第349話 捕らえられたウェステートを見つける
石畳を進んで行くと、通路にぞろぞろと騎士が現れた。それを診てヴェールユが俺に言う。
「逆賊です」
「スプラッシュライトニング」
パリパリパリパリ!
ドミノ倒しで、騎士達が全員が倒れる。
「なっ。どうなっているんです! そんな魔法が!」
「詳しくは聞かないでください」
石畳廊下の先が折れ曲がっており、プーリャが言う。
「こっちです」
石畳を右に進むと行き止まりには、螺旋階段が見えている。そこに見張りの騎士が居て、俺達に気が付いて剣を構えた。
シュッ! とアンナが一瞬で近づいて、二人を斬り捨てる。
そこでヴェールユが言う。
「あなた方はいったい……」
それを尻目にプーリャが言った。
「やけに厳重ですね。確実に何かあります」
「行きましょう」
俺達が急いで階段を駆け上がり、二階に登ると最初の部屋が見えて来る。そこの扉の窓に近づいて中を除くが、誰もいる気配はなかった。
「いない」
「では上へ」
俺達は次の階に上がり、再びその階層の部屋を覗き込んだ。
すると中に男らが数人いた。
明らかに騎士などではなく、暗い雰囲気をした奴らだった。
「あんな上玉を連れて来て、俺達にゃ指一本触れさせねえなんて、頭もケチだねえ」
「ばーか。あれは人質だ。手を出すわけにゃいかねえんだよ。手なんか出したら殺されるぞ」
「はあ…上級貴族の令嬢なんてよお…たまらねえぜ。ありゃ、まだ男を知らねえ顔してやがった」
確定。
俺は小窓から魔法の杖を刺しこんで言う。
「スプラッシュライトニング」
そのままドアを開けて中に入り、転がっている男達を見て言った。
「こいつらを脱がせて」
プーリャがハッとするが、俺が指示をしたのは化けているのはおっさんらだ。しかも自分の孫娘を犯したいって会話を聞いたからには、こいつらは多分すぐお爺ちゃんに殺される。
裸にすると、それは確信に変わった。
「蜥蜴の入れ墨。足無蜥蜴で間違いない」
スティーリアの恰好をしたルクセンが、血走らせた目で俺に言う。
「こ奴らはどうするのじゃ!」
「どうぞご自由に!」
するとルクセンは、小娘が到底扱えるはずのない大剣を抜いて振り下ろした。三体の気絶した男らの首は、あっという間に体から離れる。
そこでプーリャが聞いて来た。
「足無蜥蜴とは何です?」
「暗躍する影の組織です。この戦争も恐らくはこいつらがひとかみしている」
「なんという事……」
「そして間違いなく私達が探している人もここに連れて来られている。なにがなんでも助け出します」
「わかりました!」
俺達はその部屋を出て、次の階層へと上がる。そして部屋を覗くと、また男らがいた。そいつらは酒を飲みながら、カードに興じている。
こいつらはさっきの奴らより上等な服を着ている。恐らくは、アイツらの上の奴らだ。
俺が窓から魔法の杖を差し入れた時だった。カードに興じている四人のうちの一人が、バッと立ち上がり窓の方に走った。
気づかれた!
「スプラッシュライトニング!」
パリパリパリパリ! と音がして、男達が机に倒れる。だが逃げた男は、窓から飛び出していなくなっていた。
そこでプーリャが言う。
「もう一階上があります!」
「しまった!」
俺達は慌てて階段に登り、一気に五階まで登りつめた。
「ドアをぶち破れ!」
ヴァイオレットになっているレルベンゲルと、スティーリアのルクセンが、身体強化をした武器でおもいきりドアを破壊した。バグン! と吹き飛ぶドアから俺達が飛び込むと、中から叫び声がした。
「ソフィア様!」
「ウェステート!」
だがウェステートは、喉元にナイフを突きつけられており、後ろの男がニヤリと笑っている。
しかし…その顔を見たヴァイオレット(レルベンゲル)と、スティーリア(ルクセン)がポツリといった。
「「ドペル…」」
俺にも見覚えがある。コイツは…第四騎士団の副団長だったドペルだ。変わった事といえば、顔に大きな傷がある事だが、間違いなくドペル本人だ。
「はて…お前達のような小娘は知らんが?」
だがドペルは、相手の見た目がルクセンでもレルベンゲルでもないので気が付いていない。
そして、ルクセンとレルベンゲルは怒り心頭のようだ。
「きさまぁぁぁ! このような所に!」
「もう逃げられんぞ! 腹をくくれ!」
「おーおー。可愛らしい声で、恐ろしい口調で言うねえ。だから女は嫌いだよ」
「ウェステートを離せ!」
「くっくっくっ! コイツはまだ使い道があんだよ!」
俺がアンナに軽く目配せをしながら、スッと魔法の杖を少しだけ前にした時だった。
「なんか見た事ある魔法なんだよなあ…」
バレてる?
だがこのままだとウェステートも巻き込む。
二人とも気絶させるしかないか…。
「ライトニング!」
俺の杖から雷が走るが、なんとその前にドペルがウェステートを抱いたまま、後ろにひっくり返るように窓から飛び降りた。
「きゃぁぁぁ!」
「ウェステート!」
俺達が急いで窓に近寄っていき、外を見ると下からバサバサと羽ばたくワイバーンが上がって来たのだった。
「マズい!」
ワイバーンの口から炎が見えたので、俺はすぐに結界を張る。
ゴウッ! と炎が通り過ぎた。無事な俺達を見て、ドペルが不思議そうな顔をする。
「無事…だと?」
だがウェステートが言う。
「ソフィア様! 危険です! お下がりください!」
これが下がって何かいられるか。
「大丈夫! 今助けてあげる!」
そして空中に浮かぶドペルと睨みあい、俺はシーファーレンに合図を送るのだった。




