第383話 聖女様御乱心
第四の災いになると、さらに町の活動に支障が出るような事をやる必要がある。エスカレートしていかなければ、意味がないから。軍事的な行動ではなく、あくまでも災いとして認識される必要があった。
密偵からの情報では、東スルデン神国聖都も警戒態勢にはいっているようで、次の災いに対しての対策を打っているのだとか。もちろん俺達は、その痕跡を残さないような策を用意していた。そこで用意したのが、いま馬車の後ろに吊り下げている箱だった。
「今回はネズミじゃないけどね」
俺の問いにソフィアが答える。
「これこそが、本当に災いとされるでしょう」
「どうなるか……」
シーファーレンは集中して、馬車の後部に向かって氷魔法をかけていた。東スルデン神国の聖都まで溶かすわけにはいかないからである。
それにしても、賢者の知恵というものは恐ろしいもんだ。なんでも、この七つの災いは、ある古代書物に本当に記されている事を解釈して、実現させたものなのだとか。
「そろそろ到着します」
真っ暗な空を飛ぶヒッポの馬車。しかも、敵の警戒を掻い潜るように全て黒にしてある。地上からはどんなに目を凝らしても、見つける事は出来ないだろう。アンナが、スッとロープを握り合図を待った。ロープは何本も出ていて、そのうちの一本を握っているのだ。
「宮殿の上に来ました」
ザッ! とアンナがロープをひいた。そして後ろの箱の下の蓋が開き、小さな氷粒が降り注いでいく。その後も、アンナが一つまた一つとロープをひき、小さな氷の粒が地表に降り注いでいった。
最後のロープを引っ張り、アンナが言う。
「終わりだ」
「ふう」
氷魔法をかけていたシーファーレンが、額の汗を拭いてため息をついた。
「お疲れさま」
「それでは、箱はどこかで燃やしてしまいましょう」
「あいよ」
そして俺達の馬車は、山中に降りて箱を切り離し、シーファーレンが火魔法で焼き払った。燃える箱を見つめながら、皆がホッと息をつく。
「あー、終わった」
「そうですわね」
「シーファーレンも、だいぶ魔力を使ったね」
「氷の粒を維持するのは疲れますわ。一塊なら楽ですのに」
「地表に落ちる頃には、水になっているって事だよね」
「あちこちに落ちました」
「そして朝日が昇れば?」
「それからが本当の効果となります」
そう。俺達は、幻覚を引き起こすトレントの木の実と、これまた幻覚をおこすブロッサムポイズンという花の種子からなる、強烈な幻覚剤を作り、氷の粒にして撒いたのだ。湿気があるうちは飛ばないが、日光にさらされると蒸発してそれらの幻覚剤が空中に蔓延していくだろう。
そしてシーファーレンが、馬車やヒッポに対して風魔法を吹きかけ、万が一にも幻覚剤が付かないように洗浄した。
「幻覚ってどんなだろう?」
「その人が一番怖いもの、またはその人が堕落してしまいそうなもの、その人の心が持つ闇に強く働きかけます」
こわっ!
「毒には毒を、のような感じですね」
ソフィアのいう通りだ。目には目を歯には歯を的な状態だった。
「これで。降参してくれると良いんだけど、もしくはヒストリアに言い寄って来ると良いなって思う。デビド軍の動きも気になるし、ズーラント帝国の動きも気になるし」
「ズーラントは、人質の引き取りで保釈金を沢山払ったんですけどね」
「うーん。なんかさ、東スルデン神国もズーラント帝国も、ネメシスや教団に踊らされているんだよね。ズーラントとの捕虜引き渡しの時は、まともな人達だったもん」
「そうですか……」
するとシーファーレンが言う。
「どちらの国も、恐らくは邪神が上層部にくいこんでいるのでしょう」
「ヒストリアもそうだったしね」
「はい」
要は、どの国も戦う意思なんかないという事なのかもしれない。ネメシスは王族周りに食い込んでくる事が多く、狙うのはいつも中枢だ。へたをすれば、どの国も被害者である可能性が高いという事だ。
「だからこそ、無血で戦争を終わらせたいんだけどね」
「そうですわね」
そこでアンナが言う。
「だが、全ての災いが終わっても、敵が折れなかった場合は?」
「その時は、総攻撃になっちゃうだろうね」
「そうならないように祈るばかりだ」
「そうだね」
下手をすればそのすきに、ズーラントが侵攻してくる可能性もある。もしくは、アルカナ共和国へ再び進軍をするかもしれない。だからこそ、このあたりで東スルデン神国に動きが出ないと困るのだ。
「とりあえず、かえって風呂に入ろう。ヴィレスタン城でウェステートが準備してくれてる」
「「「「はい」」」」
そして俺達は、ヒッポの馬車で飛びヴィレスタンへと飛んだのだった。
「お帰りなさいませ」
「ウェステートいつもありがとう」
「何をおっしゃいますか!」
なんて話している時だった。ポロリと俺の髪の毛から、雫が落ちる。
「えっ」
「あっ」
シーファーレンが慌てている。
「あれぇ……」
視界がぐわーんと歪む。
「せ、聖女様!」
なんか……変な感じ。
俺が屈みこむと、皆が俺の周りに集まって来た。
「あ、あははは。なんだろ、ああ、みんな可愛い」
「大変!」
「な、どうしたのぉ?」
シーファーレンが大きな声で言う。
「聖女様! 申し訳ございません!」
ぷしゃああああ! とシーファーレンの氷魔法が降り注ぎ、俺をコーティングしていく。
「ウェステートさん! お風呂は?」
「準備ができています!」
「うわあ。シーアーレーン冷たいよお。えへへへ」
なんだが物凄く、皆がいつもより可愛く見える。
「皆さんで担いでまいりますよ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
凍った俺は、皆に担がれて風呂場へと運ばれた。
湯気が立っていて温かそうだなあ……。
「そのまま放り込みます!」
「「「「「「はい!」」」」」」」
バッシャーン! と、修道服のままお湯に投げ込まれた。
ぶくぶくぶく。
サブーとお湯から出ると、皆が手招きをしているように見える。ソフィアが舌なめずりをしており、シーファーレンがおっぱいをぶるんぶるんさせている。皆が、俺をいやらしい目で見ているようだ。
そのまま、みんなの方に手をかざして進んでいくと、シーファーレンの水魔法の放水が俺を直撃した。
「うわっぷ」
しばらくそうしていたが、ようやく水流が止まり。俺はお湯にぷっかりと浮いていた。
シーファーレンが叫んでる。
「直ぐに聖女様の服を脱がせてしまいましょう!」
「「「「「「はい!」」」」」」」
俺が、えへらーって顔でみんなを見ていると、見る見るうちに俺は裸に向かれた。
「これで他の人は大丈夫ですが……」
皆が俺を心配そうに見てるけど、なんでなんだろう? どう考えても、誘ってるような顔してるよね。
裸の俺は、するりとソフィアにくっついてガバッと抱き着いた。
「聖女様?」
シーファーレンが言う。
「ソフィア様! 聖女様は正気ではないです」
「え、ええ……」
んん。良い匂い。俺はそのまま、ソフィアの首筋に唇を這わせる。
「あ……」
ソフィアが声を上げる。だけど、皆が裸の俺にしがみついて引っぺがされた。ソフィアはめっちゃ真っ赤な顔をしつつも、凄く幸せそうな表情を浮かべている。
すると、目の前に、シーファーレンの大きな胸があった。
いただきまーす!
バフッ!
やわらか! やっべえ! こりゃたまらん!
「聖女様ああ!」
シーファーレンが真っ赤になり、俺は他の子達から引っぺがされる。そのはずみで、俺はミリィの上にドサリと乗っかってしまった。
か、かわええ……。
ちゅっ。思わずおでこにチューをしてしまった。
「せ、聖女様……」
「ミリィのおでこかわいいねえ」
するとシーファーレンがいう。
「仕方がありません」
何処からともなく、するすると俺に蔦が伸びて来て、絡まり始めた。
「あれぇ……」
なんと、俺は裸のまま、シーファーレンの魔法ですまきにされてしまうのだった。緊縛された俺は、そのまま担がれて浴室を運び出される。
「私は解毒剤を作ります! 聖女様をどこかに固定しましょう」
「「「「「はい!」」」」」
そして俺はそのまま寝床に運ばれ、ベッドにがんじがらめに縛り付けられる。皆がめちゃくちゃ舌なめずりをしているようだが、俺は全くもってウエルカムだ。
なんなら、全員を一晩相手にしてやれる。
ベッドの周りを心配顔の聖女邸の面々が囲み、俺の上にばさりとシーツがかぶせられる。そして俺はそのまま一晩、めっちゃ興奮したまま夜を明かすのだった。




