表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第一章 聖女転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/406

第38話 女だらけの壮行会

 とうとうだ…。とうとうこの日が来た! 俺がコツコツと根回しをして、嫌いなイケメンやメタボのおっさんと話をつけ、ようやくこの日が来たのだ!


 合法的にソフィアに会う為に! 二人の恋心成就のために! ソフィアよ私は帰ってきた!


「では、お時間ですのでまいりましょう」


 俺の目の前でミリィが言う。ミリィは俺の身支度の直しをしてくれていたのだ。


「あ、はい」


「研修の朝に考え事ですか?」


「いや。第一歩がようやく踏み出せると思ったら嬉しくてね」


「私も聖女様の願いが叶ってうれしいです。これで女性に変革がもたらされるのですね?」


 いや、そんな事はどうでもいい。『俺の心の中では』ソフィアが主役だ! とにかく彼女に定期的に会える口実を作ったのだ。そして皆は俺のこの下心を全く知らないし、そもそもソフィアだって俺の気持ちを知らない。だが俺はやる! 


 ソフィアの恋人に俺はなる!


 そしてミリィ、こんな事をしたくらいで世界は何も変わらんよ!


「名目は陰で支える女性の勉強会だからね。これはほんの一滴。水面に小さな小石を放り投げたに過ぎない。でもこの国の女性達の為の大きな一歩。これをやる事にこぎつけただけでも大きいし、ゼロがイチになったって事かな」


「素晴らしいです」


 そう、俺とソフィアが恋人同士になるための第一歩。そして研修に向かう前の集合場所として、ルクスエリムが王城の舞踏会場を貸してくれた。俺とミリィが控室を出ると、スティーリアとヴァイオレットが待っていた。


「お待たせ」


「わあ…」


 ヴァイオレットが何故かため息をついている。


「やっぱりヴァイオレットさんもそうなりますか…」

「ですよねー。分かります」


 ミリィとスティーリアがウンウンと頷いていた。何でそうなるか分からん。


「あ、せ、聖女様! それでは、ご一緒させていただぎあぐ!」


 噛んだ。めっちゃ緊張してる? 大規模研修だもんねしかたないよね!


「ヴァイオレット。緊張しているみたいだけど大丈夫! 私も緊張しているから! とにかく力を合わせて研修を成功させましょう!」


 ……


 ミリィとスティーリアがなんか違う、って顔をしている。


「えっと、皆がいれば上手く行くよ!」


「まあそうですね! とにかく頑張りましょう」

「はい! お手伝いさせていただきます!」

「私も非力ながら頑張ります!」


 三人がやる気を出してくれた。王城の豪華な絨毯とシャンデリア、そして綺麗な装飾が施された窓枠に手摺。俺達の門出には相応しい場所だ。今なら騎士やメイドが周りに居ない。


「みんな! 手を出して!」


「は、はい。こうですか?」


 俺が手を出すとミリィが、同じように手を出した。


「違う違う。重ねて」


「こうですか?」


「そうそう、そして二人も」


「はい」

「は、はい!」


 四人で円陣を組む。俺はこれから何をするか説明した。


「私が、研修を成功させるぞ! って言ったら、この手を押し下げて、オーって大きな声で言うよ!」


 三人が分けも分からずに、俺が言うままに手を重ねた。


「初めての研修頑張ろうね。研修! 成功させるぞ!」


「「「「オーッ!!!!」」」」


 四人の声がそろい手を上げた。そしてその後に皆が顔を合わせる。


「なんか! すっごく気持ちよかったです!」

「本当ですね。なんですかこれ?」

「は、初めてやりました!」


「これは四人だけの秘密の合図かな」


「素敵です!」

「緊張がほぐれました」

「本当に!」


 そして俺達は、意気揚々と王城の廊下を舞踏会場に向かって歩いて行くのだった。舞踏会場に入ると、貴族の女性達が集まっておりざわざわとしている。俺達、四人が来た事で皆がこちらを向いた。


 俺はすぐさま会場内に目を走らせる。


 えーっと、いっぱい女がいるなあ…。どこだ? 彼女は?


 きょろきょろと探す。貴族の娘が母親を連れてきている人もおり、メイドを従えている者もいた。いっぱいいすぎて…あ!


 まずは子爵の娘のミステルを見かけた。するとそのそばに伯爵の娘アグマリナとマロエがいる。


 って事は…。いた!


 ソフィア! ソフィア・レーナ・マルレーン! いたぁぁぁぁぁ!


 だがソフィアは貴族の娘達とお話をしていて、こっちに気が付かない。俺は精一杯の気持ちをそちらの方に向けた。


 気づいて! 気づいて! 気づいて!


 するとチラリとこちらにソフィアの目が動いた。俺は大袈裟には手を上げずに、少しだけ控えめに手を上げてひらひらと振ってみる。 


 気づいて!


 するとソフィアは軽く微笑んで会釈をし、俺と同じように小さく手を上げて振り返した。


 やったぁぁぁぁ! ソフィアが気づいてくれたぁぁぁぁ! これで目標達成だぁぁぁ! いやいや…これからこれから。


 すると壇上へと王妃ブエナと娘のビクトレナが上がる。それだけで水をうったように静かになった。そしてブエナが会場全体に聞こえるように話し始める。


「皆様、お元気そうでなによりですわ。この研修へご参加くださると言う事で、私もうれしく思います。そして…あら? 主役はどこかしら?」


 ブエナがそう言うと、一斉に俺に視線が集まった。


「あら、聖女フラル。そんなところに居ないで、こちらに上がっていらっしゃって」


「はい」


 俺はブエナに手招きされて、壇上に上がるのだった。そしてそこから貴族の女達を見ると、感動がこみあげてくる。これほど躍る心で女達を見た事があるだろうか。

 

 俺は王妃に対して、カーテシーで挨拶をしてから皆に話を始める。


「皆様。お集まりいただきありがとうございます。この度の研修では、どんな事が学べるかを考えただけで心が高揚しております。そして本日ご参加いただいた皆様は、この国を支えて下さる方達だと確信しております。殿方の活躍を裏で支える為にも、知識は必要なのです。まずはこれが第一歩となります。そしてこれを支援していただいたブエナ王妃殿下に拍手を願いします。聡明なブエナ王妃殿下のお力添え無くして、これは実現できませんでした。本当にありがとうございます」


 すると貴族の娘と母とメイド達が盛大な拍手をブエナに送った。少し待つと拍手が収まって静まり返る。


「私はルクスエリム陛下とも、お約束をしました。議会のある日には、この女性会の皆様にも学んでいただくようにしましょうと。陛下は快くお許しいただき、私達はありがたくも学びの場を頂ける事になったのです。私はこれが必ず、ヒストリア王国を強くすると信じています。皆さんも是非、貴重なこの学びの場を活用いただき、新たな出会いを作っていただきたいと思います」


 一旦俺が言葉を切ると、盛大な拍手が起きる。あと…一応、誠に不本意ながら、アイツの名前を出しとくと、女達のテンションも上がるだろ…。嫌だけど。


「今回は、近衛騎士団長バレンティア卿の御実家の領を、研修場所とさせていただきました」


 バレンティアの名が上がっただけで、わあっと歓声が上がる。胸糞悪い。


「皆さん。いろいろなものを見て学び、世間を知り、何をしたらこの国がもっと良くなるのかを考えて参りましょう。私からは以上でございます」


 するとまた盛大な拍手が起きる。そして俺はブエナに礼をして、ブエナの少し後ろに下がった。


「というわけです。面白いでしょう? 聖女フラルって本当に変わってる。でも何か彼女の話を聞いていると、何かが出来そうな気にならない? 女性の力で国が強くなるなんて、夢物語のようですが、私はあながち間違いだとは思っていないの。皆さんのその想いが、この国を強くすると信じています。気を付けていってらっしゃい」


 すると静かに、全員がゆっくりと頭を下げた。ブエナの威厳に圧倒されているようだ。


「ではフラル」


「はい。それでは皆様! 馬車が待っております。少しの長旅となりますが、緊張などなさらずに気楽にまいりましょう」


 俺が話を締めてブエナに一礼し舞踏会場を出て行くと、後ろからぞろぞろと女達も出て来た。そして王宮の外に出ると、馬車の車列がずらりと並んでいるのだった。


 そして…いらないけど…。一応挨拶しとくか…


「これはバレンティア卿」


「聖女様。ご準備は出来ております」


「わかりました」


「そして、第一騎士団からも護衛の兵を借り受けております」


 するとバレンティアの後ろから、第一騎士団の副団長マイオールがやってきて俺に手を差し伸べる。もちろん俺はその手を取らない。


「聖女様。いつも騎士達をお守り下さりありがとうございます。今度は我々が命をかけてお守りいたしますので、貴族の女性達は大船に乗ったつもりでいてください」


「期待してます」


 別にそうでもないけど。


「それでは皆様! 馬車にお乗りください!」


 そうして無事に貴族の娘達が馬車に乗り込んでいくのだった。俺の馬車には、ソフィア…ではなく、ミリィとスティーリアとヴァイオレットが乗る。


 それでもいい! 俺はこの研修旅行で必ず何かをつかみ取るのだ!


 聖女になってからここまでの間、本当に長かった。俺は集大成とも言うべき、この研修に全てをかけようと思っている。特にソフィアに。俺のテンションは爆上がりするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ