第325話 貴族令嬢たちのお風呂タイム
この研修旅行で俺の最大イベントの一つ、大浴場での全員入浴タイムがやってきた。この世界に来てから、ずっとこの日を待ち望んでいたと言っても過言ではないだろう。いや…間違いなく、俺はこの日の為に生き延びてきた。
はたから見れば、これは完全に百合展開である。だが俺の中身はヒモ男…純粋な百合ではない。しかし! 俺は百合に素晴らしき可能性を見出しつつある。貴族令嬢たちの裸の付き合いに、女同士の戯れを見るというのもまた一興。
さらにソフィアとウェステートが幼馴染同士だった! その二人が仲良しで、今日の夜は二人で寝ると言っている。何故か俺は、そこに入ってもいいよ! という許可を得たのである。
僥倖である!
目の前ではソフィアが令嬢たちに話をしている。
「さあ! 皆さん! 長旅で疲れた体を休めるために、お風呂を用意していただきました!」
ぱちぱちぱちぱち!
やっぱり女子は身だしなみが一番気になるところ。しかもきちんとお肌の手入れをするチャンスも無かったし、和気あいあいとした雰囲気になっている。
だが…そこで予想外の事が起きた。
「では聖女様。皆様にこちらをお配りします」
ウェステートが俺の側に来て言い出したのだ。
一体何を配るというのだろう? 新作の石鹸か何かだろうか?
だがウェステートが使用人に配らせたのは、何やら折りたたまれた白い布だった。
なんぞ?
皆がそれを広げ始めてきゃぴきゃぴ言い始める。
「ウェステート、これは?」
「湯あみ用の肌着にございます」
「湯あみ用の肌着?」
「ええ。何かおかしかったでしょうか?」
「いや。ちょっと良く分からなくて、そう言うのがあるの?」
「ああ。ヴィレスタンの大衆浴場ではよく使われているのですよ。裸でお風呂に入るのに抵抗がある方がいらっしゃるので、こちらを来てお風呂に浸かるのでございます」
なにそれ、なにそれ。聞いてないよぉ。うそでしょ?
「は、はは。えっとこういうのあるんだ?」
「貴族はあまり大衆浴場に行かないかと思いますが、こういうものがあるのです」
「へぇー」
すると男爵の子が手を上げる。
「はい。私も地方に行った時、大衆浴場で見たことがあります」
「な、なるほどね。へえー」
するとソフィアがニッコリ笑って言う。
「非常に勉強になりますね。その土地や地方での風習を知るというのも、勉強の一つかと思います」
「だよねー。そうだよねー」
「ではみなさん! お風呂の準備は出来ておりますのでどうぞ」
そうして俺達はヴィレスタン辺境伯邸の、大きな大浴場に案内された。流石は辺境伯の大浴場はデカくて、貴族の子らが全員入っても余裕だった。
ここだ! ここしかない!
俺はそこで、あえてゆっくりと脱ぎ始める。とにかくソフィアが脱ぐところを、この目に焼き付けねば死んでも死にきれない。
御令嬢たちはきゃっきゃ言いながら服を脱ぎだしているが、俺はただ一点を凝視し続けた。いよいよソフィアの生着替えを、この目で見る事が出来るぅぅ!
「聖女様」
ウェステートから声がかかる。
あ、あの…いま一番大事な所だからちょっと…。
「聖女様」
「あ、ああ。はい? 何?」
「おひとり様が、ちょっと具合が悪いと言っております」
「えっ?」
俺がそちらを向くと、数人の令嬢が俺を見ていた。どうやら俺にどうにかしてもらいたいようだ。
「わかった! 誰?」
俺が行くと、そこに子爵令嬢のミステルが座っている。
「す、すみません。ちょっと疲れたようで」
「大丈夫だよ。私は聖女だからね」
そして治癒魔法をかけてやり、気付けの魔法を施す。
「良くなりました。ご迷惑をおかけしました」
「お風呂の出入りはゆっくりね。こういう時は皆さんも気を付けるのですよ」
「「「はーい」」」
あ…。
ソフィアが居ねえ。
仕方がないので、ミステルに湯あみの服を着せて俺が風呂場に連れて行く。湯けむりの向こうでは、御令嬢たちがワイワイと体を洗っていた。俺はミステルを座らせて周りの子らに言った。
「協力し合って洗いましょう」
「「「はーい」」」
俺がきょろきょろ見回していると、ソフィアがもう体を洗い終えていた。
「うっそだろ!」
すると側にいたマロエが驚いて聞いて来る。
「ど、どうなされました?」
「いや…何でもない。私も体を洗おうかな」
「あ、洗って差し上げます!」
悔しいので、マロエの豊満な体でも触るとしよう…。
「じゃあ先にマロエを洗ってあげるよ」
「もう洗いました」
「そっか」
するとアグマリナも言った。
「では私もお手伝いします」
俺は二人にごしごし洗われながら、これじゃ聖女邸と何も変わらないと思っていた。じゃばじゃばとお湯をかけられて泡を流し、髪の毛を頭の上でまとめられる。
「ありがとう」
「日頃の感謝です」
「気を使わないでね。研修なんだから」
「「はい」」
そして俺は湯船に行く。すると貴族の子らは円をかくようにして湯船につかっていた。
「私も混ぜていただこうかな」
「「「「はい!」」」」
すると女子たちが間を開けてくれた。
ええわあ…可愛い貴族子女達との入浴。
ちゃぷ。俺とマロエとアグマリナもお湯に浸かると、目の前にはソフィアがいた。近づきたいが他の女子の手前もあり、なかなかソフィアに近づく事が出来ない。ソフィアは楽しそうに他の女子と話をしている。
すると、そこにウェステートがやって来て聞いてきた。
「聖女様。お湯加減はいかがでございますか?」
「丁度いい。熱すぎずぬるすぎず、長く浸かっていられるみたい」
「それはよかった。では失礼します」
そうしてウェステートはさっさと出て行ってしまった。
そっか…エスコートしている側だから気を使って入らないのか…。ま、まあいい。
ウェステートを見送って振り向くと、ソフィアと数人の女の子が湯船から上がっていくところだった。
でも…。白い湯あみ用の肌着がぴったりくっついていて、ボディラインがバッチリ見えている。
うわあ…すっごくスタイル良いんだ…。
それでもソフィアは恥じらいながら、胸元を隠していた。
そ、それをどうか…下ろして…。
だが…お尻はぴったりフィットして、少し肌色が透けている。
「お尻…」
「お尻がどうされました?」
俺の目の前に、アグマリナの顔が現れる。つい俺は心の声が出てしまっていた。
「えっ。いや、皆もっとゆっくり浸からないのかな? と思って」
「あ、お風呂の後に、ソフィア様が。研修の感想会を行われるそうですよ」
「そうなんだ…」
そう言えば、そんな事言ってた気もする。俺は浮かれすぎて話半分に聞いていた。その時間があるからか、次々と女子たちが出て行ってしまった。
マジか…。
するとそれと入れ違いに、聖女邸のいつもの面々が入って来た。ミリィにスティーリアにヴァイオレット、アンナとリンクシル…そしてアデルナおばちゃま。
「貴族の方々がおあがりになったので、お湯をもらいに来ました」
ミリィが言う。めちゃくちゃ不完全燃焼の俺は皆に言った。
「身内だけなんだし、湯あみの服はいらないね! 皆脱ごう!」
「「「「「はい」」」」」」
俺の目の前で、身内の裸があらわになる。
この長旅の癒しは、ここでしてもらうしかねえぜ!
俺は湯船の縁にすわって、じっと身内の湯あみ姿を目に焼き付けるのだった。




