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ヒモ聖女の半百合冒険譚 ~美女に転生した前世ヒモ男は、令嬢たちを囲って百合ハーレムを作りたい、ついでに世界を救う~  作者: 緑豆空
第四章 異世界聖戦

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第305話 バケモノ扱いされそうになって焦る

 まずはトリアングルムの第二王子、メルキンの挨拶から始まった。メルキンはルクスエリム王やヒストリア王国の重鎮の前で、俺が国を救ってくれた事を事細かに説明する。それを聞いて重鎮たちは驚きながらも、満足そうに相槌を打つ。


 それにプラスして、俺に対しての献上品の詳細を聞いて驚いていた。確かに破格だと思う、俺自身も勝手にやった事だけに、なぜそこまでする必要があったのかを知りたい。すると俺の代わりにルクスエリムが尋ねた。


「まるで我が国が軍隊を差し向けて、貴国を救ったかの如き褒賞であるな。貴国ではそれほどまでに、今回の事に対して恩義があるとお考えなのかな?」


「もちろんです」


 だが疑り深い、宰相のザウガインが聞く。


「それにしてもですな王子。その褒賞は我が国にではなく、聖女様へ送られるとの事。個人に対しての献上品としては、いささか度が過ぎているとも思えますがな。聖女様個人を、まるで国そのもののように考えたと言ってもいいほどの褒賞です」


 しかし、さすがは意気衝天の男であるメルキンは堂々と言う。


「皆様は、あのバケモノを見ておらぬからそう言われるのでしょう」


 ルクスエリムが聞き返す。


「ネメシスの事かな」


「はい。あれはこの世のものではありません。あのまま野放しにしていれば、我が国はおろか周辺国家をも壊滅させてしまったでしょう。それは貴国にしても同じこと、それを少数の被害で聖女様は食い止められたのです。我が国の軍隊が総力でかかっても、絶対に無しえない事です」


「わが国にも優秀な騎兵はおるがな」


「恐れ入りながら申し上げます。恐らくは、貴国の全軍をもってしてもあれに敵うとは思えません。あれは、世界をも滅ぼす諸悪の根源であると断言いたします」


「それほどまでじゃったか…」


「はい」


「しかし、個人に対してそのような破格の褒賞には結びつかん」


 するとメルキンはしばらく沈黙する。皆も何を言うのか静かに待った。するとメルキンは俺をチラリと見て意を決したように言う。


「正直に申し上げましょう」


「お聞かせ願えるか?」


「はい。わが父もそしてトリアングルムの重鎮も、ただ感謝の意だけでそうした訳ではありません」


「というと?」


「聖女様の前で言うのは誠に申し訳ありませんが、我がトリアングルムは聖女様を恐れています」


「聖女を恐れる?」


「はい。あのネメシスをも滅ぼす力…それをもし我が国に向けられていたら、ネメシス同様に我が国はなすすべも無かったでしょう」


 するとそれを聞いた重鎮たちがざわついた。もっともだという声、そこまでではという声が半々っぽい。


「…なるほどのう。それほどまでに鮮烈であったと言う事だろうか?」


「我々は聖女様を恐れ、怒りを買う事のないようにという道を選んだのです」


 すると皆の視線が俺に向かって来た。ルクスエリムが何か喋れみたいな顔をしている。


 なんも言う事ないんだけど。


「えー、恐れ入ります。メルキン王子。私には貴国に対し刃を向ける理由がありません。ましてやヒストリアの経済が破綻しないように、物資を買ってくださっていた国に、何の恨みが御座いましょう」


「しかし、ズーラント帝国の件があります」


「あれは向こうが攻め入って来たからです」


「聖女様ひとり。単体で、帝国を追い払ったと聞き及んでおりますが?」


「えーっと。それは半分事実ですが、条件が重なってそうなったまでです」


「それに西側諸国が静まったという話も聞いております」


「それは、たまたま隣国の侵入者をつかまえる事が出来たからです。偶然にもその場所に居合わせたと申しますか…」


「それで、今回は偶然にも我が国に居たと?」


「それは…そうです」


 だって本当にそうなんだもん。


 するとメルキンはルクスエリムに向かって言った。


「以上です。もう皆様もお察しがついているでしょう?」


 会場はシンッとなった。確かに全て俺が絡んでいるが、本当に偶然たまたまそうなっただけなんだけど。


 するとようやくダルバロス元帥が口を開く。


「もしかすると、全て隣国に知れ渡っているのですかな?」


「はい。そうでなければ周辺国家が、これほどまでに大人しくなるはずがありません」


「各国が聖女様に恐怖を抱いていると?」


「はい」


 やめて! 俺バケモノみたいじゃん! まるでネメシスと対を成すバケモノじゃん! マジで迷惑!


 俺はソフィア、アンナやシーファーレン、ミリィやスティーリア、ヴァイオレットやマグノリア、マロエやアグマリナ、ジェーバやルイプイ達と仲良く、和気あいあいとして生きていきたいだけ。ついでに朱の獅子の面々やルクセンの孫のウェステートや、薬師のクラティナや、飲み屋のミラーナとも仲良くしたいし、もっとついでに王女ビクトレナとも仲良くなりたい。あと子爵の娘のミステルや、アインホルン領に逃がしたネブラスカとも仲良くしたいだけ!


 ほんっっとに、それだけなんだからさあ!


 だがダルバロスが言う。


「陛下。第二王子の言う事は理解できない訳ではありません」


「分かっておる」


 なんや! 俺はバケモノなんか? 俺はネメシスの同類なんか?


 だがそこで突然声が上がった。


「恐れ入りますが発言をよろしいですかな?」


 教皇だ。


「うむ」


「女神フォルトゥーナは平和の神です。人々が幸せに暮らせるようにという教義を唱える、平和の神ですぞ。かような発言は、教会の長として聞き捨てなりません。聖女は孤児の為に東奔西走され、かつ多くの怪我人や命を救って参ったのです。それをバケモノと同様に話をされるというのは、いささか冒涜がすぎませんかな」


 わー! ぱちぱちぱち! ジジイ! たまには良い事言うじゃねえか! 俺をあてにして、金を集めるだけじゃねえって気概だけは認めてやるぜ。


 そこで突然バレンティアも物申した。


「恐れ入りますが! 我にも発言を!」


「う、うむ」


 氷の騎士と名高い、いつも冷静で物静かなバレンティアの変わりように、ルクスエリムですら狼狽えている。


「我々近衛騎士団は全て聖女様を指示いたします。教皇様の言う事はごもっともかと!」


 すると今度はフォルティスが声をあげた。


「恐れ入りますが! 私からも一言! 聖女様から何千の騎士の命が助けられました。そして何千の市民も! その聖女様を恐れるなどあってはなりません!」


「う、うむ! そうであったな。ダルバロスよ、我が国の人間であれば、聖女を恐れるものなどおらんのではないかな?」


「はい。言葉が足りませんでした。隣国の理解は出来るが、我々はそうは思っていないという事です」


「うむ」


 なんとか、俺をバケモノ認定する雰囲気が無くなってホッとする。


「どうかな、トリアングルムの若き王子よ。これが我が国ヒストリアの総意である。聖女を敬い祈りを捧げる事はあっても、恐れを抱く事などない」


「わかりました。我が国はまだ聖女様に対しての理解が足らなかったようです。ですが、貢物は撤回いたしません! これは感謝の気持ちとして、聖女様に受け取っていただきます!」


「わかった。聖女よ、それに異議は無いな」


 今はとりあえず収めよう。


「御座いません。それらの資金は女性の地位向上や、孤児の育成、そして医療の充実の為に使わせていただきましょう」


「うむ」


 ようやく報告会が終わった。それからルクスエリムの演説や、事務官たちの契約のやり取りがあり、式典は全て終わる。


 で、こっからだ。恐らくパーティーが始まると、おっさんらや若い貴族らがお酌をしにくる。それが嫌で嫌で仕方がない。しかも今回は、貴族の若い娘が一人も入っていない。


 地獄。


 …と思っていたら、誰も近寄って来なかった。ルクスエリムが来て話を聞いて行ったが、誰も近寄ってこない。ようやく教皇が来たので聞いてみる。


「誰も近寄ってこないみたいです」


「畏れ多いのですよ。もはや聖女様は殿上人となっております故、気軽に声をかける事などおこがましいと考えられているようですな」


 教皇がニッコニコしてる。


 そりゃそうだ。俺が神格化して扱われれば、より教会の格式が上がる。そうすればお布施も増えるし、市民の教会に対する目も変わるだろう。やっぱ腹黒い。


 いずれにせよ…。これは俺に対しての朗報だ! パーティーが行われても、誰も近づいてこないのであればそれほど苦痛じゃない。まあ、人目があるので、料理をがっつく事が出来ないのが嫌くらいかも。


 そしてパーティーは無事に終わり、俺は解放されるのだった。

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