第346話 アルカナ共和国王城潜入
俺達は無事に、アルカナ共和国の王都へと侵入した。助けてくれた商人達に別れを告げ街を歩くと、盗賊に襲われたという情報を聞きつけたギルド員が声をかけて来た。
「あの! もし!」
「はい?」
「盗賊に襲われたと聞きました!」
「いえ。何の事でしょう?」
「えっ?」
「ちょっと、何の事だか……」
「失礼しました。人違いのようです」
ギルド員は首をかしげて離れて言った。こんなところで時間を食う訳にはいかない。
「さてと、まずは王城に向かって見ようかな」
「いきなりかの?」
スティーリアの顔をしてルクセンが言う。
「そう。でもまず、マグノリア」
「はい」
「私達が侵入している間に、どこかに潜んで大型の魔獣を見張ってほしい」
「わかりました」
「また逃げられたら敵わないから」
「はい」
「念のため、朱の獅子はマグノリアの護衛の為にここに残ってもらう」
「「「「はい」」」」
「敵はもちろん、まだ私達がここに来ている事に気が付いていない。急襲してウェステートを奪取、直ぐに王都を離脱して野に身を隠し、夜を待ってヒッポの馬車まで走る」
「はい」
「わかったのじゃ」
「腕がなりますわい」
「命に代えても」
そしてシーファーレンが言う。
「それでも、いざとなったら皆で聖女様をお守りしますわ」
アンナも言う。
「そうだ。聖女もそのつもりで」
だが俺は笑う。
「いや。私は地獄を見せてやろうと思っている。だから皆は、容赦なく歯向かう者は倒してほしい。誰に牙をむいたかを教えてやる。もし剣を持つのが女子供だとしても」
俺の言葉に皆は更に顔を引き締めた。俺が女子供に手をかけてもいい、と言うとは思っていなかったのだろう。だが俺にとってはウェステートが最重要なのだ。敵国に来てまで、女の人権がどうのこうのとは思っていない。
「わしの孫の為に…ここまで」
「もちろんそれもあるけど、これは国と国の戦い。戦争の種は、出来るだけ速やかに詰み取る」
「わかったのじゃ」
そうして俺達は、マグノリアと朱の翼と別れる。王城に行ってみると、高い城壁で囲まれていて進入は容易ではないと分る。だがこちらにはシーファーレンがいるのだ。
シーファーレンは俺の手を握って言った。
「フライ」
すると二人がスルスルと浮かび上がっている。俺は既に魔法の杖を構えていて、城壁の上に浮かび上がるとそこにいた衛兵と顔が合う。
「なっ!」
「ライトニング」
その衛兵は感電して倒れた。俺達はそこに降り立って、縄を結び城壁の下へと垂らしてやる。すると縄を伝い次々に仲間達が上がってきて、あっという間に七人が城壁の上に揃う。
「見事なものじゃ」
「慣れっこなので」
「ふむ……」
そして、そこから城内をみるが、特に警戒されておらず平和そのものだった。もちろん東スルデン神国を通り越して、更に奥の自分の懐に敵が攻めて来てるなどとは思うまい。
「その兵士を隠そう」
そうして動かなくなった兵士を縛り上げ、城壁の上からぶら縄で下げるようにした。俺達は城壁の内側に向かい、下を見下ろすが敵はいないようだった。
「シーファーレン。落下速度を緩められる?」
「はい」
シーファーレンがミリィの姿で答えた。そして俺は皆に集まるように言う。
「ではここからは、容赦なしで。全員に強化魔法をかける」
皆が頷く。
「身体強化。筋力上昇、筋力最上昇、脚力上昇、脚力最上昇、認識阻害、敏捷性上昇、敏捷性最上昇、思考加速、思考加速最上昇、防御力向上、防御力最向上、自動回復」
皆の体がパンパンと輝いて行く。ルクセンがスティーリアの顔で笑う。
「なんじゃ。若返ったようじゃ!」
レルベンゲルも言った。
「ど、どうなっているんだ? 物凄く力が湧いて来る」
ネル爺もアデルナの格好で言った。
「信じられんですじゃ! こりゃ凄いわい!」
出来る限りの身体強化をかけた。更に、俺のそばからあまり離れないように言う。緊急時には結界で魔法から守るためだ。
「じゃ、飛び降りよう」
スッと皆が壁から飛び降りた。すると途中でシーファーレンの魔法が発動し、降下がゆっくりとなりそっと地面に降りる事が出来た。
「走れ!」
俺達は一気に庭を駆け抜けていく。そのスピードは尋常ではなく、あっという間に城の壁に辿り着いた。周辺に騎士はおらず、俺達は中の様子を伺う。
「シーファーレン窓の鍵を」
「はい」
シーファーレンが魔法で、鍵を中から開けた。するりと窓を開けて俺達が侵入していく。調度品などがあるが、ここは客室か何かだろう。俺達は入り口に行って、薄っすらと扉を開ける。
シーファーレンが言う。
「通路には人はいないですが、奥に人の気配はするみたいですわ」
「ウェステートは何処に監禁されているかな?」
するとルクセンが言う。
「隔離塔か地下牢であろうか」
「ならまずは地下牢へ」
「敵陣の真っ只中ですな」
そこでアンナが言った。
「聖女の身体強化を思い知る時だ。特に辺境伯、あんたの力は最盛期よりも上がっている」
「ふむ。ならば暴れ甲斐があるというもんじゃな」
そしてシーファーレンが言う。
「それと…ここには聖女様がおられますわ。想像すれば身震いするほどです」
「ふむ」
そして俺が言う。
「行くよ」
皆が頷いたので、俺達は廊下に踊り出た。もちろん認識阻害をかけているので、簡単に敵に見つかる事はないだろう。通路を進んで行くと、メイドや使用人もいるようだ。
「申し訳ないが。スプラッシュライトニング」
パッパッパッパッ!
部屋の中が光り輝き、俺達がドアの中を見ると、皆が感電して倒れていた。強く魔法をかけてはいないが、体は完全に麻痺してしまっただろう。
そして俺達が進んで行くと、シーファーレンが言った。
「先に集団の気配。使用人でしょうか? 下にも人の気配がします」
「じゃ。下で」
俺達は階段を地下へ下がる。するとそこには、貴族風の姿をした男が二人話をしていた。
「王族じゃろうか?」
とルクセンが言うが、俺にはそんなことどうでも良かった。
「どちらでも。 スプラッシュライトニング」
そして二人がごとりと倒れる。アンナとリンクシルが素早く近づいて、スルスルと引っ張ってきて階段のこちら側に隠れた。物音に反応して扉の中から誰かが出て来たが、廊下に何もないことを確認すると扉を閉めた。
「行こう」
そして俺達は地下へと潜入していくのだった。




