第344話 拷問による強要
敵国に何度も潜入し、悪そうな奴を片っ端から攫って来た。ルクセンもシベリオルも自分の孫の為、そして娘の為ということもあり必死だ。離れた小屋で繰り広げられている拷問は熾烈を極めており、もう助からないような状態の奴もいた。
「エリアメギスヒール!」
俺は瀕死状態になった、悪そうな奴らをフル回復させた。
「な、なんだぁ…指が戻った…」
「ほ、本当だ痛くねえ」
「歯が生えて来た! どうなってやがる!」
そして俺はソフィアの顔で言う。
「拷問官の皆様。死にそうな人は回復させました。また思う存分やってあげなさい」
流石は辺境伯。拷問専門の人間もいるようで、彼らは無表情に淡々と肉を切り裂いている。
「あ、悪魔!」
「人間の皮をかぶった悪魔だ!」
なんとでも行ってくれ。俺はウェステートさえ助けられれば何でもいい。
「生意気な口を利くようです。恐らくは痛みが足りないのでしょう」
「ちょ、ちょっとまってくれ!」
「たのむ! おりゃ知らねえんだ!」
「知ってる事はしゃべった?」
「えーっと、あと三十人ほどいるから、あんたらの替えはいくらでもいるんだけどね。とにかく知っている事の断片でもいいから、必死に思い出すと良いよ」
「それを言って、家族まで来たんじゃねえか!」
「そうだね。飛んだとばっちりを受けた人も、どうせ同じ運命。まだの人は早く家族の住んでいる場所を吐けばいい。半分以上は家族の居場所を吐いたから、全員ここに連れて来たんだ」
「外道!」
「さあ始めて」
「ぎゃああああああ」
「うがああああああ」
「おげぇぇぇぇぇぇ」
ミリィの顔をしたシーファーレンとマグノリアは青い顔をしている。リンクシルの顔をしたアンナだけが、全くの無表情でその光景を見ていた。ルクセンとシベリオルは必死なので、難しい顔をしながらも凝視している。
すると嫁と子供の顔を見た途端に、何人かが素直に話を始めた。
「言う! たのむ! 子供の嫁は関係ねえ!」
「おっ! ようやくか」
「ワイバーンを使役してるって言ったよな! だとすれば間違いなく、足無蜥蜴の仕業だ! あの集団の首領が大型の魔獣を使役すると聞く!」
すると悪い奴らが一斉にそいつの顔を見た。どうやら死んでも言えない情報なのだろう。
だが…。
「そんな事はだいたい知ってるんだよ。そいつがどこにいるか知りたいんだ。どうでもいい情報で、この場から逃げようたってそうはいかない。ワイバーンが何処にいるのか教えろ」
「分らねえ! 本当だ! アイツらは至る所にいるが、どこにいるかは誰も知らねえ!」
「それじゃ情報が足りない。とにかく思い出すまで待つ」
「知らねえものを思い出せねえ!」
「そんなの私に関係ない」
ブルブル震えた家族の中の子供が言った。
「蜥蜴の入れ墨だ! そいつらは体のどこかに蜥蜴の入れ墨がある!」
皆が子供を睨む。
「なーんだ。そんな簡単な事だったか。拷問官のみなさま、騎士の皆様ここにいる全員を裸にしてください。家族も全員」
「「「「「「は!」」」」」」
そばで見ているルクセンもシベリオルも、微妙な表情で俺を見ている。
大好きなウェステートが連れされているのだ。俺の心中はこれでも生ぬるいとさえ感じていて、最終的に女子供だけを帰してやろう、くらいにしか思っていない。
そんな時に、後で捕まえて来た一人が突然逃げようとする。しかし拷問官に縛られているのでバタバタするだけで、どうする事も出来ない
「ライトニング」
バリッ!
そいつの意識を刈り取る。
「脱がせましょう」
そいつを脱がせると、なんと尻に蜥蜴の入れ墨があった。
「みーつけた」
するとまだ拷問を受けていない、新参の誘拐してきた奴が裸で騒ぎ出す。
「もうダメだ。足無蜥蜴に殺される」
だが回復してまで拷問を受けていたヤツラが、ホッとした顔で言う。
「バカ野郎、足無蜥蜴に捕まってなぶり殺しにされた方が楽だ」
「そうだ…。こんな恐ろしい拷問…。死にそうになると生き返らせられる」
「無理だ…もう。これ以上拷問するようなら殺してくれ」
だがもう俺の興味はそいつらには無い。
そして最初の冒険者が、ワイバーンの依頼を持って行ったのかを聞いた。
「冒険者のあなた」
「は、はい…」
「なぜ、その依頼を受けたのかな?」
「その依頼を足無蜥蜴の連中が見て、暴れ出す前になんとかしようと思った。その前に足無蜥蜴に接触して、教えてやれば周りに被害が及ばないと思ったんだ」
「足無蜥蜴はあなたの国でどんな存在?」
「盗み、殺し、拷問、誘拐、人身売買、麻薬。手段は択ばない、冒険者ギルドも手を出さない幽霊のような犯罪集団だ」
「ギルドも手を出さない?」
「国のトップの教皇ともつながっているってえ話だ」
「東スルデン神国の?」
「そう言われている!」
すると他の奴が言った。
「アルカナ共和国の王族ともつながりがあるらしい! だから何をされたとしても、泣きつくところは無いんだ。睨まれたら最後、一族郎党骨までしゃぶりつくされるか、利用価値が無ければ残忍な方法で殺される」
「野放しというわけか」
「そうだ。足無蜥蜴は殺してしまった方が良い。軍隊なんか関係なく、貴族でも殺しに来るだろう」
すると悪い連中が冒険者を睨む。
「バカ野郎……。それを言ったら俺達は、ここで皆殺しに合うぞ」
「あー、元からそのつもりだったけど気が変わった。実はこちらの貴族の娘さんが誘拐されたんだけど、それを命がけで探し出したら生かしてあげる。そしてその足無蜥蜴の情報は高く買い取ってやるし、そもそも足無蜥蜴とやらを許すつもりは毛頭ない。もしその約束を違えば、また攫って来て何度も生き返らせて拷問を続ける」
「本当か?」
「ただし開放するのは、家族の存在を教えてくれた人だけだよ。家族はこちらで預っておくから、家族の為にも精一杯頑張るといい」
「他は?」
「まだ知ってる事が無いか、体に聞いてあげる」
「や、やめてくれぇ!」
「たのむ! もう!」
「家族がいない人はどうすりゃいいんだ!」
「知らんがな」
そして俺は踵を返して、足無蜥蜴の構成員の側にしゃがみ込む。
「さて、徹底して聞く前に、ちょっと話し合い」
そう言って俺は、アンナとシーファーレンとマグノリアを外に連れて行く。外に出たところで三人に言った。
「見てるの辛いでしょ。外で待ってていいよ」
だがリンクシルの姿をしたアンナが言う。
「大したことは無い。聖女と一緒に居る」
「わかった」
ミリィの姿をしたシーファーレンも言う。
「聖女様はそうとうお怒りだと分りましたわ。私も目を逸らしません! 聖女様のおそばにおります」
「うん。ゴメンねシーファーレン」
「いいえ」
そしてマグノリアも言う。
「私もずっといます! 足無蜥蜴は私を使って、聖女様を殺そうとした。その事は絶対に許さない!」
「無理はダメだよ?」
「いえ! 無理じゃありません!」
「わかった」
そして俺はヒッポを見て言う。
「ヒッポにもイヤな仕事させちゃったなあ…」
「ぐるぅぅぅぅぅ!」
俺に何か言って来たので、マグノリアに聞く。
「何ていってるの?」
すると、マグノリアがバツ悪そうに言う。
「お腹減ったって」
「ふふふ。そっか、すっごく頑張ったもんね。じゃあ一旦ごはん食べて来ると良い」
俺達はヒッポの馬車を外して、ご飯を食べに飛ばしてやった。ヒッポが戻ってきたら、家族を人質に取った悪い奴らを、向こうの国に放してウェステートの足どりを探らせる。もちろん俺達もルクセンが潜入させている間者も一緒に。
ぜってぇ許さねえ。
「さてと、足無蜥蜴に話を聞きに行こうかな」
「ああ」
「「はい」」
そして俺はぽつりと言った。
「あのね」
「ん?」
「「はい」」
「ウェステート誘拐に関連した奴らは皆殺しにする。もしその考えについていけないと思うなら、私一人でやるけどどうだろう?」
「聞くまでも無い」
「そうです。私は聖女様に全てを捧げます」
「私もです」
マジで。もし国家が絡んでいたら、その政府は徹底的に潰す。蜥蜴の入れ墨をしている奴はこの世界に生きてる場所は無い。三人の答えを聞いて冷静にニッコリ笑う。
「ありがとう」
踵を返し、俺達は拷問小屋へと入っていくのだった。




