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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第五章 半百合冒険

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第322話 貴族の娘達にモテる方法を知りたい

 ヴィレスタン領までの道中にある険しい山間の峠道、隊列の進行も遅くなり怪しい雲行きとなった。山の麓で一泊し山を越えて降りたところで、また一泊するような険しい峠。天候が崩れる前にとっとと峠を下りたいところだが、そんなところで初めて魔獣に遭遇する事になる。


 道の先に立ちふさがっている、でっかい熊を見て貴族子女達が青ざめている。


 護衛の騎士達も騒いでいるが、聖女邸の面々は落ち着いていた。

 

 だって、Aランクの朱の獅子もいるし、なんたって特級冒険者もいる。だから特段慌てる事も無く、俺はソフィアに聞いた。


「ソフィア」


「は、はい!」


「これは一種の見世物になると思うんだけどさ。誰がやろうかって話になってるんだよ」


「どういうことですか?」


「私か、アンナか、朱の獅子、マグノリア? オーガグリズリーはスッゴイ怖い魔獣だけど、ワイバーンとかヒポグリフなんかの餌なんだよね」


「そうなのですね? どう違うのですか?」


「派手だけど一瞬なのは私。もっと一瞬なのはアンナ。朱の獅子だと見ごたえあるし、マグノリアのヒッポはグロ映像になると思う」


「で、ではマグノリアさんは却下で」


「私のお勧めは朱の獅子かも。私やアンナだと一瞬で何が起きたか分からない」


「では朱の獅子様に」


「わかった」


 そして俺は皆に言った。


「じゃあ…ロサ達で倒してもらえる?」


「元より護衛は私達です。もちろんやらせてもらいます」


「素材はあげる」


「ありがとうございます」


 そう言って朱の獅子の四人が、オーガーグリズリーにかかっていく。まずはシャフランがロサとパストに身体強化をかけ、その間にイドラゲアが弓の狙い付けている。


「いける」


 ロサが言うと、イドラゲアが弓を放った。


 ピューンという音をたてて、オーガグリズリーの頭上を矢が過ぎていく。オーガグリズリーがそれに気を取られているうちに、ロサとパストが一気に距離を詰めた。そしてシャフランが後方から、ファイアボールを放ってオーガグリズリーに命中をさせる。オーガグリズリーはたまらず、迫る冒険者に爪を振り下ろす。


 ガキィ!


 タンクのパストが鉄の盾でそれを受け止め、その隙にロサがスパン! とオーガグリズリーの足を斬る。


「ガアアアアアアアア!」


 オーガグリズリーは足を切られてバランスを崩し、四つ足の体制になった。そこでイドラゲアが次の矢を放つ。その矢はオーガグリズリーの顔の前で破裂した。刺激物の粉が炸裂した事で、オーガグリズリーは頭を掻きむしるようにしている。


 そこにパストが大盾を前に、ドン! とオーガグリズリーにぶちかましをかます。目が見えていないオーガグリズリーは、やみくもにパストに爪を振り下ろした。


 タタタ! とロサがパストの背中を駆けあがり、オーガグリズリーの頭上に踊り出た。そして次の瞬間。


 ズン!


 脳天から真っすぐにロサの剣が突き刺さっていた。ぼたぼたと口の所から血を流し、ロサが剣を抜くとズズゥンとオーガグリズリーが倒れる。ビュン! とロサが剣の血を振り払って鞘に納めた。


 すると貴族子女達が言う。


「か、カッコイイですわ」

「あれが…シーノーブルの騎士様…」

「ロサ様…」

「パスト様…」


 えっ! なんかめっちゃ頬を染めて憧れてるんですけど! そうか…彼女らは実戦なんて見た事無いから、今のでもめっちゃカッコイイって思っちゃうんだ。こんな事なら…俺がやっておけばよかった…。


 貴族子女達が目をキラキラさせているのを見て、ソフィアが満足そうに言う。


「シーノーブル騎士団の実力を魅せれましたね!」


「あ、ああ…そうだね。よかったよ。みんなねえ…」


 そこにロサ達も戻って来る。そして俺が言う。


「荷馬車を一台空けるから、それに積むといいよ」


「ありがとうございます」


 皆で荷物が積み込んである荷台から、それぞれの馬車に荷物を移し替えて一台を空けた。男もいるので皆でオーガグリズリーを荷馬車に乗せ、再び峠を下る道へと向かうのだった。


 馬車に乗りアンナに言う。


「なんかさ、朱の獅子の戦いを女の子たちが気に入ったみたい」


「派手ではあるな」


「私とかアンナだと一瞬だよね?」


「そうなるだろうな」


「なんか私らでも目立つ倒し方とかあるかな?」


「目立つ倒し方?」


「なんか苦戦して勝つみたいな」


「それにどんな意味がある?」


「意味は特にないけど」


 女子受けがいいという以外は。


「まあそうだな。聖女がやるなら、必要以上の力になるが特大の雷が良いだろう。だが…魔獣は消し炭になって何も残らんぞ」


「そうかあ…素材を考えるといただけないなあ」


「それか聖女が派手に見えるというなら、相手は盗賊がいいだろう。盗賊ならば電撃は派手だ」


「なるほど! 盗賊か! でもこんな隊を盗賊が襲うと思う?」


「思わん」


「だよねー!」


 どうやら俺の見せ場は作れなそうだ。


 だがアンナが言う。


「見せ場など必要ないさ。わたしもソフィアもシーファーレンも、聖女がネメシスを砕いた痺れる場面を見ているからな。あのような場面、一生に一度きりだろう。わたしはこの目に焼き付いている」


 そうだった。大勢の子に、きゃーきゃー言われるより、大事な三人から思われてる方がいいよな。


 だが馬車の後ろの方で、貴族子女達に声をかけられているロサとパストが羨ましかった。


 そんな俺の考えている事を見抜いたのか、同乗しているアデルナがこっそり耳元で言う。


「聖女様。女は…最終的には物に弱いものです」


 そうだ…そんなのは今世でも前世でも変わらぬ事実。ヒモだった俺ともあろう者が、目先のカッコよさに引っ張られてしまうとは情けない。


「アデルナ。ケーキの材料は積んできているね?」


「もちろんでございます」


「じゃあ、今日の夜…。わかるね?」


「御意」


 なんだかアデルナおばちゃんが、だんだんと俺に毒されてきている気がする。でも彼女が俺を理解してくれているおかげで、聖女邸でのハッピーな暮らしが実現できているのも事実。やはり年の功なのだろう、俺が女性が好きという事をはっきり認識してサポートしてくれているのだ。


 きっと…こう言う人を一人でも多く増やす事が、俺の願望を達成する近道なんだろうな。


 その夜。アデルナはきっちりと任務を遂行し、女達にケーキを振舞ったのだった。魔獣討伐よりも、遥かに色めきだったのは言うまでもないだろう。

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― 新着の感想 ―
アデルナおばさまが聖女ちゃん専属の諜報員みたいになってるの面白いw
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