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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第382話 敵国に走る動揺

 駐屯地では、聖女邸の面々が密室に籠り、次の災いの準備をしていた。密閉された部屋で、皆がしっかりと頭からフードをかぶり、鼻と口を何重にもした布で塞いでいる。コツコツと手で剥いたあるものを、箱に詰め込んでいるのである


 するとドアがノックされる。


 コンコン!


「あ! 開けないでください!」


「は!」


 詰め込んでいた箱の蓋を閉じ、俺が魔法の杖を掲げる。


「スプラッシュ」


 部屋に水しぶきが上がり、皆が濡れた。


「どうぞ」


「は!」


 入って来たのはマイオールだった。俺達の異様な姿を見て、少し面食らっているようだ。


「なんでしょう?」


「聖女様に、お客様です」


「はい」


 するとソフィアが言う。


「どうぞいってらしてください」


「じゃあ、みんなは休憩」


「「「「「はい」」」」」


 俺とアンナはフードを脱いで、口に巻いた布を取り去った。アンナを連れて部屋を出て歩き始めると、マイオールが俺に話しかけて来る。


「あれは、何をされているのです」


「ああ、次の準備です。動きが無ければ、更なる対策を施す予定です」


「そうなのですね」


 暑苦しいコイツにしては、冷静に話をしてくる。なかなか進展が無いので、兵達は待機を余儀なくされており、兵糧や前線の維持が負担になってきているのは分る。だが、マイオールの立場上、それを気にしているなどとは言えないのだろう。でも無駄な死傷者を出すよりは、俺はずっといいと思っていた。


 そして案内された部屋の扉を開けると、中には密偵が立っていた。


「これはこれは、聖女様。素晴らしい働きぶりでございますね」


「……ということは、何か進展がありましたか?」


「ご明察です」


 そんなもん。おまえが来たからには、何かあったと考えるのが普通だ。少しのおべっかを使うという事は、良い動きが出て来たという事だろう。


 俺が椅子に座ると、諜報がそのまま立っているので座るように勧める。


「失礼いたします」


「それで、どういうお知らせですか?」


 すると諜報は、俺の前に羊皮紙を広げてみせた。そこには、どうやら東スルデン地内の地図が記されているようだ。アルカナ共和国と東スルデン神国の国境を指さし、丸を書きながら俺に言った。


「このあたりに巣くっていた、東スルデン神国の軍が引きました」


 よっしゃ! あのハゲ入道! デヒドだっけ? どうやらアルカナから引いたらしい!


「そうですか。では、現状はどのように?」


「アルカナ共和国側は軍を引いておりませんが、緊張は解けたようです」


「それが良いです。敵の陽動かもしれませんし、気を緩めないのはいい判断ですね」


「その通りです」


「で、その消えた軍はどこに?」


「それが……行方を眩ませました」


 うわ。めっちゃ不気味。それはそれで、ヤバい感じもする。


「不穏ですね」


「いま、密偵が網を張り、あちこちを見張っております」


「そうですか」


 そして密偵はニヤリと笑う。


「それと、もうひとつ」


 恐らくはこちらが本題なのだろう。


「はい」


「聖女様の策でございますが、そろそろ影響が出始めたようでございます」


「そうですか。して、どのような?」


「王都では、呪いだという流言が流れております」


「狙い通りですね……」


「はい。流石にあの、赤い水は効いたようです。飲めないものだとし、生活用水を求めて争いが起きるほどになっているようです」


「のめるんですけどね。それで、聖都のトップはどんな動きを?」


「はい。まずは国民に騒がぬようにと御触れをだしました。これは敵の攻撃では無いと、必死に国民を抑えようとしています」


「なるほど。それだけ……ですか?」


 労力のわりに、それほど大きな問題にはなっていないのか? 


 だが密偵が首を振る。


「東スルデンの聖都から、兵士が前線に情報を持ち帰ったようです。家族が大変な事になっていると知り、浮足立っているようでございます」


「それでも動かない?」


「揺らいではきていると思われます」


「では、もう一押し?」


「はい、恐らくもう一押しで、砂上の棒は倒れるかと。ですが、敵の情報を全て掌握しているわけではございませんので、どのような動きに出るかは分かりません」


 まあ、言う通りだろうな。


 そして密偵がもう一カ所に指をさして言う。


「気になるのは、ここです」


「そこは?」


「東スルデン神国とズーラント帝国の国境ですね」


 俺とアンナがピクリとする。ズーラントを囲んでは、トリアングルム連合国が睨み、ヒストリア王国ではミラシオン伯爵の軍がにらみを利かせている。だが、東スルデン神国とズーラントの国境までは、こちらでどうこう出来るものでは無かった。


そして俺が、密偵に言う。


「デヒドの軍は……そこに出るかもしれません」


「あの、消えた軍がですか?」


「はい。充分に注意して偵察を続けてください」


「かしこまりました。聖女様がおっしゃるのであれば、その可能性は高いのでしょう」


「確証はありませんが」


 つうか、もう何か掴んでるんだろ? って思う。


「進言ありがとうございます。情報は、ここまでになります。次の策はもう?」


「次の準備は出来ています」


「恐ろしいですな。第四の災い、敵国への侵入はくれぐれもお気を付けください」


「はい」


「では、私はこれにて」


 密偵が部屋を出て行く。それと入れ替えに、マイオールが入ってきてお茶を運んできた。


 遅せえよ、もう終わったっちゅうの。メイドの真似事など出来ないなら、するなって感じ。


「もう行ってしまわれたのですね」


「用件はすみました」


「無駄になりました」


 俺とアンナが顔を合わせて言う。


「では、そのお茶を頂きましょう」


「そうですか!」


 そしてアンナも座り、二人でマイオールの入れたお茶を飲む。


 まっず。濃すぎん?

 

 俺もアンナも無口になってしまう。そこで俺がマイオールに言う。


「今度から、うちの子に煎れさせましょう」


 マイオールが汗をかきながら言う。


「ダメでございましたか?」


 ああ! 風味もへったくれもねえよ。ただ苦いだけのお湯だ!


「そうですね。やはりプロに任せた方がいいでしょう」


「申し訳ございません」


「フォルティス団長を、お呼びくださいますか?」


「は!」


 そして少し待っていると、マイオールがフォルティスを連れてきた。俺は、東スルデン神国の状況を伝え、第四の災いの後に敵に動きが出るかもしれないと伝える。フォルティスは、少しほっとしたような表情をして伝えてきた。


「兵の中には、攻め入ってしまいましょうと言う案も出ておりました。やはり敵地での、動きのない日々は兵士にも疲れが出ているようです。もちろん屈強な精鋭ですので、文句は言いませんがね。動きが出るのでしたら、こちらもやりようが御座います」


「ええ。お願いします」


 そして俺はフォルティスに、第四の災いの夜の日時を伝え、ふたたび準備のために密室に向かって帰っていくのだった。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 マイオールの空振りっぷりが可笑しい(*´ω`*)
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