第391話 女だらけの湯煙風呂会議 前編
いやいや。もうね、男連中で東スルデン神国の問題は解決してほしい。ここまで段取りとりそろえて、東スルデン神国と和平が結べないとなれば、無能なんじゃないのって思う。
ザブーン。
みーんなで湯船につかりながら、十三使徒としての未来について話そうと思う。もちろん、まだ若いルイプイやジェーバ、マグノリアも含めて。
タオルを巻いてソフィアが歩いて来る。あんなに会えなくて、恋しくて、恋焦がれ続けたソフィアがタオル一枚で歩いてる。俺がもし男だったら、もはやガツン! となっていただろう。
美人。とはこう言う事だ。なんというか、俺の顔は整いすぎていて、作り物なんじゃないかと思える。もちろん前世の俺なら、俺自身に飛びついていただろうが。だけどソフィアのちょっとつり上がった目、ワインレッドの優雅な髪の毛が凄く似合ってる。こっちのほうがずっといい。
ええなあ。
大好物だ。こんな美しい女性の、裸にタオル一枚の姿。
「しあわせ……」
「お風呂は気持ちいいですか?」
すると俺の隣りから、ウェステートが微笑みながら言う。若いけど、はちきれんばかりの笑顔が素敵。タオルを縁に置いて、顎までかわいくお湯につかっている。
「気持ちいい」
「ふふ。聖女様、今ごろ、スルデンは氷漬けですよ」
「お気の毒」
シーファーレンが、こちらに近づく。あの柔らか大きな乳房が、ぷかぷかとお湯に浮かんでいる。
……い、いただきます。
「ゴクリ」
いかん。ここに来たのは、秘密の話をする為だ。俺は、のぼせないようにザブッとお湯から出て、湯船の縁に腰かけた。すると女達が、突然ため息をついた。
「「「「「はぁぁぁぁ」」」」」
「な、なになになに?」
するとソフィアが言う。
「聖女様は、美しすぎ過ぎるのです。その御身体も、神が作りたもうた均整の取れた造形美のようです。皆が、自分の体や顔にコンプレックスをもっているのですよ」
「えっ! みんなにコンプレックスあるの!?」
「「「「「「「あります!」」」」」」」
「うそ!」
びっくりした。マジで、それぞれにすっげえ良いのに。まあ……年配の、アデルナを覗いてはだけど。まあアデルナはアデルナで、ふくよかなお母さんって感じで、包容力がありそうな雰囲気だけど。
華奢すぎたり、胸が小さかったり、幼児体系だったりが気になってるのか? いやいや、ぜーんぶいいんだけど! それもぜーんぶ大好きなんですけど! シーファーレンのボイーンもいいが、それぞれに、ぜーんぶいいところだらけなんですけどぉ!
すると、ミリィが恥ずかしそうに言う。
「私は……背が低いので、もう少し背が欲しかったと言いますか……」
スティーリアが体を隠しつつ言う。
「私はやせぎすですし。もう少し胸があればと」
そう言うとバイオレットが答える。
「それを言うなら私もですよ。書記ばかりしてて体を動かしてないから不格好です。アンナ様のように、鍛え上げられた体にあこがれるんです」
アンナが苦笑いしている。何も言わないが、アンナはあんがい可愛らしいものが好きなのだ。
それぞれに、自分の体の悩みなんかを打ち明けつつ、お互いがお互いを慰め合っている。
ああ……いい……。この光景が至福だった。
アデルナが、まるでお母さんのように言う。
「みなさん。もっと食べないといけませんねえ。聖女様のようになれませんよ」
シーファーレンが笑って言った。
「いえいえ。私が食べたら、太っちゃいますわ。それはそれで、悩みですのよ」
すリンクシルが自分の胸を見て言う。
「えー! シーファーレン様。それは贅沢というものです。私も……ほしいです」
すると、ほとんどの子が、うんうんと頷いていた。やはり胸はあったほうが嬉しいらしい。俺ならば、あっても無くてもいいと思うけど。そして、マグノリアが悲しそうな顔で言う。
「私の……胸も出るのでしょうか?」
それを聞いたマロエが言う。
「まだ、これからだよー!」
「そうそう」
なんだろう? めっちゃ連帯感がある。皆が気兼ねなく話が出来る雰囲気が出来ている。
ソフィアが言った。
「それでも、聖女様のお体は美しいです。お身体だけじゃないですけど」
「ははは」
ああ。俺が男だったらなあ。なんか、女としての体を褒めちぎられてもうれしくない。でもいい感じの連帯感。これなら、間違いなくここだけの話になる。
「じゃあ、いいかな」
「「「「「「「はい」」」」」」」
皆が俺の方を向いた。俺は体を隠しもせずに、湯船に腰かけながら言う。
「東スルデン神国、そして邪神ネメシス。目下の敵と真の敵、これらを追いこむ力がある事は分かった。そして私を中心に、国家が動く事も証明してみせた」
皆は黙ってうなずく。
「でもね。なんでこんなに、ネメシスに好き勝手やられたかわかる?」
ソフィアが言う。
「それは、ネメシスの力が凄いからではないでしょうか?」
「確かに、ネメシスの力は凄い。でもね、あれをあそこまで成長させたのは、この世界の男達なんだよ。権力争い、欲望、金、それらを血眼に求める男達が居たからなんだ」
「確かに、そこにつけ入れられたようですね」
「私が思うに、ネメシスの養分はね……」
皆が俺に釘付けだった。さっきまでは、裸のことで、きゃぴきゃぴ言ってたけど今は真剣だ。
「欲望だと思う」
「欲望ですか?」
そして俺は、シーファーレンに向かって言う。
「そうだよね。シーファーレン」
「そうです。なぜ、ネメシスがあれほどにも強くなってしまったのか? 欲望を喰らう悪魔だからです。特に欲望の強い、男性たちの影響で増長したのです」
「そうなんですね……」
「恐ろしい」
「そして……」
そこでシーファーレンが口をつぐむ。俺をチラリと見たので俺が促した。
「言っていいよ」
「世界が始まった遠い過去より、女神フォルトゥーナと邪神ネメシスの戦いは繰り返されてきたのです」
そこで、ミリィが手を上げた。
「はい、ミリィ」
う。手を上げたのに、うまくタオルで隠してる。ミリィの裸、見てぇぇぇ! それは……いいか……。
「その戦い、今まではどうだったのでしょうか?」
「ネメシスが勝ってきました」
一気にざわつく。
「か、勝てないのですか?」
「いえ。此度の戦いでそれが、がらりと変わったのです。それは、ソフィア様も良く知っている事です。トリアングルム連合国では、完全にネメシスを退けました」
「そうでした……」
「本来なら、あの国は蹂躙されていたでしょう」
「なぜ、状況が変わったのですか?」
「分らないのです。一つ言えることは、聖女様が現れた事です」
「今まではいなかった?」
「いえ、その年代ごとに聖女様はいましたが、ここまでの力はなかった」
「聖女様のお力……ということですか?」
「ネメシスは男の欲望を喰らう、ですが聖女様はフォルトゥーナの加護がかなり強い。どうやらそこで、過去とは違い均衡が破られたのだと思われます」
「なるほどです」
そして話は俺に戻る。
「なんで、私がそんなに力があるかは分からない。だけどね、それなら私の代で終わらせたい」
「「「「「「「「はい」」」」」」」
「でもね、完全に終わらせるなら、多分これをやらなくちゃならない」
「なんでしょうか?」
「男女平等。もしくは、女性上位の世界にする。じゃないと、またネメシスは力をつけて生まれてくる」
皆が絶句した。男女平等などあり得ず、女性が上位になる事などあり得ないからだ。その事を聞いた、女達は更に身を乗り出してくるのだった。その事で、裸がちらちら見えて俺は更に集中するのだった。




