第365話 到着した第一騎士団
フォルティスが部隊を連れて来て、第二騎士団のレルベンゲルに情報を聞いている。敵が侵攻してくるわけでは無く、ずっと嫌がらせを続けている事を告げた。
それを聞いてフォルティスがひとまず頷き、次に俺が詳細を説明する。
「なるほどでございます。本来ならば、東スルデン神国にアルカナ共和国が与していたという事ですか。それを聖女様達が、アルカナに潜入して寝返らせた、という事で大まかな所はあってますか?」
「その通りです」
「アルカナが再び裏切る事は?」
「ないとは思います。まずは、首謀者をつかまえて来たので引き渡します」
そう言って兵舎に行き、牢獄で廃人同様になっているドペルを見せる。
「これは…このようなものが、この争乱を引き起こしたと?」
「あー、すみません。尋問をしていたら、突如おかしくなってこうなりました」
「苛烈な拷問でも?」
「そのときはしてません」
「なるほど」
「問題ありますでしょうか?」
「いずれにせよ、陛下からは処刑を命ぜられています」
「関所で、ですか?」
「見せしめです」
「わかりました」
戦を収めるための公開処刑だ。ドペルはアルカナ共和国の公爵と同じ運命をたどる事になるらしい。俺達は第一騎士団と共に関所へと向かった。そこでマイオールが声をかけて来た。
「聖女様。よくぞ危険な敵地より戻って参られました」
「大したことは無いです。マイオール卿」
「ははっ……。聖女様にとっては、大したことの無い事になってしまうのですな?」
「ですが東スルデン神国はまだ敵対しているようですので、そこをどうするのかが問題でしょう」
「いっその事、向こうから攻め入って来れば大義名分は立ちますが」
フォルティスがきっとマイオールを睨んで言う。
「マイオール。滅多なことは言うものではない!」
「失言でありました! 撤回いたします!」
こっわ。フォルティスって怒るとこんなに鋭くなるのか。
関所ではルクセンが待っていて、フォルティスが真っすぐにルクセンに挨拶しに行く。
「ルクセン様! 此度は大変な事でございました!」
「いや。聖女様のおかげで孫が助かった。まあ、怒りに任せて攻め入るような事もせなんだが、何かあれば単独で殴り込もうかとも思っておった」
「娘様のみならず、お孫様もとなればそれはそうなりましょう。旧友であらせられる、陛下も気に病んでおりました。何かあれば、陛下が進軍を命じたところでした」
「だと思いましてな。そんな事になれば、当家が火種を作ってしまう事になってしまう」
「そうならずに良かったです」
「そうですな」
ここで俺が言う。
「ドペルはまだ一派が残っていると言ってました。火種は東スルデンとズーラントに潜んでいると」
「やっかいですな」
「陛下はどうされるでしょうね」
「攻め入って来なくとも、国際問題にはなっております。こちらから抗議文を送る事になるでしょう。後は敵がどう出てくるか」
となれば、さっきマイオールが言ったように、相手が攻め入って来てくれれば大義名分が立つ。あながち間違いじゃないだろう。俺はすぐさまトリアングルムに飛んで、援軍を頼むことも出来るし。
そこで俺は、気になった事を聞く。
「南の東スルデンとの国境はどうなってますか?」
「第五騎士団が行ってます。第六騎士団は王都の警護に入りました。これもひとえに、トリアングルム連合国を聖女様が懐柔してくださったおかげ。東を全く気にしなくて良くなったのは、今の当国としては非常にありがたい事です」
「それは良かった」
「それだけ彼の国は、聖女様に恩義を感じているという事ですな?」
そりゃそうだ。国を救ったんだから。
「北の、ミラシオン卿も帝国に睨みを聞かせているところでしょうね」
「その通りです。この隙に攻めてこないとも限りませんからな」
そこでルクセンが言う。
「そうなれば、ヒストリアとトリアングルムとアルカナ共和国連合対、東スルデン神国とズーラント帝国連合の大きな戦になりますでしょう」
フォルティスが言う。
「出来る限り戦争は避けたいです。民がたくさん死んでしまう」
「そのとおりですじゃ。ここまで聖女様が機転を聞かせ、戦争に持ち込まないようにして来たのが無駄になりますのじゃ」
いやあ……たまたまそうなっただけだけど。そう言われてみると、戦争を未然に防いではいるのか。
だがドペルから聞いた、暗躍している人間達を押さえれば、何とかなるんじゃないかとも思う。
「ですが聖女様。危険ですので、あまり無謀な事はなさらないでください」
やる気は無いよ。だってソフィアを守るためにトリアングルムに行っただけだし、ウェステートを取り戻すためにアルカナ共和国に行っただけだから。じゃなかったら行かなかった。
そしてフォルティスが言う。
「ドペルを公開処刑して、敵国がどう動くか」
「わかりました」
敵の首謀者を捕らえた事を敵国に喧伝し、その後で関所に入りドペルの首を斬るという。また、第一騎士団が駐留する事で、ヒストリア兵士が動き出したことも伝わるだろうという話になる。
俺が言う。
「東スルデンに入ったアルカナ共和国の兵が、撤退するのを待っていただけますか?」
「まだ東スルデン神国内に?」
「確認が取れていません」
「そうですか。下手に犠牲になれば、アルカナとの間に遺恨が残りますな」
「まずは、それをどうにかする必要があります」
「わかりました。密偵と接触をし調べさせましょう」
「はい」
おおよその話し合いは終わった。ヒストリア国内は臨戦態勢になっており、何かがあったとしても対応は出来るだろう。会議はようやく一段落する。そしてフォルティスが言う。
「しかし、聖女様の活躍には本当に驚かされました。ズーラント帝国やトリアングルム連合国のみならず、アルカナ共和国との和平も結ばれてくるとは」
「本当に成り行きです」
「これも、女神フォルトゥーナのお導きという奴なのでしょうな?」
「そうかもしれません」
そして俺は次に、俺の懸念材料を話す事にする。
「すみません。それで手前の問題をお話したいのですが」
「はい」
「実は研修会で、貴族の娘達を連れてきているのです」
「存じ上げています」
「彼女らを王都に連れて戻ろうと思っているのですが、しばらく空けても大丈夫なものでしょうか?」
「それはもちろんです。ここは第一騎士団と第二騎士団がいますし、ルクセン様の兵もいます。ですが、陸路は危険かもしれません」
「いえ。あの魔獣を使いますので」
「それであれば、問題ないかと」
「そのようにさせていただきます」
よかったよかった。フォルティスが居てくれればまずは安心だろ。
「では私はこれで」
「は!」
そして俺とアンナは、その場を後にした。
城に戻るとソフィアたちが出迎えてくれる。
「第一騎士団が来たよ」
「それは良かったですわ」
「そこで決まったのは、貴族子女達を王都に戻す事かな。しばらくこのあたりは三つの騎士団で警護するから、その間に全員を送り返す事になった」
だが貴族の娘達が言う。
「私たちも残ります!」
「それはダメかな。今回の事件で、君達がいる事が火種になる可能性もあるから」
「それは……」
そしてソフィアが言う。
「聖女様のおっしゃる通りです。一度王都に帰りましょう」
すると皆が渋々返事をした。
そうして俺達は、貴族達を無事に返す算段をつけるのだった。




