第358話 足無蜥蜴の軍勢
ロサに連れられて王都を離れ西に向かって、一時間ほど行ったところにマグノリアとヒッポがいた。そこにある馬車には、ウェステートとプーリャとヴァイネンが乗っていて、周囲をシャフランとイドラゲアが警護していた。深い草むらに隠れているので、誰からも見つかってはいないようだ。
「殿下。お待たせしました」
するとプーリャが慌てて聞いて来る。
「どうなりました!」
「王城は奪還しました。公爵も捕えております」
「凄い……あの状況からよく」
「貴国の、優秀な近衛がいたおかげかと思います」
「ヴェールユ達も良くやってくれたのですね」
「王族が不在のままでは、次の指針が決まりませんのでお迎えにあがりました」
「かしこまりました。ヴァイネン、では王都に戻りましょう」
「しかし、また曲者が出るのでは?」
それに俺が言う。
「そこで我々が迎えに来たのです。いずれにせよ、ここにいるのも安全ではありません」
「分かっております。ヴァイネン、今は彼女らを信じましょう」
「わかった」
空を飛べば目立つので、ヒッポには普通に馬のように馬車をひいてもらう事にする。
「お爺様!」
「おお。ウェステートや本当に良かった」
「はい」
「ウェステートも大変だったね」
「はい! きっと助けて下さると信じておりました」
「当たり前だよ。何もされていない?」
「乱暴な扱いを受けましたが、純潔は汚されずにおります」
そいつは良かった。もし何かあったら、俺は手当たり次第にやってやろうと思っていたから。足無蜥蜴や関係者はもちろん、公爵なんかは多分俺が殺していただろう。
そして俺達は草原から抜け出し、街道に出て行く。馬車の周りに朱の獅子、ルクセン、レルベンゲル、ネル爺が囲いこみ、俺とアンナが馬車の御者席に座る。ヒッポの背にマグノリアが居て先頭にいた。
それからしばらく進み、雑木林の間を抜けようしている時だった。
アンナが言う。
「聖女、この先に…多数の気配がある」
「マグノリア! ヒッポを止めて」
馬車を止め、俺達のところに仲間達が集まって来た。
「どうなされたのじゃ、聖女様」
「どうやら、待ち伏せされているようです」
「なんと」
「恐らくは王都を出た我々をつけていた。と言ったところかなと」
「迎えに出たのが仇になったのじゃろうか?」
「いやいや。迎えに来てよかった。じゃなきゃ、殿下もウェステートも殺されてた」
「いずれにせよ。バレていたと」
「恐らく、かなりの人数がいるし、見張っていたんだと思います」
「なるほど。どうしますかの?」
「ドペルが居れば、ワイバーンを使役してくるかもしれない。ヒッポを飛ばす事は難しいので、ここは突破するしかない」
「奴はわしがこの手でひねりつぶしてやりたい。娘の仇をここで討てるのなら本望」
だがアンナが俺に言う。
「次々集まっている。かなりの数のようだ」
だが俺は言った。
「アンナ。ウェステートに怖い思いをさせた奴らがいるんだ。ハッキリ言うと、徹底的にぼこぼっこにしてやりたい気分なんだよね」
「ふふ。ならやるか」
「ねえみんな! そうだよね! 仲間を酷い目に合わせようとした奴らが居たら、それを見逃せる人なんて私の仲間にはいないよねえ!」
「「「「「おう!」」」」」
「というわけで、魔力が続く限りぶっ放しちゃおうと思ってる」
「わたしは、力を全開放して良いのか?」
「そうだアンナ。修羅を出現させてやろう」
「なら、ネメシスと戦った時のような力を爆発させてやるか」
「ねえ、シーファーレン」
「怖いですわね。私も最大限に皆様のサポートをいたしますわ」
そこで、俺は馬車の窓を叩く。
コンコン。
「はい」
「三人は身代わりのペンダントをつけて」
「「「はい」」」
ウェステートがスティーリアに、プーリャがヴァイオレットに、男の子のヴァイネンがおばちゃんのアデルナになった。
「馬車から出たら危険だから、しっかり鍵を閉めていてね」
「はい」
「レルベンゲルとネル爺は、馬車の護衛をお願い」
「「はは!」」
「マグノリアはヒッポで寄って来た敵を蹴散らして」
「はい!」
そして俺はそこにいる全員に、最高レベルの身体魔法をかけた。
「じゃ、行こっか」
俺達はヒッポを囲んで歩いて行く。森の道を抜けると、草原に広がるようにして屈強な男達が待ち構えていた。
ちっ…何百人いるんだよ。
俺達が止まると、ルクセンが前に出て行って大きな声で言う。
「このような王都のそばで、賊がなにようだ!」
だが、その大勢の中から出て来たのはドペルだった。
「おうおう! 爺さん久しぶりだなあ」
「ドペル…貴様ぁ!」
「なんでこんな所に居るかは知らねえが、たかだか十人くらいでここを切り抜けるつもりか? 俺を追い払った時とは立場逆転だなあ!」
「なんと汚い言葉を吐くか」
「なんだ? 娘の仇討ちでもしようってか?」
ギリギリとルクセンの歯がなる。
俺がルクセンの隣りに立って言う。
「安い挑発に乗ってはダメです。冷静さを欠かせて、戦力を削るつもりです」
「うむ」
そして俺が空中に向かって、魔法雲を撃ち始めた。だが敵の方から、その雲にめがけて火の玉のようなものが浮かび上がり、俺の雲を消し去ってしまうのだった。
「雲が消された!」
するとシーファーレンが言う。
「あれも魔法です。きっと王都で使っているのを見られたのでしょう」
「敵にも魔導士がいるのか」
「接近戦になりそうですわ」
「それならそれでやり方はある」
そして俺が言う。
「シーファーレンは後方支援。私を守って! 私が前衛を支援する!」
「はい!」
「アンナとリンクシル、ルクセン卿、ロサ、パストは全力で支援するから、思い切り全力でやって! 体力回復と防御は私がやる! イドラゲアは中堅から弓矢で、シャフランは中距離魔法で牽制して敵が集まらないようにして!」
「「「「「「「おう!」」」」」」」
俺達がじりじりと進むと、敵から火の玉が飛んで来る。
「結界」
それは俺の結界で防ぐ。敵もじりじりと進み始め、一色触発の状況へとなるのだった。




