第378話 厄災第二夜と身を清める為の風呂
第一夜の厄災、城ゴキブリ固めの効果も良く分からないままに、第二夜の厄災の準備を進めた。魔法薬を沢山持って、ピクニック感覚で東スルデン神国の聖都が見える山に来たのである。
今ここで、俺達は次の仕込みをやっていた。周辺の山という山にいる、野鳥や魔鳥の小鳥を次々にテイムしているのである。本来は生理現象のコントロールは難しいらしいのだが、ゼリスは貴族学校でレベルアップしたらしく、鳥たちを全てコントロールしきっていた。
だが夕方に差し掛かった時、ゼリスが言った。
「あの、聖女様。そろそろ限界かと、死ぬ鳥も出てしまいます」
「じゃ、いこうか」
そして俺達がヒッポの馬車に乗り込み、ざっと空へ飛び立つ。すると空が真っ黒になるほどの鳥の大群が、一緒に山を飛び上がった。チチチチチチ!と物凄い鳴き声が響く。
「すっごい数」
そしてゼリスが言う。
「もう我慢できないそうです」
「急ごう」
陽が沈み薄暗くなったところで、鳥たちが一斉に東スルデン神国の宮殿に降り立って行った。まだゴキブリの名残がとれないようで、真白だった城の一部だけが白く戻っていた。後はほとんど薄汚れていて、全て洗い流すのに時間がかかりそうだ。
「じゃ、いいよ」
「はい」
そして次の瞬間、鳥たちは一斉に、城で大量にウンチをし始めたのだった。
山で俺達が何をやっていたかというと、とにかく鳥たちに虫を食うようにさせて、フンをさせないようにしてたのだ。城では、溜まりに溜まった鳥の糞が降り注いでいる事だろう。
そしてシーファーレンが言う。
「鳥のフンの汚れって……とれませんのよね」
「そうそう」
前の世界でもそうだった。特別に洗剤を使わないと取りずらいのが鳥の糞。それが、東スルデン神国の城に大量に降り注いだのである。ゴキブリの汚れも取りきれてない上から、もっと取れない鳥の糞がコーティングされた。そしてゼリスがニッコリ笑って言う。
「聖女様! 鳥たちがスッキリしたみたいです!」
「んじゃ、可愛そうだし、皆を放してやって」
「はい」
ゼリスが使役をきると、小鳥たちは一斉に空に飛び上がる。薄暗い空が真っ暗になったと思ったら、一斉に鳥たちは山へと帰って行った。
「うわあ」
「また、城が見えなくなりましたね」
「笑える」
俺とシーファーレンとアンナは、苦笑いしながら東スルデンの城を見ている。そこでソフィアが言う。
「あ……」
俺達がソフィアを見る。
「どした?」
「この光景を見た気がします。汚れた城、そして笑うお三方」
それを聞いて、シーファーレンが言った。
「それはデジャブ。そして神託に通ずるものです」
「そうなのですか?」
「恐らく、今宵夢を見るでしょう」
「わかりました」
そして俺が、ソフィアの手を取って言う。
「夢を忘れないように、一緒に眠る事にしよう! そして朝一番に、ソフィアの夢を聞かせてほしい!」
「わかりました」
そして俺は皆に言う。
「ソフィアが気持ちよく寝れるように、風呂を用意してもらおう! ウェステートに言えばすぐだ!」
「わかりました!」
「そんなに、気を使っていただかなくても……」
「いや。ソフィアの夢には何かが隠されているからね。今までの流れで、とても重要だと分ったから!」
というのは、もちろん口実である。こんな悲惨な汚れ仕事をしているうちに、綺麗なものが見たくなってしまったのだ。ゴキブリに野鳥の糞害、いくら作戦とはいえ心が折れそう。そんな時は、この世で一番きれいなものに触れていたい。
ふふふ。なんて凄い口実だ!
俺達の馬車は大空を飛び、一度駐屯地に戻る。するとフォルティスが俺達の元へとやってきた。
「ご無事で何よりです」
「いや。とても安全な任務ですから。空から降りませんので」
「それでも、敵地への侵入はくれぐれも、お気を付けてください」
「わかりました」
「作戦の状況は?」
「第二夜も上手くいきました。そのうちに、陛下の諜報が情報を持ち帰るでしょう」
「は!」
「そして、今日は大事な神託がある日かもしれないのです。私達は一度、ヴィレスタン城に戻ります」
「なるほど」
「そこでうちの使用人たちなのですが…」
「ご安心ください。最後方に待機させております」
いやいや。野獣みたいな騎士達の中に置いて行けるわけねえだろ。
「彼女らも連れて戻ります」
「わかりました!」
「ではお願いします」
「は!」
そして俺達は、ヒッポの馬車を皆がいる最後方の砦へと向かわせる。俺が行くと皆が、急いで出て来て俺に声をかけて来た。可愛いったらありゃしない。
「聖女様!」
「ミリィ! 皆に支度させて! ソフィアに神託が下りるかもしれないから、今日はヴィレスタン城に行くよ」
「わかりました!」
ミリィ―が皆に通達しに行く。少し待っていると、皆が来たのでヒッポの馬車に乗り込むように言う。
そして俺が皆に伝えた。
「今日はウェステートに言って、お風呂を用意してもらおうと思う」
「「「「わあ!」」」」
やっぱり、女の子はこんな、風呂も無いむさくるしい砦は苦痛だったろう。皆の笑顔が見れただけで、俺はホッとしてしまうのだった。
「そして、着替えも用意してもらうから」
「「「「ありがとうございます!」」」」
可愛いなあ。
そしてヴィレスタンの城に到着すると、ウェステートが迎え入れてくれた。
「ウェステート、わがまま言うようだけど、皆がしばらくお風呂に入ってないんだ」
「それはそれは! 直ぐに準備させましょう!」
「おねがい!」
それを最も望んでいるのは、俺だけじゃなくマグノリアもシーファーレンもソフィアもだった。あんなおぞましい光景を見続けたら、たらいで体を拭くだけでは眠れるはずがない。ていうか、夢に見そうだ。
ゼリス……空恐ろしい子供になってしまった。やらせているのは俺だけど、あんなおぞましい嫌がらせ絶対無理。俺がやらせているとはいえ、少し可哀想にも思えて来る。ま、いいか。
そこで、俺はふと……気づいてしまった。
あれ? ゼリスってまだ、子供だよな……。まさか、一緒に風呂入るっていう?
その予想は当たる。一番の功労者であるゼリスを、皆が労わって風呂に入るように勧めたのだった。
ソフィアが言う。
「よろしいですよね? 聖女様」
「う、うん。そうだね! まだ子供だしね」
「よかったね。ゼリスちゃん」
「は、はい!」
めっちゃ赤くなってる。そしてなぜか、俺をめっちゃチラチラ見て来る。
こいつ……完全に面食いじゃん。俺が言うのもなんだけど、この中で一番整った顔と体をしているのは俺だった。俺としてはソフィアの方がいいと思うけど、皆が言うには俺が完璧らしい。コイツはそんな姿形をしている俺に、めっちゃ興味があるみたいなのだ。
ませガキめ。
そして脱衣所に行き、俺が服を脱ぎ始めると……案の定ゼリスがチラチラと見て来る。
見んじゃねえガキ!
だが、周りには大好きな彼女たちがいる。俺は微笑みを崩さずに、気にしない素振りをする。
いつもなら、堂々と全裸で行くのだが、タオルで前をしっかりと隠しながら浴室へと向かうのだった。




