表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

363/414

第362話 戻って来た騎士団と犯罪人の受け渡し

出兵していたアルカナ兵士の第一陣が戻り、王城前の広場に集められていた。ここに集まっているのは、王に取って代わった公爵に命ぜられて出兵している人達。暫定の王である公爵に命ぜられたのだから従うよりほかはなく、渋々出て行った人達という事になる。


 そしてバルコニーには縛られた公爵がおり、近衛が囲みヴァイネンとプーリャが立っている。


 王子のヴァイネンが、あらかじめ決められたことを話す。


「兵よ! よくぞ戻ってきてくれた! 既に逆賊は捕らえられ、首謀者である公爵は罪を認めて投降した。父と母を殺した逆賊は許せないが、命ぜられて出兵した君らには罪がない。だが改めて聞いておきたい! ここに反逆の意思があるものはいるか!」


 おお、若いけどそこそこ威厳があるじゃないか。生意気だけど、こう言う所では役に立つ。


 誰も手を挙げなかった。


「父は偉大な人格者であった! 私は父の遺志を継いで、王位を継承するつもりだ! その事に異論がある者はいるか!」


 すると兵士の一番前にいる、筋肉隆々の男が言う。


「ヴァイネン殿下! 我々は不本意であったとはいえ、逆賊である公爵の命を聞いて出兵いたしました。その我々を許し、また王の剣として使ってくださるのでございますか?」


「第一騎士団長デイルよ! むしろ私が聞きたい! 騎士団はこれからも国の為に戦ってくれるか!」


「もちろんでございます! 新たな王よ!」


「「「「「わぁぁぁぁぁ!」」」」」」


 歓声が上がり騎士達が剣をあげる。


 近衛騎士のヴェールユが、王子に言う。


「では殿下。話はここまでで」


「ああ」


 ヴァイネンがこれ以上台本を覚えられなかったため、とりあえずは騎士達が納得したところで下がらせる。そしてプーリャが前に出て話をする。


「忠実なる騎士よ。逆賊につけ入るすきを与えてしまった王宮を許してください。そのおかげで不要な戦争を仕掛けてしまいました。ですが、ここに友好の証としてヒストリア王国より、公爵令嬢のソフィア様達がおいでになっております。ヒストリア王国に対して刃を向けようとした事を、国へ帰り誤解だと伝えてくださるようです」


 シーンとする。いきなり戦争を仕掛けようとしていた国の公爵令嬢が出て来て、あっけに取られてしまったようだ。


「ソフィア様! 是非騎士達にお話を!」


 俺が前に出て言う。


「皆様! 初めまして! ヒストリア王国より友好の証として参りました。公爵令嬢のソフィアと申します! 皆様はヒストリアについて、あらぬ誤解を植え付けられているようです。それは聖女という存在が、隣国に牙をむくと言った噂です。それこそ誤解でございます! 聖女はそういう存在ではございません! 人々を愛し、博愛主義者なのです」


 女に対して、だけだけど。


 そして続ける。


「あのズーラント帝国も、聖女との争いで兵を引きました! ですがヒストリア王国は、ズーラントに攻め入ろうとはしておりません! かの国も、本意ではない事が分かったからです。ですので皆様! 剣を納めていただき、以前のように友好を結ぼうではありませんか!」


 すると、デイル騎士団長が言う。


「なぜ公爵本人ではなく、令嬢がいらっしゃってるのですか?」


 だが俺はそこで、チラリとルクセンを見た。ルクセンが前に出てきて言う。


「我は、ヒストリア王国国境に居を構える、ルクセン・バール・ヴィレスタンである!」


「「「「「「おおおおおお!」」」」」」


「知っておいでの御方もいらっしゃるようじゃのう」


「ヒストリアのルクセン様と言えば、武の将軍として名高い。僭越ながら、以前お見受けしたことが御座います!」


「いや。それは昔の話じゃ。今は辺境伯として領地を任せれておるのじゃ。内情を知れば、戦争などする必要は無いと分かった。貴国とは元通りの国交を結ぶよう、ヒストリア王へ伝えようと思っておる」


 そしてプーリャが前に出た。


「どうでしょう。こうして危険を顧みず遠路はるばる来ていただいたのです。私達はそれに応える必要があるのではないでしょうか?」


 王女の言葉に、皆が深く頷いた。


 そこで騎士団長のデイルが言う。


「ですが、既に東スルデン神国に入り込んでいる騎士団がおります。彼らを戻らせませんと、東スルデンの国内に孤立してしまいます」


「分かっています。それをこれから団長とお話をしようと思っています」


「わかりました」


「そして自ら逆賊に与した騎士の処分についても」


「は!」


「まずは市中の治安の為に働いてください」


「は!」


 市中にいる裏切者たちの逮捕やら何やらで、数日はかかりそうだ。


 そしてプーリャは非情な決断をする。


「手始めに…公爵の処刑の日取りを取り決めます。市民を集めての公開処刑となるでしょう」


「は! 速やかに手筈を整えます!」


 こうして騎士団の受け入れが終わった。そしてプーリャがルクセンと俺にお礼を言う。


「ルクセン様! ソフィア様! 此度は本当にありがとうございました。騎士団も戻り、これで王宮の復活を遂げられそうです」


「では、こちらの話し合いをいたしましょう」


「はい」

 

 皆が謁見の間に集まり、足無蜥蜴の話し合いになる。既にその話し合いはおおむね決まっていて、ルクセンは犯人としてドペルの受け渡しを要求した。


 プーリャが答える。


「もちろん問題ございません。それにより、アルカナ共和国の疑いが晴れるのであれば、ぜひ連れて行っていただきたい」


「わかりました」


 おおよその段取りが付いたので、俺達は国に戻る事になる。その足で地下牢へと行き、闇魔法で落ちているドペルを受け取りにきた。


 プーリャが見張りの騎士に言う。


「開けてください」


 扉の鍵を開けて、中に入ると縛られたまま転がされているドペルが居た。ずっと飲まず食わずで寝ていたので、かなり衰弱しているようだった。俺がシーファーレンに言う。


「起こして」


「はい」


 闇魔法を解除すると、ドペルが薄っすらと目を開ける。


「な、牢屋?」


 するとルクセンが、しゃがみ込んでドペルを睨む。


「久しいのう、ドペル」


「じ、ジジイ」


 それを聞いてレルベンゲルが言う。


「辺境伯に対して不遜であるぞ!」


「お、なんだ。レルベンゲルじゃねえか、お前随分出世したんじゃねえのか?」


「貴様…誰に向かって……」


 だが俺はそれを止める。


「どうも」


「ひっ!」


 ソフィアの俺を見たドペルが、あからさまに怯えている。


「よくウェステートをさらってくれたね」


「ば、バケモン!」


 ドペルがそう言うと、アンナが剣を尻に突き刺した。


「ぎゃぁぁぁぁぁ!」


「あらら。そんな状態でも生意気な口を利くもんだから、うちの剣士が刺しちゃったみたい」


「いてえ! いてええ!」


「そんなに叫ぶと、次は腹を刺されるかもよ」


「き、貴様……。見た事あるぞ……公爵の娘だろ」


「あら? 覚えてた?」


「殺せなかったのか……」


「なんだって?」


「何処までもうまくいかねえようだ」


「ま、いいか。とりあえずお前はもう終わりだ」


「くっくっくっくっ! 俺なんか捕まえたって終わらねえよ」


「お前、ネメシスとどんな関係だ」


 するとドペルの悪い顔色が、更に悪くなる。


「てめえ…あのお方の名を軽々しく呼ぶな」


「ネメシスの事か?」


「殺すぞ」

 

 ズドッ!


「ぎゃあああああああ!」


 あーあ。アンナが腹を刺しちゃった。


 俺は慌ててドペルの腹に回復魔法をかける。シュウシュウと音を立てて傷口が埋まり、ドペルは汗だくになりながらも怯えた表情をした。


「エンド。殺しちゃダメかだからね」


「分かってるが、ムカついた」


「わかるけど」


 そしてレルベンゲルとヴェールユとネル爺に言う。


「水を飲ませて」


 ヴェールユががっしりとドペルを掴み、ネル爺がガッと口を開かせる。するとレルベンゲルが無造作に、開いた口めがけて水をどばどばと流しいれる。


「ごっ! ゴフッ! ごほごほごほ!」


「さあ。もっと飲め」


「や、やめろ」


 また口を押さえられて、どばどばと水を飲まされる。


「ゴホゴホゴホ! てめえ! やめろ!」


「まだ足りないようだ」


 無理やり口を開かされて水を飲まされ続けた。もう腹がたぽたぽになった頃だろう。


 男らがドペルを押さえつけ、俺がドペルの胃袋を力いっぱい蹴りつける。


 どぼぉ!


 胃袋の中の水と血が口から噴き出て来た。


「さあ答えろ。ネメシスとはどういう関係だ」


 口から血をぼたぼたと流しながら言う。


「し、知らねえよ」


「胃袋が破れて答えられない?」


「……」

 

 俺はドペルの胃袋のあたりに手を当てて、回復魔法をかけた。口から流れ落ちてた血が止まる。


「水を飲ませて」


「や、やめろ……」


 男らに体を押さえられ、また水をたらふく飲まされた。俺が押さえつけられているドペルの腹を、また思い切り蹴り飛ばす。


「ごぼぇお!」


 血液交じりの水がまた大量に出て来た。


「ネメシスとはどういう関係?」


 ぼたぼたと口から血を垂らしながら、ドペルが睨みつけて言う。


「殺せ。どうせ話す気はねえ」


 俺は胃に手を当てて回復魔法をかけた。流石にヴェールユはちょっと青い顔をしているが、怒り心頭のルクセンとレルベンゲルは無表情だった。


「水を」


 同じように水を飲ませて、三回目の蹴りを入れるもドペルは白状しなかった。


 また回復魔法をかけて、水を飲ませるが俺はもう蹴りを入れなかった。


「ゼロ。眠らせて」


「はい」


 ドペルは闇魔法に包まれて意識を落とす。


「筋金入りじゃな」


「言えないようにされているのかも」


「なるほど」


 そして俺はヴェールユに言った。


「これ以上は御見苦しいので、続きはヒストリアに戻ってからにいたします」


「ははは…悪い奴ではあるのでしょうが、コイツの処置を想像すると身震いします」


「ヒストリアとアルカナをこんな風にした一人です。我々よりも、もっと怖い王宮の専門機関に引き渡す事になるでしょう」


「今ので、白状すると思ったのですか?」


「いいえ。憂さ晴らしです。王宮に渡す前に、もう少し痛めつける事にします」


 振り向けば、ヴァイネンとプーリャが、また恐ろしいものを見る目で俺を見ていた。俺と行ってもソフィアなので、なんとなく申し訳ない気分になって来る。


 だが俺は二人にいう。


「これは必要な事なのです」


「「はい!」」


「粛清するのであれば、こんな事が現場で行われると知っておく必要があります」


「分かっています! ヴァイネン、肝に命じましょう」


「はい」


 そう。俺は、まだあまり覚悟の決まっていない二人に、今の事を見せつけたのだ。もちろんウェステートをさらった本人だから、恨みが八割がたあるけど。


 縛られたドペルをレルベンゲルが担ぎ上げ俺達は牢を出る。その時ヴェールユが俺達に聞いて来た。


「他の足無蜥蜴はどうしましょう?」


「お好きになさってください。雑魚には用はありません」


「わかりました」


 王城を抜け出して庭に行くと、ヒッポに大型の馬車が取り付けられていた。プーリャに頼んで大型の馬車を用意してもらっていたのである。それに仲間達と朱の獅子が乗り込んだ。縛られて気を失っているドペルも放り込み、俺が振り向く。


 ヴァイネンとプーリャ、そしてヴェールユと護衛の騎士がいる。


「私達は国に帰ります。我が国と連携をとりつつ、終息させるようにしましょう」


「はい! ソフィア様もお元気で!」


「プーリャも…ヴァイネン殿下も」


 二人が頭を下げた。俺とアンナが馬車に乗りこむと、ヒッポが大きく羽ばたく。


「では、また近いうちにお会いしましょう」


「「はい」」


 一気に上空に舞い上がり、ぐんぐんと王都が小さくなっていく。


「アルカナの内情が知れて良かった」


「ですなあ。聖女様…また国の危機を救われましたな」


 そう言われてみればそうか。ウェステートを取り戻しに来ただけだったが、結果は内乱を納めて戦争の取り消しが出来そうだった。そして俺はウェステートの隣りに座って言う。


「良かったねえ。本当に何もされてない?


「はい。少し触られたくらいで、特に何もされませんでした」


「あらら。それは怖かったねえ。とにかく早くお家に帰って、お風呂に入った方が良い」


「はい」


 俺はウェステートをグッと抱き寄せて、国に帰るまでずっと頭を撫で続けたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ