第354話 王城奪取
三人が周囲を警戒してくれているうちに、俺は魔法の杖を空にかざし始める。
ボワン。ボワン
俺の杖から水魔法と電撃を混ぜて作った雲が、ポッポッと空に向かって飛んでいく。既に味方と近衛騎士達は、入り口から奥に向かって進んだようだ。俺はせっせと空に向けて、人口で作った魔法の雲を浮かべていった。
スプラッシュライトニングの応用で作った雲は、次第に王城を覆い始め、空が暗くなってくる。
「素晴らしいですわ聖女様」
「魔力が尽きないんだよね。なんでだろ、前はこんなに出来なかったのに」
「ネメシス戦から変わりましたわね」
「だね。そしてシーノーブルが出来てからかな? いやそれでも、この魔力の溢れ方は尋常じゃないなって思うけど」
実際この活動を始めてから、かなり魔法の感覚が変わってきたと思う。新しい魔法も生まれたし、そもそも魔力の底が見えないのだ。複合魔法は魔力をガリガリに削るのだが、複合魔法をいくら使っても魔力がきれない。
浮かび上がった雲から、ポツリポツリと雨粒が落ちて来る。空に浮かぶ薄い雲と混ざり合い、本格的な雨雲になってきた。それでも俺は続けて空に向け、雲を浮かべ続けた。王城の周りだけが暗い雲で覆われ、俺がようやく魔法を止める。
サーーーーと雨が降って来たので、俺はシーファーレンに言う。
「じゃ、合図を」
「はい」
シーファーレンが魔法の杖をかざし、王城の正面に向けて花火玉をあげた。
パン!
それはルクセン達と、近衛兵たちに向けての避難の合図。
「ちゃんと逃げてよ」
シーファーレンが数を数え始める。
「ひとつ、ふたつ、みっつ……」
シーファーレンが数えている間に、俺は結界魔法を展開して床をシーファーレンが乾かした。
「…ここのつ、とう」
俺は天空に杖をむける。
「ライトニングストーム」
ピシャアアアアアアアア! ズッドッン!
一瞬、視界が真っ白になる。天に浮かぶ雲から膨大な量の落雷があったからだ。耳をつんざくような音がして、少し耳がホーッとなっている。
「す、凄いですわ」
アンナもあっけに取られている。
「神の雷だな…」
「よし。じゃ玄関口に向かうよ」
「わかりましたわ」
「ああ」
「はい!」
俺達四人は螺旋階段に戻り、王城内を走っていく。やはり俺達の侵入を想定していたのか、王城の中には大量の騎士達がいた。
「曲者だぁぁぁぁ!」
「斬れ斬れ!」
走りながら、シーファーレンが騎士達がいるところの窓を魔法で開け放った。更に魔法を行使して、大量の雨が暴風雨のように館内に渦巻く。
「サンダーボルト!」
バッバッバッバッ!
強烈な電撃が暴風雨の中に炸裂し、煙を噴き出しながら騎士達が倒れていく。
「あんまり殺すと騎士団の復帰が出来なくなるかな」
だがシーファーレンが言う。
「聖女様。怖れながら、こちらにも手心を加えている余裕などありませんわ」
その通りだ。俺達は敵の国の中心部の、更に真っ只中にいるのだ。ここで手心なんか加えてたら、こっちが危ない。
まあ…ウェステートを誘拐した奴らに、手心くわえる気は毛頭ないけど。
そして城の大きなエントランスに突入すると、入り口を閉鎖して敵の侵入を防いでいる騎士達がいた。俺達が後ろから来た事で、慌ててこちらに振り向いて叫んだ。
「後ろからだ!」
「迎え撃て!」
扉を押さえていた奴を置いて、後ろにいた奴らがこちらに向かって来た。
バンバンバン!
「なんだ!」
「ガラスが!」
エントランスの上のステンドグラスが全て割れた。そこから暴風雨が降り注いで来る。
「サンダーボルト!」
バリバリバリバリ!
あっという間に騎士達が倒れる。
あ、ちなみにサンダーボルトっていうのも、ライトニングストームって言うのも詠唱ではない。前世の記憶でかっこよさそうだから、俺が命名した魔法の名前だった。
エントランスの奴らが全て感電して倒れた。
バゴン!
音を立ててルクセンとレルベンゲルが飛び込んできて、その後から近衛騎士団が続いた。
ヴェールユが俺達を見て叫んだ。
「裏切者がどこかに居ます! そいつらを捕えます!」
「はい」
丸腰だった近衛騎士達は敵から剣を強奪していた。薄い布の服ではあるが、流石は近衛と言ったところか、外の騎士達を蹴散らして来たらしい。
王城を走り、一室一室開けて確認していく。
使用人が居たり、メイドが居たりはしたがなかなか見つからない。恐らくはこの騒ぎを聞きつけてどこかに隠れたのだろう。
そしていくつかドアを開けていると、騎士達が飛び出して来てチャンバラになった。だが俺の身体強化が施された近衛の敵ではないようで、あっという間に制圧していく。
二階に登り、それでもおらず三階の使用人の居住区エリアに突入した。またひとつひとつ扉を開けて行き、部屋のクローゼットなども開けていく。
すると…とうとう見つけた。
「出て来い!」
「ま、待ってくれ! き、騎士はどうした? なんで近衛が!」
ヴェールユが叫ぶ。
「城を取り戻しに来た! 公爵はどこだ!」
「し、しらん! 私はただ…」
するとヴェールユが近衛に言う。
「こいつを縛って部屋に閉じ込めろ!」
「「「は!」」」
俺が聞く。
「さっきの男は?」
「我が国の伯爵です。公爵と結託して裏切ったのです」
「裏切者は結構いるんですか?」
「国の半分は裏切りました。大半は避難して逃げ、ほかは領地で静かに待っている状態でしょう」
なるほどね。王派と公爵派で分かれて内乱という訳だ。
そして俺達は王城をくまなく探し、数名の貴族を捕らえる事が出来た。だが肝心の公爵とやらは見当たらず、どうやら王城を抜け出して逃げたようだった。
それを知って俺がルクセンに言う。
「多分…ドペルです」
ルクセンが頷いた。
「うむ。奴が手引きしているのであろう」
「勘だけはいいらしい」
「相変わらずのう…」
そうして俺達は、王城を完全に奪取する事が出来たのだった。抵抗が無駄だと知った騎士が投降してきて、王城は半日もかからずして陥落したのだった。




