第364話 首謀者の自白
昨日はお風呂に入り、女栄養をチャージしたおかげで、俺はめちゃやる気に満ち溢れていた。すると朝一からヴィレスタン城に来客がある。メイドが迎えに来て直ぐに部屋を出て行く。
「聖女様にお客様です」
「わかった」
使用人に連れられアンナと応接室に行くと、ルクスエリム直下の隠密がいた。
「これはどうも」
「お手数をおかけします。聖女様」
「いえいえ。嫌な事は、パッパと片付けたいので」
「流石です」
都合よくここにいるという事は、既に情報を入れているという事だ。
「もう情報を嗅ぎつけたのですか?」
「ええ。すみません。急ぎと思いましたので」
「今回の騒ぎの首謀者を捉えました。足無蜥蜴という組織のドペルという男で、以前は第四騎士団に副団長として潜り込んでいた男です」
「そのようですね」
「引き取りに来たのですか?」
「いえ。まもなく、第一騎士団が到着します」
「フォルティス卿が?」
「ですが……どうやら、東スルデン国内のアルカナ兵が引いているようなので、出番は無さそうな感じですね」
「そうでしょうね」
そこで隠密が聞いて来る。
「なにをしたのですか?」
「そこまでは調べられてないのですね?」
「そうです」
「ドペルは、人を操る力を持っていました。それから解放し、元の正常な状態へと戻したのです。ルクセン様と共に陛下に伝えにいくつもりでしたが、これで伝える必要はなくなりましたたか?」
「もちろん伝えますが、正式には聖女様の口頭でお願いします」
「わかりました」
俺が、身を乗り出して尋ねる。
「捕えたドペルはどうするのです?」
「第一騎士団が到着次第、処刑をすることになります」
「騎士団はいつ?」
「今日の昼には到着するでしょう」
「わかりました。それを、伝えに来たわけですね」
「そうです」
そして俺はもう一度、隠密に聞いた。
「あなたは、殺す前に聞きだしてほしいと思っている?」
「正解です。陛下はすぐに殺すように言いましたが、情報を引き出さねばなりません」
「わかりました。では行きましょう」
「はい」
そうして隠密はすぐに出て行ってしまった。俺はアンナに言った。
「あの隠密は、私らと同じことを考えている。まあ王としては、不穏分子など直ぐに消し去りたいと思っているようだけどね。フォルティスが到着すれば、ドペルはすぐに殺されるって事だ」
「そのようだ」
「急ごうか」
「だな」
俺とアンナは、直ぐにシーファーレンとリンクシルを連れ、ヴィレスタン城を出る事にする。
するとソフィアが気づいて聞いて来た。
「聖女様! 関所へいくのですか?」
「ソフィア達は、皆で固まって城に居て欲しい」
「わかりました」
そこに朱の獅子達も来る。
「ロサ」
「はい」
「皆を守って。もうあんなことは無いと思うけど、出来るだけ皆が固まっているように」
「お任せ下さい」
そして俺達はすぐに支度をし、ヴィレスタンの城を出てヒッポの馬車に乗り込んだ。
「マグノリア! それじゃあお願い」
「はい」
一気に大空に舞い上がり、ほぼ時間をかけずに関所の兵団のところに降り立つ。直ぐにルクセンがやってきて聞いた。
「お早いですな」
「王都から本隊が来ます。昼には到着するようです」
「それを知らせに来てくださったと?」
「それもありますが、ドペルの取り調べを行います。自白させるための薬を、シーファーレンが用意しました」
「わかったのじゃ」
兵舎の地下牢獄に行くと、数名の騎士が牢屋を守っていた。
「お疲れ様です! 聖女様!」
「開けてくれる?」
「は!」
俺達が中に入ると、衰弱しきったドペルが転がっていた。闇魔法に包まれたままなので、飲み食いも出来ずにトイレに行く事も無い。垂れ流しになっていたようで、牢屋の中に異臭がした。
「ばっちいな」
「いったん浄化しましょう」
シーファーレンが水魔法を出して、噴水のようにドペルを洗い流した。すると捕らえた時より老けて、白髪まざりの初老のように見える。
「老けた?」
「闇魔法の影響ですわ」
「そうか」
そして俺はルクセンに言った。
「ルクセン卿。よろしいですか?」
「なんじゃな」
「娘さんの敵討ちは、フォルティス騎士団長がやる事になりました」
「そうか……」
「自らお手を下したいのは分かりますが、これも陛下が決めた事です」
「フォルティスなら良いですじゃ」
「では、そのように」
そしてシーファーレンが闇魔法を解き放った。すると薄っすらとドペルが目を開ける。
「う、うう」
「起きろ。クズ」
「き、貴様。聖女!」
変身ペンダントをしていないので、俺は自分のままドペルに会った。
「久しぶりだと思ってるのか?」
なんかドペルがブツブツ言っている。
「聞いてるんだが?」
「お、お前が…お前なんかがいるから、全部がおかしくなったんだ」
「おかしくなった?」
「めちゃくちゃ強い公爵令嬢や、奴隷に売りさばいた娘らが現れて……俺の組織は崩壊した」
それ、俺達だけどね。
「因果応報。悪い事は出来ないって事だ」
「クソが」
そして俺は杖の先で、ドペルの顎をグイっと上げた。
「お前は今日死ぬ」
「くっ……」
「その前に聞きたい。ネメシスは今どうなっている?」
「軽々しく、あのお方の名を呼ぶな」
「ネメシス本体をやったつもりだが、どうやら逃げられた」
「言わんぞ」
「お前は痛みにも恐怖にも強いようだ。だから、強制的に吐かせるのは無理だ」
「くっくっくっ! 分かってんじゃねえか」
「なので、無意識に全てを洗いざらいはいてもらう」
「なっ!」
「だからお前は気兼ねなく、処刑の時間を待て」
「いっ嫌だ! 俺は言わんぞ! あの方を裏切る事は無い!」
「だから、裏切らなくていいって」
「どういう……」
ドペルは恐怖におびえ切った顔で、俺を見上げている。その顔を見ているだけで、強電撃で焼き殺したくなるが我慢する。
「言い残す事は?」
「お、俺が死んでも、第二第三の俺は生まれるぞ! あのお方がそうする」
「なら、第二第三の矢も折る」
「貴様……」
「言い残したいことはそんな事か?」
するとドペルはルクセンを見て、皮肉たっぷりな笑みを浮かべた。
「お前の娘……孫にもそっくりで、年の割には、いい体」
ゴン!
俺は思いっきりドペルの頭を叩いた。
「終わりで良いみたいだ。シーファーレン」
「はい」
シーファーレンが催眠の魔法をかけた。すると途端にドペルが意識もうろうとし始める。
そして俺はルクセンに言う。
「見苦しいでしょう。外に出ていてもよろしいですよ? 殺したくなりませんか?」
「いや。陛下の御心のままに」
「わかりました」
そしてシーファーレンが言う。
「では」
袋を取り出して、中身の薬草を床に撒き火をつけた。するとその煙が、ドペルにまとわりつき始め、あっという間に包み込んで消えた。
「これでかかってるの?」
「はい」
そこで俺はドペルに再度質問をした。
「ドペル。お前のような僕はどのくらいいる?」
「四人」
「お前がそのうちの一人か」
「そうだ」
「あと三人は誰だ?」
「一人は死んだ。あと二人は東スルデン神国とズーラント帝国に潜んでいる」
「なるほど。名前は?」
「東スルデンのデビド、ズーラントのガジ」
「まだ狙ってるのか?」
「そうだ」
「ネメシスはどこにいる」
すると一瞬ドペルが固まる。シーファーレンが言う。
「もう一度」
「ネメシスはどこにいる」
「しらない」
自白剤を使ってもこれという事は、相当な暗示がかけられているようだ。
「どんな奴だ」
「恐ろしい。鋭い少年」
……。
「えっと。少年のように見える?」
「そうだ」
「まだ狙っている?」
「トリアングルムで力をそがれ、今は僕を増やして力を蓄えている」
「デビドとガジの特徴は?」
「デビドは髪が無いデカ物、ガジは瘦せこけた魔法使い」
「そいつらがまだ動いている?」
「そうだ」
「ネメシスはどこにいる?」
「あのお方は……ぎえぇぇぇぇl!」
なんだなんだ?
ドペルの目と鼻と耳から血が噴き出て来た。この世の者とは思えないような恐怖の表情を浮かべて、次の瞬間ドサリと倒れ込む。
シーファーレンが首を触った。
「死んでしまいそうです」
「ちっ」
俺は仕方なく蘇生魔法を仕掛ける。すると穴という穴から出ていた血が止まった。アンナがドペルを掴んで起こすが、髪は真っ白になり、まるで百歳のような老人になっていた。
「おい」
「あ、あう」
「ネメシスはどこに?」
「あ、あは……」
そしてシーファーレンが言った。
「精神が壊れました」
マジか……。
そして俺はルクセンを見る。
「どうしましょう」
「天罰ですじゃ」
「このまま、第一騎士団に引き渡せばいいですかね」
「そうじゃな」
そしてその後、昼前に第一騎士団が到着し俺達は廃人になったドペルを引き渡すのだった。




