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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第334話 女性の組織づくりの難しさを知る

「きゃああああああ!」


「そっち行ったわ!」


「ま、まってまって!」


「うそうそうそうそ!」


「いやああああ!」


「むりむりむり!」


「み、皆さん! 落ち着いてください! 大丈夫です!」


 スライムである。


 俺も今までスライムなど見たことは無かったが、こちらの地方にはスライムがいるらしい。まあ、森に入ったのだからスライムくらいいるだろう。


 それはいい。だが騒いでいるメンツが問題だった。


 研修を受けている女の子達が、唖然としてそれを見ていた。


 てんやわんやになっているのは、なんとシーノーブル理事会と聖女邸の面々なのである。教える側がめちゃめちゃテンパっているのだ。これでは教育する側として全く示しがつかない。それを一生懸命なだめようとしているのは、辺境伯令嬢のウェステートだった。


 領主の娘とは言え、流石は地方の子は逞しい。それに対して都会の女の子たちの、なんと脆い事。まあ前世の日本でも、都会っ子と田舎っ子ではこんなもんだったかも。


 でも…なんか可愛い。好き。


 いや…。


 だが、無理もない。


 ソフィアは貴族としては最高位の公爵令嬢で、もちろん森でスライムなどにあった事がない。魔物としては最高のネメシスには遭遇した事はあるが、スライムには会った事がないのだ。


 ミリィは、王宮付のメイドとして育てられてきて、森で魔獣に出会った事などは無い。


 スティーリアは、物心ついたころから教会勤めで、森に入ってスライムと会った事など無い。


 ヴァイオレットは王宮の文官で、もともとガリ勉だったのでアウトドアは苦手。


 マロエもアグマリナも伯爵令嬢だったので、もちろん魔獣に相対するのは初めて。


 そんな彼女らが森に入って、皆に混ざって薬草を採取していたのだが、突然スライムがドサドサと木の上から降ってきたのである。


 シュパン!


 ロサがスライムを斬る。まあこれも高等技術らしくて、スライムは核を斬らないと死なないらしいのだ。だがロサ達はAランク冒険者なので、スライムなど、どうという事は無い。


 もちろんアンナもリンクシルも手を出す事は無かった。こんな魔獣など、彼女らにとってみれば練習にもならず狩る必要すらないという事だ。寄ってきたら振り払うくらいにしか考えていない。


 だがそこで優しい声が上がる。


「だ、大丈夫です! お姉さま方! これはスライムという弱い魔獣です!」


 そう言ってスライムを退治しているのは、山吹狐のリーズンだった。彼女らは四人でチームを組んでスライムを追いやり、逃げたところで待ち伏せして剣で何回も刺していた。


 教え子達が出来ているのに、教える側がキャーキャー言っているのである。


 するとソフィアがようやく気を取り直して、キリリとした顔になって言った。


「すみません。取り乱しました。突然降ってきたので、どうしていいか分からず」


 ロサが答える。


「大丈夫ですよ、お嬢様。スライムなんて大したことありませんから」


 むしろ他の街娘達にも驚いている子はいなかった。こちらの田舎ではスライムなど、どうという事は無いのだろう。


 するとミリィが言う。


「見た事無かったのですが、気持ち悪いものですね」


 それはなんとなくわかる。


「べとべとだしね」


 そしてロサが言う。


「いい経験です。皆も貸与された剣を使って、スライムをやって見ると良い」


「「「「「「「はーい」」」」」」」


 そうしてヴィレスタンの娘達は、ざくざくとスライムを刺し出した。あっという間に全部のスライムが死んで、理事会と聖女邸の面々は少々バツが悪そうだ。


 俺がマグノリアに聞く。


「使役しなかったんだ」


「訓練だと思いましたので」


「そのとおり。では皆さんこの調子で薬草取りを続けましょう」


「「「「「「はーい」」」」」」


 こちらが用意したお弁当を食べ、午後もちょっと採取したところでロサが言う。


「本日はこのあたりで帰ります」


 俺が聞く。


「えっ? もう?」


「はい。森は夕方からが危険ですから、もうそろそろ危険な魔獣も活動し始めます。いつもの私達はここからが仕事ですが、研修の彼女らには荷が重いのです」


「わかった」


 皆で森を出て草原を歩いているうちに、確かに太陽が傾いてオレンジ色になって来た。これだとヴィレスタンの都市につく頃には、完全に夕方になるだろう。それを計算しての動きに、俺も皆も納得している。むしろ理事会と聖女邸の人間達が、へえー! と学びが大きいようだ。自分達で自ら旅行したり、森には行ったりすることは無いので、いい経験だったのかもしれない。


 辺境伯邸に到着し、研修の子らには銀貨一枚ずつを渡し、また明日の朝に来るようにと伝えた。


「終わった終わった」


 するとアンナが俺においでおいでをした。


 俺が、そそくさとアンナのところにいくと、アンナが外に俺を連れ出して言う。


「明日は編成を変えた方が良い」


「……だよねー」


「聖女邸の面々は、貴族令嬢と共に読み書きの勉強に周ってもらおう。そしてシーノーブル理事会の三人もそうした方が良い」


「ごもっともです」


「仕方ないので、わたしとリンクとマグノリアが同行する」


「なら何かあった時の為に、私も行くよ」


「それを公爵令嬢につたえてくれ」


「了解」


 アンナとリンクシルは、ここから鍛錬を始めるようだった。そうして俺は辺境伯的に戻る。


 俺はソフィアを探す。


「ソフィア!」


「聖女様! 今日は本当に申し訳ございませんでした。明日はもっとしっかりやります」


「いや…」


 どうしよう、ソフィアを傷つけたくないぞ…。うん。


「今日一日研修をやってみて思ったんだが、このやり方だと研修の子らの勉強が遅れてしまう。もっと効率よくやらないと、ロサ達も隅々まで目が届く訳じゃないしダメだと思った。二十人を一度には多すぎるんだよ」


「確かにそのようですね」


「なので、ソフィアとマロエとアグマリナ、あと聖女邸の面々には座学を教えて欲しい。今日は残された貴族令嬢達もなにをしていいか分からなったようだし、勉強の教え方を教えて欲しいな。十人十人で研修者を分けて、毎日交互にやった方が効率がいいと思う」


 するとソフィアは少し考えて頷いた。


「わかりました。その通りだと思います」


「お願い。ソフィアが内勤の人達をリーダーとして導いて」


「はい。お任せください」


 ほっ。納得してくれた。というか、その方が遥かに合理的だからなあ。


 そして俺が部屋に戻ると…。


「「「「「申し訳ありませんでした!」」」」」


 聖女邸の面々が平謝りして来た。


「いやいや! いいんだよ! 違うんだよ! 私のミスなんだよ。適材適所じゃなかった。明日は研修者を半々に分けるから、君らは座学を教えてやってほしい。リーダーはソフィアで、勉強や日々の活動を教える側になってほしいんだ」


「「「「「……かしこまりました」」」」」」


「気にしないで。むしろ朱の獅子やアンナ達に、座学を教えるのは無理なんだから。出来る人が出来る事をやった方が良いってだけ」


「「「「「はい!」」」」」


 納得してくれたようだ。


 すると居残りしていたアデルナとルイプイとジェーバが言う。


「本日は大変だったご様子ですね」


「私達がやっつけたのに」


「ほんとです。マロエ様やアグマリナ様をいじめる魔獣は許さない!」


「ホントそうだね。でも君らが残った令嬢を世話してくれたおかげで、彼女らも困らなかったようだ。明日はソフィアやマロエやアグマリナが残るから、彼女らの身の回りを頼むよ」


「「「はい」」」


 そして俺はため息をついて、ミリィに言う。


「あー、ミリィ。お茶もって私の部屋に…、先に行って待ってるから」


「かしこまりました」


 そうして俺は自分の部屋にとぼとぼ戻るのだった。


 前世ではヒモしかやった事無いのに…、まさかこちらに来て中間管理職みたいな事をするとは思っていなかった。ハッキリ言って今までの聖女の動きとしては、トップダウンで俺が決めた事をただやるだけだった。しかし女性達が増えて、それを組織として稼働させる事の難しさを思い知る。


 あー、女の地位向上って大変。


 バフッ。俺はベッドにうずくまり、自分の力の無さを痛感するのだった。

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