな! ソフィア様が含まれないなんて」
「でも、そうなのです」
「でも! 聖女様も入れれば十五人ですよね……」
「実は……」
「はい」
「聖女様も含まれません。夢の十三人には出てきません」
皆がざわついている。そりゃそうだ、俺もソフィアからそれを聞いた時は違和感を感じたし、驚いた。俺を含めるなら、十五人なはずだから。それをあえてソフィアは十三人と言った。
バシャ。
あらら、ミリィとスティーリアとヴァイオレットが、お湯から立ち上がって言う。
「そんな……」
「どうして?」
「どういうことですか」
なんと言う役得なんだろう。聖女の俺に対しては、みーんなが無防備で隠しもしない。ああ……こんな時間が未来永劫続きますように。
そして、シーファーレンが話を変わる。
「ある程度の推測はたっています」
「それは、なんですか?」
「皆さん、驚かれるかもしれませんが、聖女と思しき人は……」
皆が息をのむ。シーファーレンの言葉に集中した。俺は、皆の裸に集中した。
「聖女様は間違いなく、ソフィア様です」
「えっ!」
「ソフィア様が聖女?」
「だって、そんな……」
皆が驚いた顔で、俺を気遣うように見る。
「それは聖女は、予知夢を見るからです。そしてソフィア様が、予知夢を見ているのです」
「でも! 聖女様は聖女様です!」
裸のミリィが、めっちゃシーファーレンに詰め寄る。
「いいんだよ、気を使わなくて。わたしも、ソフィアが聖女だと思ってるから」
「聖女様! それは、どういうことなんです?」
だがそこで、ずっと腕を組んで黙っていたアンナが口を開いた。
「たぶん、この十三の使徒は、本来はソフィア様の為にあったということだ」
「えっ……」
皆がざわつくが、これは思い付きの話では無かった。この話は、ソフィアと俺、アンナと、シーファーレンが考えついた答えだ。だいぶ前に考えに考えた末、導き出された答えだった。今までの一連の流れから考えると、これが一番辻褄があうと言う事になったのだ。
「で、では……聖女様が……聖女様でないとすれば……」
聖女専属メイドとして従ってきた、ミリィが不安そうな顔で胸の前に手を組んで言う。
「そうです。それは、そんなはずはありません」
スティーリアも、聖女の使いとして走って来た。だから動揺するのも無理はない。
だが、またシーファーレンが落ち着いた顔で言う。
「聖女様。フラル・エルチ・バナギアさまは……その出生も不明で、人から生まれた記録がありませんでした」
一気にざわついた。だが俺は、皆に手を上げて制する。
「でも、生きてるけどね。出生の秘密は私も知らない」
「「「「「「はい」」」」」」
みんなもそれを聞いて、少し落ち着く。そして、シーファーレンが続けた。
「恐らく。聖女様は……聖女様の正体は……」
皆が息をのむ。
「お使い様です」
皆がキョトンとした。そこでアデルナが驚いた顔で聞く。
「お使い様とは? 聞いた事が御座いません」
「女神フォルトゥーナ様の、お使い様ということです」
「「「「「「「「「ええええええ!」」」」」」」」」
皆が仰天している。驚いて立ち上がったりして、全員の麗しい裸が俺の目に優しく映った。
か、かわええ……。全員並ばせて、チューしてえ。
「お使い様とは、聖女様の事を言うのではないのですか?」
シーファーレンが首を振る。
「いえ、聖女様とはあくまでも、女神フォルトゥーナの加護を受けた者であるとされています。私の推測で申し訳ないのですが、遠い遠い過去からのネメシスとの戦いに決着をつける為、女神フォルトゥーナ様がお使い様を誕生させてくださった。そう考えたのです」
賢者がめっちゃ思慮深い顔で言うと、皆が神妙な顔になる。でも、ミリィが食い下がった。
「な、なぜそんな」
「トリアングルム連合国での、ネメシスとの戦闘で……私もアンナ様もソフィア様も見ました。聖女様の人外のお力を、驚異の戦闘力を人ならざるお力をふるわれた。古い文献からも、そんな事実はないです」
ソフィアの予知夢と、シーファーレンの賢者としての考察、そしてトリアングルムでの出来事を経て、皆で結論づけた事なのだ。そして俺の転生の事はまだアンナにもソフィアにも言っていないが、異世界から転生してきている事実からも、俺自身、俺が人から生まれたものではないと思ったのだ。
そこで、マロエが聞いて来る。
「そ、それで、これからはどうされるのですか?」
それを聞いて、アンナがさらりと言う。
「何も変わらないぞ」
「なにも変わらない?」
「わたしの剣は、聖女フラルのためにしかふらない」
ソフィアも言う。
「私の能力もすべて、聖女様のためにしか使いません」
シーファーレンも頷いた。
「今までと全く変わりません。この推察から考えても、今の世代は邪神ネメシスに勝つ、千載一遇のチャンスだと思われます。この代で決着付けたいのだという、女神フォルトゥーナの御意思だと思うのです。だから我々は、このまま聖女様について行くだけです」
そう言うと、皆が安心したようだった。俺が最後に言う。
「大事な事はね私もソフィアも含めた私達、女が世界を作るってこと。そしてここに集まった十三人が、それを創成するのに最も相応しいということ。ソフィアの夢ではね、そう言う未来だと示している」
「出来るのでしょうか?」
誰ともなく出た言葉。だけど俺が念を押すように手を差し出して言う。
「やろう。出来るよ」
すると皆が俺の差し出した手に、自分の手を重ねてきた。皆も体が暖まってきて、かなり体がピンク色に色づいている。そのおかげで、艶めかしい、みんなのポッチがハッキリと見える。
やっぱ、今後の会議は、ずっと風呂場でやろう。
そう、心に誓うのだった。




