第360話 スーパーヒーロー聖女
ウェステートの母親を殺し、その娘までも誘拐して国同士の火種を作ろうとしているドペル。恐らく母親の時に失敗した事を根に持って、ヴィレスタン一族にまとわりついているのだ。
粘着して執着しているのがキモい、めっちゃムカつく。国をいくつも巻き込んで、何人不幸にしたら気が済むのか。俺が一番キレてんのは、ウェステートを誘拐したことだ。万死に値する。いくら平和主義のヒモ男の俺でもキレる。さっきは俺のリンクシルに怪我を負わせ、手伝ってくれているロサとパストにまで手をかけやがった。
だが何かが変だ、雑魚達は怖れもせずにアンナに突撃していく、アンナの力を見たら尻込みしてもおかしくないはずだが、まったく躊躇することなく突撃していくのだ。
違和感を覚えた俺は、思わず足無蜥蜴の群れに飛び込んだ。
するとソフィアの格好をした俺を見て、雑魚達が喜んでいる。
「おい! 魔導士の華奢な姉ちゃんが、パニックを起こして突っこんで来たぞ!」
「すげえ美人じゃねえか! 犯しちまおうぜ!」
「ひん剥け!」
至近距離に来てやっとわかった。男らは目を血走らせよだれを垂らし、ズボンの前を膨らませながら戦っているのだ。この雑魚らは正気じゃない、こんな状況なのに情欲におぼれたような顔をしている。
なるほどな。
俺が何故、敵に突っこみたくなったか良く分かった。俺の女達に、欲情をむき出しにして襲い掛かっているのが本能的に分かったからだ。そしておそらく、そうさせているのはドペルだ。
「キモすぎなんだよ!」
だが俺の言葉など聞いちゃいない。
「脱がせろ!」
なるほど、こりゃ女なら怯むわな。
「スプラッシュライトニング!」
パリパリパリパリ!
周辺の男らが倒れる。だが思った通り、後ろの奴らがひるむことなく突っこんで来た。金剛と結界により身体を守ってはいるが、捕まってしまうとかなり不利になる。
ブゥン!
ボゴォォ!
魔法の杖の頭の部分で思いっきり男を横殴りにし、隣の男に飛んで転がる。俺はまるで孫悟空のように、杖をグルグル回して円形に敵を飛ばした。
「なっ! この女! 魔法だけじゃねえぞ!」
「とにかく押さえろ! 押さえれば勝てる!」
そのまま杖を上に掲げ、思いっきり振り下ろす。
ゴン! ブゥゥゥ!
脳天を殴られた男は、まゆ毛の上あたりまで頭をへこませて、鼻から血と脳を飛び出させて死んだ。だが他の奴らは全く怯むことがない。
「オリジン!」
アンナがまとわりつく雑魚らを斬りつけながら、俺に向かってきた。
「エンド! 無理してこなくていい! 何かおかしい!」
「うおおおおお!」
俺が窮地に立ったと見たのか、アンナが修羅になった。無理やり斬り捨てて、こちらに進んで来ようとしている。すると反対側からも、ロサ、ルクセン、リンクシル、パストが斬りかかってきていた。
「だ、だめだ」
乱戦の中でドペルの顔を見ると、ニヤリと口角をあげるのが見えた。
「みんな! 来るな! おかしい!」
だが雑魚らの雄叫びで、俺の声はかき消されている。俺が仲間に気を取られた一瞬、ガッと俺にタックルをかました奴がいた。
「つかまえたぁぁぁ」
俺が振り払おうとした時、視界の端である男が何かに火をつけているのが見えた。
ドン!
次の瞬間そいつが大爆発し、周りの奴らも吹き飛ばされて血まみれになっている。俺を抱きしめていた奴も、腕がちぎれて吹き飛んだ。幸いにも俺だけが、金剛と結界により無傷だった。
「みんな! 逃げろ爆弾だ! 自爆するぞ!」
だが時すでに遅し、アンナのいるところとルクセン達がいるところで爆発が起きた。アンナはシュッと身をかわして、爆発の前に前の奴を盾にした。だがルクセン達は、爆発をもろに喰らってしまう。
「リンクシル! ロサ!」
辛うじてルクセンとパストが盾になってくれたようだが、どちらも大けがを負っているのが分かる。ぐらりと倒れるパストを、血まみれのルクセンが抱き留めた。リンクシルとロサも被弾したようで、煙をあげながらも二人に敵を近づかせまいとしている。
ドペルが嬉しそうに叫んだ。
「ひゃーはっはっはっはっ! ひっかかりやがった!」
「ドペルゥゥゥゥ!」
そして、またアンナとルクセン達に雑魚が群がり始めた。
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
何度も爆発音が聞こえ、雑魚達も減っていくが煙で仲間達が見えなくなる。
俺はリンクシルがいる方に魔法の杖を向ける。アンナを信じ切っているので、こちらを優先した。
「スプラッシュライトニング!」
パリパリパリパリ!
ドン! ドン!
走り寄る途中で倒れた奴が爆発した。その事で道が開いたので、俺は一気に仲間の所に走る。パストとロサとルクセンが血まみれで倒れ、腕や足がちぎれかけていた。それを血まみれのリンクシルが守ろうとしていた。
「身体蘇生! メギスエリアヒール! 結界!」
ちぎれかけていた手足が繋がり、体の傷が癒えていくが出血がひどい。三人は朦朧とし、リンクシルだけが全身を毛羽立たせて周りを威嚇している。
そこにようやく、馬車をイドラゲアとシャフランに任せた、シーファーレン達がやって来る。
「こんなに前に来ちゃだめだ!」
「しかし!」
ダッ! と雑魚らがシーファーレン達に飛びかかろうとした。だがネル爺とレルベンゲルが、その前に盾になり防ごうとする。
ドン! ドン!
やば!
だがその爆発は二人に届かなかった。シーファーレンが咄嗟に氷の盾を張り、二人を爆炎から守ったのである。
アンナは…!
流石と言ったところか、敵の戦術を見たアンナは、敵の人間を盾にして防いでいた。
「ピィィィィィィ!」
するとそこにマグノリアとヒッポが飛んで来たので、俺はその足に捉まり上空に上がる。直ぐに手を放して、敵の群れを飛び越えドペルに一直線に落ちていく。
するとそれを見たドペルが、慌てて逃げるように後ろを振り向いた。更にドペルを守るかのように、人間の壁が出来上がる。
ザッ!
俺はその壁の前に飛び降り、剣を構える男達に飛びかかる。
「ライトニング百裂拳だ! バカヤロウ!」
両手に電撃を纏わせて、力いっぱいパンチを繰り出した。
ボッ! ボッ! ボッ!
俺のパンチがあたった瞬間、雑魚の頭が吹き飛んだ。
へっ?
力任せに殴っただけなのに……。
俺は自分の両の拳を見る。
なにこれ?
「うおおおお!」
男が飛びかかって来た。電撃を纏った正拳突きを繰り出した。
「ライトニングストライク!」
ボッ!
男の胴体に穴が空いた。俺はスカートをはいているのも忘れ、足を高々と上げる。
「ライトニングインパクト!」
電磁を纏う足が地面に落ちる。
ドゴゥ!
五メートルくらいのクレーターが出来て、男達が爆発に吹き飛ばされた。あまりの音に振り向いたドペルが言う。
「な、なんだあ! それわぁああ!」
「ライトニングジェット!」
俺が電磁の籠った足で踏みこむと、まるで縮地のようなスピードでドペルにタックルしていた。
「ゲボォォぉ!」
くの字に折れ曲がったドベルを掴んだまま、数メートル飛んで落ちた。ドペルは意識を飛ばしたようだ。次の瞬間…雑魚達の動きが変わる。
「な、なんでこんなに死んでんだぁ!」
「飛び散ってる!」
「お、俺の腕! 俺の腕がああ!」
「目がっ目ガァァァァ」
やっと人間らしい反応をするようになってきた。すると俺のところに、ようやくアンナが来る。
「捕まえたのか!」
「ああ。やっとだ。ちょっとこいつを頼める?」
「どうするつもりだ?」
「悪い芽は間引きしておかないと。ムカついちゃってさあ! 見逃せないんだよね!」
俺はスッと立ち上がって、足無蜥蜴達を睨んで言う。
「さーって、悪者の皆さん。きっちり落とし前をつけてもらおうかぁ!」
ダッ! と雑魚に突っ込んでいく。
「ライトニングストライクゥゥゥ!!!」
俺は自分の気が済むまで、雑魚共を驚異の身体能力でタコ殴りにするのだった。




